2月18日(5名)
●河野啓一
春浅き狭庭の草を踏みて立つ★★★★
春近し和泉山脈黒々と★★★
春めいて朝日優しく森の辺に★★★
●小口泰與
菜の花や嫗にお茶を賜りし★★★★
天霧らう榛名山(はるな)や湖の春の波★★★
天離る風の上州遠蛙★★★
●多田有花
梅林にある青空と風の音★★★
春の川きらきら蛇行して海へ★★★
春めきぬ揺れる梢の上の空★★★★
●桑本栄太郎
降りつつも天(そら)の明るき雨水かな★★★★
下萌の色濃くおもう雨の土手★★★
あちこちを向いて木蓮」ときめきぬ★★★
●小西 宏
ブランコの鎖に映る余寒かな★★★
梅枝に薄き緑の蕾立つ★★★
走りつつ凧ふり返る大野原★★★★
「凧揚げ」は新年の季語となっているが、単に「凧」と言えば春の季語。凧揚げは地方の行事でもあったので、地方行事として四月や五月に行うところも多い。そういった行事とは別に、遊びで、広い野原で凧の糸をもって走りつつ揚げると、凧は風に乗って、ぐんぐん糸を伸ばしてゆく。凧の上がり具合をふり返りながら走るのは、やはり小学生の中・高学年ぐらいであろう。凧揚げの少年を活写。(高橋正子)
2月17日(5名)
●小口泰與
利根川を煽ぐ山風蕗の薹★★★
鳶舞いし長き裾野の雪間かな★★★
菜の花や信濃川(しなの)の流れほんわかと★★★★
日本一長い信濃川。流域の雪解水を集めて延々と流れる。その雄大な信濃川も菜の花に彩られれば、ほんわかとやさしい流れに変わる。信濃川の水と菜の花の親和力が素晴らしい。(高橋正子)
●桑本栄太郎
下萌の京大農場うすみどり★★★
春めいて河川コートのテニスかな★★★
下萌やジャージー走るグランドに★★★
●多田有花
列島の春の灯りの上を飛ぶ★★★★
春めきて歩く人やら走る人★★★
音も無く降りだしやみぬ春の雨★★★
●小川和子
早春のオレンジに照る入日かな★★★
笹鳴の頭上を過ぐる森閑か★★★★
回想
野蒜摘むことも遊びの一つとて★★★
●高橋秀之
潮風も頬に優しく春の朝★★★★
春の海光る日差しが明るくて★★★
春浅し船は行き交い鳥は舞う★★★
2月16日(6名)
●小口泰與
夕ぐれの榛名十峰斑雪かな★★★★
山風に対うばらの芽あえかなり★★★
青空を奪いあいたる揚雲雀★★★
●古田敬二
里言葉優しく夫婦若布干す★★★
佐久島の夫婦自慢の若布干す★★★
若布干す光りを揺らす浜の風★★★★
●河野啓一
春めきて箕面の山も青くなり★★★
春浅し北海道バターをパンに塗り★★★
かいつぶり一直線に泳ぎけり★★★★
●桑本栄太郎
しつとりと路面濡れ居り春の雪★★★★
山裾の白亜のビルや春寒し★★★
春霞かさね彼方へ摂津峡★★★
●小川和子
愛餐の卓に添えらる雪割草★★★★
愛餐とはキリスト教の教会内での食事会の事。兄弟姉妹達が一緒に食事を摂りながら、お互いに交わりのひと時を持つことですね?その卓上花として雪割草が飾られている光景を想えば、主の豊かな恵みにより春の訪れを心から実感している作者です。 (桑本栄太郎)
苗木市に百合の球根選るすがら★★★
二ン月の空の淡さよ枝垂れ梅★★★
●小西 宏
浅春の風に寄り来る池の紋★★★
春浅き笹薮にふと動くもの★★★★
春浅いころ笹薮を通りすがると、動くものがいることに気付く。小鳥であろう。雀か、鶯か。小さな音、小さな影に、カサカサと動くものを認めた。いかにも、早春の笹薮らしい。(高橋正子)
空き部屋に見る空少し春の色★★★
2月15日(4名)
●小口泰與
春風や小犬は我と歩を合せ★★★★
ばらの芽と棘を甚振る雨の糸★★★
晩酌はうぐいす餅を頬張りて★★★
●河野啓一
春浅く朝の会釈も雪のこと★★★★
手作りのバレンタインや縁結び★★★
牡丹雪消えず狭庭の模様かな★★★
●多田有花
春きざす快晴の阿蘇正面に★★★★
快晴の空の下で阿蘇と向き合う。その姿に対峙すれば、胸を張るような気分だ。阿蘇の草原らしき所に心なし緑が見える。自然の素晴らしさだ。(高橋正子)
二月の高原阿蘇がしだいに近く★★★
振り向けば九重連山春の雪★★★
●桑本栄太郎
駅前に菜の花飾り菜の花忌★★★★
紅梅の紅のふくらみ蕾みけり★★★
春めくやスマホ自撮りの女子高生★★★
2月14日(6名)
●迫田和代
春雪の朝厚着厚着の食堂や★★★
草萌える道のあちこち食べた跡★★★
白梅の花と香りと青い空★★★★
青空を背景に咲く白梅は、花の姿がくっきりと見え、清潔感があって、香りが気高い。それを表すように、句がシンプルなのがよい。「青空」と「白梅」の二つがあれば十分だ。(高橋正子)
●小口泰與
御朱印の墨痕淋漓風光る(信之添削)★★★★
足裏に芝火を踏みし戯れに★★★
ばらの芽や妙義山(みょうぎ)の奇岩眼間に★★★
●桑本栄太郎
背伸びせし首の青さや春大根★★★
菜園の早やもときめき豆の花★★★★
豆の花が咲くと「春はすでに」という気持ちになるものだ。菜園は冬野菜も終わりに近いが、豆の花が咲くと菜園はうきうきと、ときめいてくる。(高橋正子)
春耕のマルチ手繰れる老夫婦★★★
●多田有花
肥後名物馬刺しを食ぶや春の宵★★★
黒川の湯より仰ぎし春の星★★★
早春の日の出を待ちぬ露天風呂★★★★
●福田ひろし
宇宙まで見ている春の夕焼かな★★★
野を焼けば里には草の灰が降る★★★
冴え返る会議室から白き峰★★★
●小西 宏
山風の送れる花か春の雪★★★
白壁に身を屈め行き蕗の薹★★★
早春の谷透き通る竹の青★★★★
2月13日(3名)
●古田敬二
エンジン始動白波立てて春の旅★★★★
エンジンを始動させ、エンジン音も快調に海へ乗り出してゆく。春寒いころは、このエンジンの音がよく響き、船も白波を立てて軽やかに進んで行く。楽しい春の旅。(高橋正子)
白波の水脈引き島へ春の旅★★★
落椿蕊まだ新しき島の道★★★
●小口泰與
さえずりや浅間山(あさま)夕日を近づけず★★★★
犬ふぐり朝日を乗せし波頭★★★
あな白き浅間山(あさま)や裾野未紅梅★★★
●桑本栄太郎
蝋梅の訪なう人なき門扉かな★★★
下萌や草の香いまだ調わず★★★★
竹幹の楽を奏すや余寒風★★★
2月12日(9名)
●小口泰與
大利根の岩打つ波や揚雲雀★★★★
山風に影も揺れけり黄水仙★★★
早春の露天湯の床渇きおり★★★
●内山富佐子
雪解風瓦の屋根を市松に★★★
日を浴びて雪合戦の砦跡★★★★
雪合戦の踏みしだかれた砦の跡が、きらきらと日を浴びている。存分に戦った雪合戦の跡が明るくて、子どもたちへのあたたかい眼差しが読み取れる。(高橋正子)
ほろ苦き蕗の芽天下一品なり★★★
●上島祥子
現より優しい仕草春の影★★★
餅を焼く転んだ膝をかばいつつ★★★
針仕事終えて座敷に寒気満つ★★★★
●河野啓一
シンフォニー春を奏でるデイの午後★★★
水取りの行事を思い春を待つ★★★
さわらびを探さむ小川の音聞けば★★★★
●多田有花
梅が香の中に一歩を踏み入れる★★★★
夕陽浴び今まどろみの春の山★★★
春の雪抜けてやまなみハイウェイ★★★
●桑本栄太郎
校庭のブラスマーチや建国日★★★
犬ふぐり尖りて強き土手の風★★★
振り込みのルアー伸びゆく春の池★★★★
●小西 宏
ジムに泳ぎ二月の風に火照り帰る★★★
早春の堅く芽を張る枝々よ★★★★
ひかり跳ぶ空の青さや辛夷の芽★★★
●福田ひろし
雲雀野を些事に憂いて行き過ぎし★★★★
空からは雲雀の声がほがらかに降ってくる野だというのに、些細なことに気が病んで、それを心底楽しむことができないで行き過ぎた。世の中些事に、心は常に動いて揺れる。それにしても、雲雀野の明るいことよ。(高橋正子)
初午のセピアの写真父若し★★★
落ちてなお赤く輝く椿かな★★★
2月11日(6名)
●河野啓一
庭に立ち春の浅きを嘆きけり★★★
一輪の椿八十路の誕生日★★★★
春の雨待たるる頃や薄日差す★★★
●小口泰與
太鼓打つ半被のおみな風光る★★★★
湯煙の磴の斑雪の夕べかな★★★
鍋割山(なべわり)の在るべき所霞けり★★★
●多田有花
稜線を走る春雪舞う中を★★★★
風花や日ごとに開く坂の梅★★★
窓ガラスかたかた鳴らし寒戻り★★★
●桑本栄太郎
針供養今日は木綿の豆腐買う★★★
礼拝を終えて隣家の梅見かな★★★★
礼拝を終え、さやかな気持ちで隣家の梅の花を楽しむ。遠出の梅見でなはく、日常生活のなかでの梅見に、梅により親しい気持ちが寄せられている。(高橋正子)
山河早やうすきみどりの建国日★★★
●小西 宏
早春に堅く芽を張る枝々よ★★★★
ひかり跳ぶ空の青きに辛夷の芽★★★
ジムに泳ぎ初春(しょしゅん)の風に火照り帰る★★★
●佃 康水
一輪へ日差して雨後の梅真白★★★
飛び交える鳥へ紅白梅ひらく★★★
蕗の薹摘み採る土の温さかな★★★★
蕗の薹を摘み採るとき土に触れた手が、思わず土の温かさを感じ取った。日当たりのよいところに出た蕗の薹であろう。この柔らかな日が蕗の薹を育てたと思える。(高橋正子)
2月10日(5名)
●小口泰與
摘草や貨車過ぎ行ける足尾線★★★
あけぼのの畷を駆ける雉子かな★★★★
釣人を襲いし虻の唸りかな★★★
●河野啓一
春雪は止まず列島冴え返る★★★
早春の朝日鉢花いきいきと★★★★
鉢植えの花に朝日が刺すと、花は一度に輝く。早春の朝日となれば、空気は冷たくても、光の明るさは増して人の気持ちまで明るくしてくれる。花々の表情が見えるようだ。(高橋正子)
恐竜の化石も埋まる春の雪★★★
●桑本栄太郎
春障子二度寝の夢の目覚め居り★★★
せせらぎの枝に降り積む春の雪★★★
高槻のうすきみどりの春田かな★★★★
●古田敬二
菜を洗う蛇口の水も温みけり★★★
竹鳴らす風に乗り来て梅香る★★★★
白木蓮蕾踊らす青空に★★★
●高橋秀之
早朝のバスに受験の中学生★★★
受験の子表情普段と変わりなく★★★
おはようの声も大きく今日受験★★★★
子どもの受験には、親は子ども以上に心配かもしれない。受験の日、元気よく「おはよう」の声が聞けたことは、体調もよくて、緊張しすぎていないと、安心だ。よい結果が待っているのは確か。(高橋正子)
2月9日(7名)
●小口泰與
あけぼのの手に掬いたる春の水★★★
春霜や噴煙南(みな)へ流れける★★★
上州の三山笑う朝かな★★★★
●多田有花
山走る春北風の吹く中を★★★★
風よけて座す早春の頂に★★★
枝々の間に浅き春の空★★★
●桑本栄太郎
グランドの部活の声や春きざす★★★
十字架の峰に日差しや春の山★★★
菜園の採りあと白く茎立ちぬ★★★★
●河野啓一
白きもの被りて門辺の紅椿★★★
冴え返る昭和の軍歌を声揃え★★★
春雪は止まず畿内の過ごし良さ★★★★
●福田ひろし
春の雪触れる間もなくやみにけり★★★
湯けむりにふわりと消ゆる春の雪★★★★
ランナーを待ちわびる子の冷たき手★★★
●古田敬二
二月来る庭の光りの濃くなりぬ★★★★
二月は暦の上だは春。気温が低いけれど、日の光は真冬よりも明るく強くなって「春」を真っ先に思わせてくれる。「光の濃さ」が思われる。この句の問題は、「二月来る」と「濃くなりぬ」と一句に切れが2か所にあること。これは解消していただきたい。(高橋正子)
見上げれば木蓮蕾の踊りけり★★★
青空の主役つぼみの白木蓮★★★
●川名ますみ
残雪の凹凸に影松林★★★★
松林の残雪が美しいイメージで詠まれている。急に小動物が出てきそうで、楽しい雰囲気がある。(高橋正子)
春隣女僧侶の声たゆたう★★★
七七日障子に過ぎる猫の影★★★
2月8日(5名)
●小口泰與
今朝赤城山(あかぎ)良く見え畦の犬ふぐり★★★★
異例なき鍋割り山も春の雨★★★
たんぽぽや榛名山(はるな)の上の根無し雲★★★
●小西 宏
立春の空に橙色月上る★★★
春風に行く道犬の主張する★★★
朝からの雨が形に春の雪★★★★
●古田敬二
黒牛の乳房揺らして青き踏み来る★★★★
牛の背の春の光りに黒光り★★★
放牧の牛の足跡薄氷★★★
●桑本栄太郎
春北風を真夜に聞き居る寝床かな★★★
白梅を見上げ青空どこまでも★★★★
さざ波の岸を小打ちや春の池★★★
●佃 康水
膨れくる潮や河口に春の鴨★★★★
「膨れくる潮」が春らしい。河口や港に立っていると、穏やかな日には、潮が膨れるように満ちてくるのがわかる。河口にはまだ帰らない鴨が生き生きと泳いでいる。春への期待が高まるころだ。(高橋正子)
木の芽吹く丘やせせらぐ音高し★★★
和服着る人らそぞろに梅見かな★★★
●河野啓一
春浅き狭庭の草を踏みて立つ★★★★
春近し和泉山脈黒々と★★★
春めいて朝日優しく森の辺に★★★
●小口泰與
菜の花や嫗にお茶を賜りし★★★★
天霧らう榛名山(はるな)や湖の春の波★★★
天離る風の上州遠蛙★★★
●多田有花
梅林にある青空と風の音★★★
春の川きらきら蛇行して海へ★★★
春めきぬ揺れる梢の上の空★★★★
●桑本栄太郎
降りつつも天(そら)の明るき雨水かな★★★★
下萌の色濃くおもう雨の土手★★★
あちこちを向いて木蓮」ときめきぬ★★★
●小西 宏
ブランコの鎖に映る余寒かな★★★
梅枝に薄き緑の蕾立つ★★★
走りつつ凧ふり返る大野原★★★★
「凧揚げ」は新年の季語となっているが、単に「凧」と言えば春の季語。凧揚げは地方の行事でもあったので、地方行事として四月や五月に行うところも多い。そういった行事とは別に、遊びで、広い野原で凧の糸をもって走りつつ揚げると、凧は風に乗って、ぐんぐん糸を伸ばしてゆく。凧の上がり具合をふり返りながら走るのは、やはり小学生の中・高学年ぐらいであろう。凧揚げの少年を活写。(高橋正子)
2月17日(5名)
●小口泰與
利根川を煽ぐ山風蕗の薹★★★
鳶舞いし長き裾野の雪間かな★★★
菜の花や信濃川(しなの)の流れほんわかと★★★★
日本一長い信濃川。流域の雪解水を集めて延々と流れる。その雄大な信濃川も菜の花に彩られれば、ほんわかとやさしい流れに変わる。信濃川の水と菜の花の親和力が素晴らしい。(高橋正子)
●桑本栄太郎
下萌の京大農場うすみどり★★★
春めいて河川コートのテニスかな★★★
下萌やジャージー走るグランドに★★★
●多田有花
列島の春の灯りの上を飛ぶ★★★★
春めきて歩く人やら走る人★★★
音も無く降りだしやみぬ春の雨★★★
●小川和子
早春のオレンジに照る入日かな★★★
笹鳴の頭上を過ぐる森閑か★★★★
回想
野蒜摘むことも遊びの一つとて★★★
●高橋秀之
潮風も頬に優しく春の朝★★★★
春の海光る日差しが明るくて★★★
春浅し船は行き交い鳥は舞う★★★
2月16日(6名)
●小口泰與
夕ぐれの榛名十峰斑雪かな★★★★
山風に対うばらの芽あえかなり★★★
青空を奪いあいたる揚雲雀★★★
●古田敬二
里言葉優しく夫婦若布干す★★★
佐久島の夫婦自慢の若布干す★★★
若布干す光りを揺らす浜の風★★★★
●河野啓一
春めきて箕面の山も青くなり★★★
春浅し北海道バターをパンに塗り★★★
かいつぶり一直線に泳ぎけり★★★★
●桑本栄太郎
しつとりと路面濡れ居り春の雪★★★★
山裾の白亜のビルや春寒し★★★
春霞かさね彼方へ摂津峡★★★
●小川和子
愛餐の卓に添えらる雪割草★★★★
愛餐とはキリスト教の教会内での食事会の事。兄弟姉妹達が一緒に食事を摂りながら、お互いに交わりのひと時を持つことですね?その卓上花として雪割草が飾られている光景を想えば、主の豊かな恵みにより春の訪れを心から実感している作者です。 (桑本栄太郎)
苗木市に百合の球根選るすがら★★★
二ン月の空の淡さよ枝垂れ梅★★★
●小西 宏
浅春の風に寄り来る池の紋★★★
春浅き笹薮にふと動くもの★★★★
春浅いころ笹薮を通りすがると、動くものがいることに気付く。小鳥であろう。雀か、鶯か。小さな音、小さな影に、カサカサと動くものを認めた。いかにも、早春の笹薮らしい。(高橋正子)
空き部屋に見る空少し春の色★★★
2月15日(4名)
●小口泰與
春風や小犬は我と歩を合せ★★★★
ばらの芽と棘を甚振る雨の糸★★★
晩酌はうぐいす餅を頬張りて★★★
●河野啓一
春浅く朝の会釈も雪のこと★★★★
手作りのバレンタインや縁結び★★★
牡丹雪消えず狭庭の模様かな★★★
●多田有花
春きざす快晴の阿蘇正面に★★★★
快晴の空の下で阿蘇と向き合う。その姿に対峙すれば、胸を張るような気分だ。阿蘇の草原らしき所に心なし緑が見える。自然の素晴らしさだ。(高橋正子)
二月の高原阿蘇がしだいに近く★★★
振り向けば九重連山春の雪★★★
●桑本栄太郎
駅前に菜の花飾り菜の花忌★★★★
紅梅の紅のふくらみ蕾みけり★★★
春めくやスマホ自撮りの女子高生★★★
2月14日(6名)
●迫田和代
春雪の朝厚着厚着の食堂や★★★
草萌える道のあちこち食べた跡★★★
白梅の花と香りと青い空★★★★
青空を背景に咲く白梅は、花の姿がくっきりと見え、清潔感があって、香りが気高い。それを表すように、句がシンプルなのがよい。「青空」と「白梅」の二つがあれば十分だ。(高橋正子)
●小口泰與
御朱印の墨痕淋漓風光る(信之添削)★★★★
足裏に芝火を踏みし戯れに★★★
ばらの芽や妙義山(みょうぎ)の奇岩眼間に★★★
●桑本栄太郎
背伸びせし首の青さや春大根★★★
菜園の早やもときめき豆の花★★★★
豆の花が咲くと「春はすでに」という気持ちになるものだ。菜園は冬野菜も終わりに近いが、豆の花が咲くと菜園はうきうきと、ときめいてくる。(高橋正子)
春耕のマルチ手繰れる老夫婦★★★
●多田有花
肥後名物馬刺しを食ぶや春の宵★★★
黒川の湯より仰ぎし春の星★★★
早春の日の出を待ちぬ露天風呂★★★★
●福田ひろし
宇宙まで見ている春の夕焼かな★★★
野を焼けば里には草の灰が降る★★★
冴え返る会議室から白き峰★★★
●小西 宏
山風の送れる花か春の雪★★★
白壁に身を屈め行き蕗の薹★★★
早春の谷透き通る竹の青★★★★
2月13日(3名)
●古田敬二
エンジン始動白波立てて春の旅★★★★
エンジンを始動させ、エンジン音も快調に海へ乗り出してゆく。春寒いころは、このエンジンの音がよく響き、船も白波を立てて軽やかに進んで行く。楽しい春の旅。(高橋正子)
白波の水脈引き島へ春の旅★★★
落椿蕊まだ新しき島の道★★★
●小口泰與
さえずりや浅間山(あさま)夕日を近づけず★★★★
犬ふぐり朝日を乗せし波頭★★★
あな白き浅間山(あさま)や裾野未紅梅★★★
●桑本栄太郎
蝋梅の訪なう人なき門扉かな★★★
下萌や草の香いまだ調わず★★★★
竹幹の楽を奏すや余寒風★★★
2月12日(9名)
●小口泰與
大利根の岩打つ波や揚雲雀★★★★
山風に影も揺れけり黄水仙★★★
早春の露天湯の床渇きおり★★★
●内山富佐子
雪解風瓦の屋根を市松に★★★
日を浴びて雪合戦の砦跡★★★★
雪合戦の踏みしだかれた砦の跡が、きらきらと日を浴びている。存分に戦った雪合戦の跡が明るくて、子どもたちへのあたたかい眼差しが読み取れる。(高橋正子)
ほろ苦き蕗の芽天下一品なり★★★
●上島祥子
現より優しい仕草春の影★★★
餅を焼く転んだ膝をかばいつつ★★★
針仕事終えて座敷に寒気満つ★★★★
●河野啓一
シンフォニー春を奏でるデイの午後★★★
水取りの行事を思い春を待つ★★★
さわらびを探さむ小川の音聞けば★★★★
●多田有花
梅が香の中に一歩を踏み入れる★★★★
夕陽浴び今まどろみの春の山★★★
春の雪抜けてやまなみハイウェイ★★★
●桑本栄太郎
校庭のブラスマーチや建国日★★★
犬ふぐり尖りて強き土手の風★★★
振り込みのルアー伸びゆく春の池★★★★
●小西 宏
ジムに泳ぎ二月の風に火照り帰る★★★
早春の堅く芽を張る枝々よ★★★★
ひかり跳ぶ空の青さや辛夷の芽★★★
●福田ひろし
雲雀野を些事に憂いて行き過ぎし★★★★
空からは雲雀の声がほがらかに降ってくる野だというのに、些細なことに気が病んで、それを心底楽しむことができないで行き過ぎた。世の中些事に、心は常に動いて揺れる。それにしても、雲雀野の明るいことよ。(高橋正子)
初午のセピアの写真父若し★★★
落ちてなお赤く輝く椿かな★★★
2月11日(6名)
●河野啓一
庭に立ち春の浅きを嘆きけり★★★
一輪の椿八十路の誕生日★★★★
春の雨待たるる頃や薄日差す★★★
●小口泰與
太鼓打つ半被のおみな風光る★★★★
湯煙の磴の斑雪の夕べかな★★★
鍋割山(なべわり)の在るべき所霞けり★★★
●多田有花
稜線を走る春雪舞う中を★★★★
風花や日ごとに開く坂の梅★★★
窓ガラスかたかた鳴らし寒戻り★★★
●桑本栄太郎
針供養今日は木綿の豆腐買う★★★
礼拝を終えて隣家の梅見かな★★★★
礼拝を終え、さやかな気持ちで隣家の梅の花を楽しむ。遠出の梅見でなはく、日常生活のなかでの梅見に、梅により親しい気持ちが寄せられている。(高橋正子)
山河早やうすきみどりの建国日★★★
●小西 宏
早春に堅く芽を張る枝々よ★★★★
ひかり跳ぶ空の青きに辛夷の芽★★★
ジムに泳ぎ初春(しょしゅん)の風に火照り帰る★★★
●佃 康水
一輪へ日差して雨後の梅真白★★★
飛び交える鳥へ紅白梅ひらく★★★
蕗の薹摘み採る土の温さかな★★★★
蕗の薹を摘み採るとき土に触れた手が、思わず土の温かさを感じ取った。日当たりのよいところに出た蕗の薹であろう。この柔らかな日が蕗の薹を育てたと思える。(高橋正子)
2月10日(5名)
●小口泰與
摘草や貨車過ぎ行ける足尾線★★★
あけぼのの畷を駆ける雉子かな★★★★
釣人を襲いし虻の唸りかな★★★
●河野啓一
春雪は止まず列島冴え返る★★★
早春の朝日鉢花いきいきと★★★★
鉢植えの花に朝日が刺すと、花は一度に輝く。早春の朝日となれば、空気は冷たくても、光の明るさは増して人の気持ちまで明るくしてくれる。花々の表情が見えるようだ。(高橋正子)
恐竜の化石も埋まる春の雪★★★
●桑本栄太郎
春障子二度寝の夢の目覚め居り★★★
せせらぎの枝に降り積む春の雪★★★
高槻のうすきみどりの春田かな★★★★
●古田敬二
菜を洗う蛇口の水も温みけり★★★
竹鳴らす風に乗り来て梅香る★★★★
白木蓮蕾踊らす青空に★★★
●高橋秀之
早朝のバスに受験の中学生★★★
受験の子表情普段と変わりなく★★★
おはようの声も大きく今日受験★★★★
子どもの受験には、親は子ども以上に心配かもしれない。受験の日、元気よく「おはよう」の声が聞けたことは、体調もよくて、緊張しすぎていないと、安心だ。よい結果が待っているのは確か。(高橋正子)
2月9日(7名)
●小口泰與
あけぼのの手に掬いたる春の水★★★
春霜や噴煙南(みな)へ流れける★★★
上州の三山笑う朝かな★★★★
●多田有花
山走る春北風の吹く中を★★★★
風よけて座す早春の頂に★★★
枝々の間に浅き春の空★★★
●桑本栄太郎
グランドの部活の声や春きざす★★★
十字架の峰に日差しや春の山★★★
菜園の採りあと白く茎立ちぬ★★★★
●河野啓一
白きもの被りて門辺の紅椿★★★
冴え返る昭和の軍歌を声揃え★★★
春雪は止まず畿内の過ごし良さ★★★★
●福田ひろし
春の雪触れる間もなくやみにけり★★★
湯けむりにふわりと消ゆる春の雪★★★★
ランナーを待ちわびる子の冷たき手★★★
●古田敬二
二月来る庭の光りの濃くなりぬ★★★★
二月は暦の上だは春。気温が低いけれど、日の光は真冬よりも明るく強くなって「春」を真っ先に思わせてくれる。「光の濃さ」が思われる。この句の問題は、「二月来る」と「濃くなりぬ」と一句に切れが2か所にあること。これは解消していただきたい。(高橋正子)
見上げれば木蓮蕾の踊りけり★★★
青空の主役つぼみの白木蓮★★★
●川名ますみ
残雪の凹凸に影松林★★★★
松林の残雪が美しいイメージで詠まれている。急に小動物が出てきそうで、楽しい雰囲気がある。(高橋正子)
春隣女僧侶の声たゆたう★★★
七七日障子に過ぎる猫の影★★★
2月8日(5名)
●小口泰與
今朝赤城山(あかぎ)良く見え畦の犬ふぐり★★★★
異例なき鍋割り山も春の雨★★★
たんぽぽや榛名山(はるな)の上の根無し雲★★★
●小西 宏
立春の空に橙色月上る★★★
春風に行く道犬の主張する★★★
朝からの雨が形に春の雪★★★★
●古田敬二
黒牛の乳房揺らして青き踏み来る★★★★
牛の背の春の光りに黒光り★★★
放牧の牛の足跡薄氷★★★
●桑本栄太郎
春北風を真夜に聞き居る寝床かな★★★
白梅を見上げ青空どこまでも★★★★
さざ波の岸を小打ちや春の池★★★
●佃 康水
膨れくる潮や河口に春の鴨★★★★
「膨れくる潮」が春らしい。河口や港に立っていると、穏やかな日には、潮が膨れるように満ちてくるのがわかる。河口にはまだ帰らない鴨が生き生きと泳いでいる。春への期待が高まるころだ。(高橋正子)
木の芽吹く丘やせせらぐ音高し★★★
和服着る人らそぞろに梅見かな★★★