新古今和歌集の部屋

美濃の家づと 一の巻 春歌下5

百首歌の中に          式子内親王

花はちりその色となくながむればむなしき空に春雨ぞ降る

√くれがたき夏の日くらしながむればそのことゝなく物ぞかな
しき、こゝの二句の句は、此三四の句により玉へる也。初句、花ち
りてといはずして、花はとあるはもじに、あはれなる所あり。
 二の句は、花の有りしほどは、花の色をながめしに、今は何の

色をながむとはなしになり、四の句、空は、ながむといふに
よせ有。結句、さびしきさまにて、花を思ふ情深し。

千五百番歌合に         寂蓮

おもひたつ鳥はふるすもたのむらんなれぬる花の跡のゆふぐれ

二の句ももじは、鳥は古巣にかへる頼みもあらんをといふ意也。三
の句の下に、をもじを添て心得べし。下句は、なれたる
花の散にし跡の、夕暮のさびしさは、何をたのみにして、なぐ
さめんかたもなしといふ意を、いひのこしたるなり。
散にけりあはれうらみのたれなれば花の跡とふはるの山風
初句、けりといへる詞かなはず。ちりにしもなどあらば、事もなからん

を、しひていきほひあらせんとてや、かくはいりけん。一首の
意、花をかくちらしたるものは、誰なるぞ。おのれみづからちらし
たるにあらずや。然れば恨みは、おのれにある物を、花の散りたる
を恨みがほに、跡の梢をとふはいかにと、風をとがめたる也。二の句より
下はめでたし。

百首歌奉りし時         摂政

はつせ山うつろふ花に春くれてまがひし雲ぞ峯にのこれる

                家隆朝臣

よし野川岸の山吹さきにけりみねのさくらはちりはてぬらむ

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「美濃の家づと」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事