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新古今和歌集の部屋

式子内親王集 雖入勅撰不見家集歌 新勅撰 続後撰

329 如何にせむ夢路にだにも行きやらぬ虚しき床の手枕の袖
いかにせむゆめちにたにもゆきやらぬむなしきとこのたまくらのそて 新勅撰

330 誰が垣根そことも知らぬ梅が香の夜半の枕に慣れにけるかな
たかかきねそこともしらぬむめかかのよはのまくらになれにけるかな 新勅撰

331 吹き結ぶ瀧は氷に閉ぢ果てて松にぞ風の声は惜しまぬ
ふきむすふたきはこほりにとちはててまつにそかせのこゑはをしまぬ 新勅撰

332 消ち難き人の思ひに身を変へて焔にさへや立ち混じるらむ
けちかたきひとのおもひにみをかへてほのほにさへやたちましるらむ 新勅撰

333 故郷の春を忘れぬ八重桜此や見し世に変はらざるらむ
ふるさとのはるをわすれぬやへさくらこれやみしよにかはらさるらむ 続後撰
返し 八重桜折知る人のなかりせば見し世の春は如何であはまし

334 今は只風をも言はじ吉野川岩越す花の柵もがな
いまはたたかせをもいはしよしのかはいはこすはなのしからみもかな 続後撰 重複

335 晩稲干す山田の秋の仮枕習はぬ程の袖の露かな
おしねほすやまたのあきのかりまくらならはぬほとのそてのつゆかな 続後撰

336 人訪はぬ都の他の雪の中に春は隣と近づきにけり
ひととはぬみやこのほかのゆきのうちにはるはとなりとちかつきにけり 続後撰 重複 うちに→270うちも

337 君故と言ふ名は立てじ消え果てむ夜半の煙の末まとも見よ
きみゆゑといふなはたてしきえはてむよはのけふりのすゑまともみよ 続後撰

338 知るらめや心は人に月草の染めのみ勝る思ひ在りとは
しるらめやこころはひとにつきくさのそめのみまさるおもひありとは 続後撰

339 如何にせむ岸打つ波の掛けてだに知られぬ恋ひに身を砕きつつ
いかにせむきしうつなみのかけてたにしられぬこひにみをくたきつつ 続後撰

340 君が名に思へば袖を包めども知らじよ涙漏らば漏るとて
きみかなにおもへはそてをつつめともしらしよなみたもらはもるとて 続後撰

341 影馴れて宿る月かな人知れず夜な夜な騒ぐ袖の湊に
かけなれてやとるつきかなひとしれすよなよなさわくそてのみなとに 続後撰

342 人知れず物思ふ袖に比べばや満ち来る潮の浪の下草
ひとしれすものおもふそてにくらへはやみちくるしほのなみのしたくさ 続後撰

343 秋は来ぬ行方も知らぬ歎きかな頼めし事は木の葉降りつつ
あきはきぬゆくへもしらぬなけきかなたのめしことはこのはふりつつ 続後撰

344 筆跡に過ぎにし事を留めずは知らぬ昔に如何で逢はまし
ふてのあとにすきにしことをととめすはしらぬむかしにいかてあはまし 続後撰

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