[9月30日]
★月光の夜のコーラスに妻出かけ/河野啓一
月の光に照らされた夜妻はコーラスに出かけた。妻たちのコーラスの澄んだ歌声を月夜に思い重ねて、作者もまた、月光の夜をひとり楽しんでいる。(高橋正子)
★乗る船の真向こう大き今日の月/佃 康水
乗船する船の真向こうに大きな月が昇った。海に昇る月であろうが、大きな今宵の月に純粋に感嘆する作者
が思えて、感嘆を分けてもらった。(高橋正子)
[9月29日]
★笊にとり濯ぐ零余子やおとこ飯/桑本栄太郎
笊にとり集めた零余子は零余子飯となる。ざっと洗って炊かれた素朴な零余子飯は、たしかに「おとこ飯」と言えよう。(高橋正子)
[9月28日]
※該当句無し
[9月27日]
★車椅子今宵門辺の良夜かな/河野啓一
「門辺の良夜」がいい。車椅子で門辺まで月を見に出ると、明るい大きな月が昇ったところ。車椅子ながらも門辺の良夜を楽しんだ。(高橋正子)
[9月26日]
★秋晴れの空を仰いで父想う/迫田和代
秋晴れの澄み渡った空の偽りのない力強さ、大きさが父を思わせたのだろう。娘にとっての父の在り様は秋晴れの空のようなものだ。(高橋正子)
★産着干す新居の庭へ小鳥来る/佃 康水
「新居の庭」、「産着干す」、「小鳥来る」と幸せなものが重なった。幸せな小さな家庭がさらりと詠まれて好感が持てる。(高橋正子)
[9月25日]
★秋冷や嫗達者と文来る/河野啓一
秋も本格的になる。きりっと引き締まる気持ちになる秋冷のころだが、風邪も引きやすくなる。嫗が達者であると便りが来て、めでたい。(高橋正子)
[9月24日]
★秋分やバスに供花持つ家族連れ/高橋秀之
秋分の日のバスに乗ると供花を持つ家族連れに出会った。家族揃って墓参りをする人の温かさが「供花」を通して伝わる。(高橋正子)
[9月23日]
★あたたかな色して畔の曼珠沙華/河野啓一
畔の曼珠沙華を「あたたかな色」と見る、穏やかな心優しさがいい。(高橋正子)
★澄む秋の空より蝶の舞い降りる/多田有花
空も澄むなら、それ以上に澄んだ色の蝶が舞い降りた感動。(高橋正子)
[9月22日]
<奥祖谷かずら橋>
★秋嶺を下りかずら橋を渡る/多田有花
事実を飾らずに散文的に表現した句だ。秋嶺も、かずら橋も奥祖谷そのもの。(高橋正子)
[9月21日]
★真直ぐな魁夷の「道」や天高し/小口泰與
魁夷は、東山魁夷。魁夷が描いた「道」は真直ぐで天高しである。(高橋正子)
★参道に群れてほぐれて蜻蛉飛ぶ/河野啓一
お参りの道すがら、蜻蛉が群れたり、またほぐれたりして飛ぶ。寺社へのお参りが楽しくなる。(高橋正子)
[9月20日]
※該当作なし