ろげたるごとくすゑひろに成ぬとをき
家は煙にむせび、ちかきあたりは一向ほの
ほを地に吹つけたり空には灰を吹たて
たれば火の光に映じてあまねく紅なる中
に風に絶えず吹きられたる炎とぶがごとく
にして、一二町を越つゝ移行其中の人うつゝ
心ならんや。あるひは煙にむせびてたふれ
ふし、或は炎にまぐれてたちまちに
死ぬ或は又わづかに身一、からくしてのがれ
たれ共資財をとり出るに及ばず。七珎万
寶さながら灰燼となりにき。そのついへ
ろげたる如く、末広に成ぬ。遠き家は煙にむせび、
近きあたりは一向(ひたす)炎を地に吹つけた
り。空には灰を吹たてたれば、火の光に映じてあ
まねく紅なる中に、風に絶えず吹きられたる炎飛
ぶが如くにして、一二町を越つゝ移行く。其中の
人うつゝ心ならんや。或は煙にむせびてたふれ伏
し、或は炎にまぐれてたちまちに死ぬ。或は又わ
づかに身一、からくして逃れたれ共、資財を取り
出るに及ばず。七珎万寶さながら灰燼となりにき。
そのついへ
(参考)前田家本
広げたるが如く、末広になりぬ。遠き家は煙に噎び、
近き辺りはひたすら大路に吹き付けた
り。空には灰を吹き立てたれば火の光に映じてあ
まるに紅なる中に、風に絶えず吹き切られたる炎飛
ぶが如くして、一二丁を越へつつ移り行く。其の中の
人、現し心有らんや。或は煙にむせびて、倒れ伏
し、或は炎にまぐれて、忽ちに死ぬ。或は
身一つからくして逃る財寶を取り
出づ及ばず。七珎万寶さながら灰燼となりにき。
その費ゑ、
(参考)大福光寺本
ロケタルカコトクスヱヒロニナリヌトヲキ家ハ煙ニムセヒ
チカキアタリハヒタスラ焔ヲゝ地ニフキツケタ
リソラニハハヰヲフキタテタレハ日ノヒカリニエイシテア
マネククレナヰナル中ニ風ニタエスフキゝラレタルホノホ飛
カ如クシテ十二町ヲコエツゝウツリユクモ中ノ
人ウツシ心アラムヤ或ハ煙ニムセヒテタウレフ
シ或ハホノヲニマクレテタチマチニ死ヌ或ハ
身ヒトツカラウシテノカルゝモ資財ヲ取
出ルニオヨハス。七珍万宝サナカラ灰燼トナリニキ
其ノ費エ
不知晦朔注云朝菌
犬芝也亦名曰及暮
生見月則死こゝも長
明は此語によりて世
中の無常を観だり
荘子の心は各別なり。
本文の語をよりて心
をかへていふとつねの又
法なり。
たゞ水の泡に似たりけ
る 前によどみにうかぶう
たかたといへるをこゝにて
むすび侍る也。これも又
の一体なり。
しらず死ぬる人いづかたより
佛書云先生又先
(参考)清懈眼抄焼亡図