夜明け前の海は、ウネリが入っているように見えた。
梅ヶ浜の岩場では、波飛沫も上がっていた。
その状況を確認して、船着き場に直行した。
脇坂さんが、釣り道具を車から降ろして、待っていた。
その船着き場では、北よりの風がやや強く吹いている。
大磯先輩も来て、相談の始まった。
今日の天気予報では、雨も降る予報にはなっている。
「風が有るな…」
「この風は、北よりの風ですよね」
「船着き場は、山に囲まれているけど、結構な風よね」
「ここで、これだけ吹けば、沖はもっと吹いちょるやろな」
脇坂さん、大磯先輩と3人で「どうする…?」と、悩んでいた。
「少々の雨は、何とか我慢できるけど、風が強いとね…」
北の空には、雨雲も出てきた。
「止めちょこうかな…」
「17日は空いてますよね」
「まだ、予約は入ってないよ」
「じゃあー、17日に変更します」
「良いの…。入れちょくよ」
脇坂さんの釣行は、17日に変更することになった。
結局、30分以上悩んでいたが、今日の出船は中止とした。
此処の処、釣果の伸びがイマイチ良くない。
その大きな原因の一つが「動かない潮」だろう。
鯛ラバの重さが、水深が深くなっても、60グラムで真下に落ちていく。
上潮は、幾分上り潮が動いている様だが、下潮は全くと言って良いくらい動いていない。
変速の二枚潮になっている。
「下潮の感覚はどんな感じですか」
「潮が抜けますね。潮との絡みが無い気がします」
「軽いです。非常に軽くて抜けますね」
釣り人が変わっても、帰ってくる返事は同じだった。
海中の潮の動きは、人の力ではどうにも成らない。
海底から20メートルくらい立ち上がるベイト反応があっても、何も触ってこない。
触ってきても、針掛かりしない。
針掛かりしても、直ぐに外れて釣果に繋がらない。
ナイナイづくしの、最悪の潮だ。
ただ、救いに感じているのが、時折、沖から入ってくる潮色の良い“潮目”だ。
潮の動きを求めて沖合に出ていくと、白波が立っている“潮目”を見ることがある。
潮目の中に入ると、波が騒いで流れも1ノットを越している。
この中に、鯛ラバでもジグでも入れていくと、良い感じでラインが潮に絡んで沖に出ていく。
どこかのタイミングで、この潮が入ることで「潮変わり」になって欲しいと思っている。
澄み切りすぎる潮も、良い感じではないが、動かない潮よりは良い。
(写真は、今日の写真ではありません)