[8月31日]
★朝露のひと葉漏らさず草に下り/上島祥子
朝露がどの葉にも、ひと葉残らず、辺り一面の葉に降りている。朝露がびっしりと置く季節になったことの驚き。(髙橋正子)
[8月30日]
★赤とんぼ群れてほぐれて丘の辺に/河野啓一
平群の里の丘であろう。まろやかな丘に赤とんぼが群れ、群れたかと思うと、ほぐれて思い思いに飛ぶ。
赤とんぼの飛ぶ景色が丘の上であって、ゆっくりとした時間が過ぎている。(高橋正子)
[8月29日]
★台風やうねりの海へ定期船/上島祥子
台風が来てうねっている海への、定期船は出てゆく。大丈夫だろうかと思うが、人の暮らしがかかっている定期船は、少々の台風ならば、欠航しない。うねりの読みは、経験者にあってできること。(高橋正子)
[8月28日]
★青空に雲ながれ行き葛の花/桑本栄太郎
白い雲が流れる青空と葛の花はよく似合う。葛は花の色も深くて、いい匂いがする。秋の七草は、秋の空があってこその花と思える。(高橋正子)
[8月27日]
★小鳥来る手足伸ばせる目覚めにて/小口泰與
寝苦しかった夜の去り、小鳥が来る季節になった。手足を思い切り伸ばして起き上がる朝の目覚めが爽快だ。(高橋正子)
[8月26日]
★秋桜の咲いたる路地に朝陽差す/上島祥子
いつ見てもいい風景というのがある。秋桜と朝陽の取り合わせがすがすがしい。色とりどりの秋桜に、朝陽が差すとあたりが、生き生きとしてくる。(高橋正子)
[8月25日]
★稜線に生まれ浮き行く秋の雲/河野啓一
山の稜線のところから生まれる雲が、爽やかだ。生まれた雲が浮雲となって流れてゆくのを見る楽しさは、秋の雲なればこそ、と思う。(高橋正子)
[8月24日]
★群咲きし松虫草や溶岩の原/小口泰與
昔溶岩が流れ出たところに今は、草が生い松虫草が咲いている。高原に咲く薄紫の松虫草の名もゆかしく、詠まれた景色が素晴らしい。(高橋正子)
[8月23日]
★山城見下ろす先に秋の雲/廣田洋一
松山城は街の中心に150メートルほどの小山の上にある。天守から見下ろすと、松山平野が見渡せる。「見下ろす先に秋の雲」は、松山城のあるところ、松山の風景を的確に爽やかに詠んでいる。(高橋正子)
[8月22日]
★色鳥や彩りさかん朝の森/小口泰與
朝の森を歩くと、いろんな鳥が、囀り、枝移りする。メルヘンの世界のような楽しさに浸る作者が見える。(高橋正子)
[8月21日]
★一際に高き虫の音湯につかり/上島祥子
夜には、虫の声が聞かれるようになった。主婦が湯に入るころには、夜も涼しくなり、虫も一際高く鳴く。湯に温まりながら、高く鳴く虫の声を聴く一人の時間は貴重だ。(高橋正子)