蝉丸が歌 世の中はとてもかくてもありぬべし宮も藁屋もはてしなければ これは、逢坂の關にゐて、行き來の人に物を乞ひて、世をすぐすものありけり。さすがに、琴などひき、人にあはれがられける者にて、故づきたりけるものにや。あやしの草の庵を作りて、藁といふものを、かけてしつらひたりけるを見て、 あやしの住処のさまや。藁してしも、しつらひたるこそ など笑ひけるを、詠める歌なり。 【略】 ※世の中は 新古今和歌集巻第十八雑歌下