10月31日(5名)
小口泰與
山径や我に従う秋の雲★★★
母犬は霧の音にも目覚めけり★★★★
波駆けて暁の秋日をけち散らし?
<波駆けて暁の秋日を蹴散らかし>ですか。(髙橋正子)
多田有花
やや寒を言いつつ皆の出勤す★★★
裏窓の開くやじょうびたきの声★★★★
月沈む地球の回る速度にて★★★
廣田洋一
柚子の実や色付くにつれ香り濃し★★★
湯煙を辿りて行ける秋の山★★★
稜線のすらりと伸びる秋の山★★★★
桑本栄太郎
真青なる空に銀杏の黄葉かな★★★
浮雲の晴れて動かず十月尽
「十月尽」は使いません。
飛蝗追い川ベリ歩む地道かな★★★
弓削和人
紅葉見の人を見下ろす紅き橋★★★
栗食むや指の黒きも口にして★★★
〇「尽」について
季語としての尽は、季節の終わりに使います。季節の過ぎゆくのを惜しむ感慨です。以前にもこれについて申しましたが、歳時記でご確認ください。ネット上では、俳句を勉強していない方が、誤用で使っている場合も多く見られます。基本は大事にしたいところです。(髙橋正子)
以下引用:
「尽」は、尽きるという意味である。例えば、「二月尽」。
新暦二月の終わり。短い月が慌ただしく過ぎゆく感慨と同時に、寒さがゆるみ、春本番に向かうほっとした気分もただよう。と歳時記にある。
木々の瘤空にきらめく二月尽 原 裕
真直なる幹に雨沁む二月尽 福永耕二
等の句が並べられている。(角川学芸出版 俳句歳時記第4版 春 より)
どの月にもその終わりは「尽」だと思っていた。ところが、俳句2月号の連載「伝えたい季語、変化する季語」(片山由美子)を読んでいたら、次のような文章に出会った。
「そもそも『尽』は何を意味するかを考えるとき、『二月尽』に異を唱える意見もある。『尽』とは季節が尽きることを意味するので、『三月』『六月』『九月』『十二月』ということになるが、『尽』には去りゆく季節を惜しむ心がこめられ、『ゆく春』『ゆく秋』に近い言葉である。したがって夏、冬にはいわない。
また和歌の題としては『三月尽』『九月尽』は暮春、暮秋を表す詞で歌を詠むことを意味し、『三月尽』『九月尽』そのものは歌語となっていなかった。
・・・・『三月尽』が使われるようになったのは近代になってからである。・・・・・・・・『四月尽』『七月尽』は季語として如何なものであろうか。」と述べ、「二月尽」についても「今後この季語が残っていくかどうかはなお流動的である。」と結んでいる。
ブログ:「十分間俳句」より
10月30日(5名)
小口泰與
晩秋の鳥は沼より消えにけり★★★
餌台に早くも秋の没日かな★★★
車下り金木犀の香り浴ぶ★★★
廣田洋一
湘南台祭を終へて冬隣★★★
腰痛め中断したり冬支度★★★
根付きたる松に菰かけ冬支度
「根付きたる松に菰かけ」が「冬支度」の季語の説明のようになっていますので、季語は少し離して「冬近し」「冬隣」などのほうが良いと思います。(髙橋正子)
桑本栄太郎
天辺の早も裸や銀杏黄葉★★★
みちの辺に五色彩なす落葉かな★★★
入口のコキア紅葉や幼稚園(原句)
間違っているわけではありませんが、「紅葉や」では、読み手に訴える力が弱いので、直しました。(髙橋正子)
入口のコキア紅葉す幼稚園(正子添削)
多田有花
<兵庫県立いえしま自然体験センター三句>
調査隊中間発表秋の昼★★★★
山越える秋の驟雨に見舞われつつ★★★
行き秋晴れ帰り土砂降りそれもよし★★★
弓削和人
レジに沿う柘榴露わや道の駅★★★
道の駅切りたんぽ持ち暮れゆけり★★★
肥ゆる馬照らる瞳の澄みし空
「照らる」は、この活用でいいですか。(髙橋正子)
10月29日(4名)
多田有花
<兵庫県立いえしま自然体験センター三句>
木の実落ち求めて猪出没す★★★
ボンファイヤー囲み踊れば秋深し★★★
秋の朝生活棟を片づける★★★
小口泰與
しかと見き庭の石榴と柿の実と★★★
途中より秋雨しげき撮影会★★★
秋蝶や静寂を生みし丘の沼★★★
廣田洋一
居酒屋の扉解放十三夜★★★★
ようやくに秋と思へば冬隣★★★
穭田に出たり入ったり群雀★★★
桑本栄太郎
山里の小川早瀬や芋水車★★★★
膝錆びて階段そろり冷まじき★★★
早々とあおぞら残し秋入日★★★★
川名ますみ
秋入日富士を赤茶の影にして★★★★
雲も陽も富士へ沈める秋夕焼(原句)
いい情景の句ですね。切れを入れて、句のイメージをはっきりさせました。
雲も陽も富士へと沈む秋夕焼(正子添削)
秋雲の指でかきあつむるごとし★★★
10月28日(5名)
小口泰與
水面を賑わす鳥や秋の朝★★★
山風に飛ばされそうな稲雀★★★★
しかすがに秋翡翠に魅せられし ★★★
弓削和人
鰯雲すぎゆけれどもあてはなく★★★
たちまちにすすきすすきの夕の原★★★
栗の毬知られぬように隠し事★★★
廣田洋一
肌寒や日の当たりたる道を行く★★★
十三夜望に有らねど皓皓と★★★
居酒屋の扉満開十三夜
「満開」は花が開ききることを言うので、扉ではどうでしょうか。(髙橋正子)
多田有花
<兵庫県立いえしま自然体験センター三句>
秋うらら野外炊飯始まりぬ★★★
子ら作るカレーのうまし秋の昼★★★
秋浜に子ら貝殻を拾い集め★★★
桑本栄太郎
山里の軒の明かりや柿すだれ★★★
白壁の土塀つづきや柿紅葉★★★
大仰に風に揺れ居りゑのこ草★★★
10月27日(3名)
廣田洋一
とぎ汁の香りうっすら今年米★★★
我が町の今年米炊く夕べかな★★★★
晴れたるもやや寒の朝旅日和★★★
桑本栄太郎
あご髭の尖り覚ゆる朝寒し★★★
校門の記念桜や紅葉初む★★★
ごろごろと藁のロールや穭田に★★★
多田有花
<兵庫県立いえしま自然体験センター三句>
秋の海輝くなかをカヌーゆく★★★
秋うらら日常へ戻る人もあり★★★
秋海へ朝の合唱する子らよ★★★★
10月26日(4名)
廣田洋一
秋日和日向に群るる川の鯉★★★
朝の日を揃ひて揺らす銀芒(原句)
朝の日を揃ひて揺らす芒の穂(正子添削)
「銀芒」は表現に無理があり、惜しいです。また、「銀」に主眼がおかれるので、芒の穂の姿が弱くなります。(髙橋正子)
青空を黄色く返す泡立草(原句)
「青空を黄色く返す」が分かりにくいです。(髙橋正子)
青空へ黄色を返す泡立草(正子添削)
小口泰與
蜻蛉の水面に映す影定か★★★★
燕去って巨石聳つ妙義山★★★
飛び出でて銀鱗あらわ秋の雑魚★★★
桑本栄太郎
耕衣忌の葱の葉つまみ朝餉へと★★★
「夢の世に葱を作りて寂しさよ 耕衣」の句が下敷き。(髙橋正子)
秋天の静寂破りヘリコプター★★★
ブロックの道によろめき秋の蜂★★★
弓削和人
鰯雲尾張の深空やや朱く★★★
十年を経ての木犀懐かしや★★★★
くつ紐にすがる命やゐのこづち ★★★
10月25日(4名)
小口泰與
おっととや秋川蝉の枝渡り★★★
一陣の風の中なる蜻蛉かな★★★
全身をあらわに雑魚や沼の秋★★★
廣田洋一
銀杏並木黄色く映えて後の月★★★
柚子の実や道にはみ出し色付きぬ★★★
今朝もまた園児の声や末枯るる★★★
桑本栄太郎
川べりに沿いてもみづる桜かな★★★
坂道を下る朝や萩は実に★★★
一級河川小畑川
つどいたる緋鯉真鯉や秋の川★★★
多田有花
<兵庫県立いえしま自然体験センター三句>
秋の海へ次々漕ぎだすカヌーかな(原句)
秋海へカヌー次々漕ぎだせり(正子添削)
秋高し鰯の群れが目の前に★★★
「鰯」は秋の季語です。
星月夜小松宵草咲きにけり★★★
10月24日(4名)
小口泰與
何も来ぬ山の露天湯霧襖★★★
朝雲はなべて凹凸山粧う★★★
足音に鳴きては黙や草雲雀★★★
廣田洋一
末枯るる川のほとりの並木道★★★
起き抜けのやや寒消えて出かけたり★★★
新米の炊き上がりたる白さかな★★★
桑本栄太郎
土塀より柿の迫り出す山の里★★★
溝川の堰水落つる刈田かな★★★
洛西
くろぐろと山並みうねり秋入日★★★
多田有花
兵庫県立いえしま自然体験センター三句
秋祭の掛け声で曳く地曳網★★★
朝凪の浜辺に立てば秋深し★★★
秋晴れに磯観察の始まりぬ(原句)
秋晴れに子ら一斉に磯観察(正子添削)
10月23日(5名)
小口泰與
稲刈られ畷を越ゆる雀かな★★★
ふと何か霧のささやく山の径★★★★
何くれと指図の妻や夜寒にて★★★
弓削和人
落雁の小さきゆくえ失せにけり★★★
秋涼や水槽青を碧(みどり)にし★★★★
診断を待ちたる秋の医院かな★★★
多田有花
<兵庫県立いえしま自然体験センター三句>
採石の島を秋陽が照らしおり★★★
登り来て峠越えれば秋の海★★★★
天高く真正面には小豆島★★★
廣田洋一
やや寒や門前の草そよぎをり★★★
いそいそと新米とぎし夕べかな★★★
末枯るる伸び放題の空地かな★★★
桑本栄太郎
知らぬ間に庭木もみづる在所かな★★★
錦木の早ももみづる真紅かな★★★
あおぞらを遠くに透かし秋すだれ★★★★
10月22日(4名)
多田有花
<兵庫県立いえしま自然体験センター三句>
秋の朝自然学校へ出発す★★★
海青く白き航跡秋晴るる★★★
秋の陽の水平線まできらきらと★★★★
廣田洋一
初鴨の番隠るる中洲かな★★★★
公園にまた新しき小鳥来る★★★★
ベランダに光るテープや小鳥よけ★★★
桑本栄太郎
四条河原町界隈
せせらぎの底に紅葉や高瀬川★★★
花梨の実塀の中より建仁寺★★★
北山のはるか遠くに秋の雲★★★★
小口泰與
肌寒や暮るるを嘆く沼の鳥★★★
藻を乗せて寄せ來る波や秋の沼★★★
木犀や風のささやく散歩道★★★★
10月21日(2名)
廣田洋一
庭の木に知らぬ小鳥の声高し★★★★
電線に新曲奏でる小鳥どち★★★
広がりし中洲の草や末枯るる★★★
小口泰與
小鳥来て餌台の餌奪い合い★★★
白鷺の翔つや波立つ秋の沼★★★
虫鳴けり赤城全山紫紺にて★★★