◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

自由な投句箱/3月21日~31日

2021-03-22 11:11:19 | Weblog
※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
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今日の秀句/3月21日~31日

2021-03-22 11:10:33 | Weblog
3月31日(1句)

★花時を終えたる山のいきいきと/多田有花
花の時は花の時で、心豊かな季節であることには違いないが、花にも倦んでくる。入れ替わるように、山は新緑に燃え始める。まさに、「山がいきいきと」してくるとき。元気が湧く季節。(高橋正子)

3月30日(2句)

★漆黒の森へ朝日や花こぶし/小口泰與
森が漆黒であったが、朝日がさすと、辛夷の白い花が浮かび上がる。漆黒の夜から明るい朝へのあざやかな展開が物語の舞台を見るようだ。(高橋正子)

★大空よりも青く澄みたる春の海/廣田洋一
空より青く澄んだ春の海は、沖縄の海だろうかと想像する。穏やかな春の海が青という色に澄むのは、ひたすらに美しい。(髙橋正子)

3月29日(2句)

★花時の鎖樋より水走る/小口泰與
花時の鎖樋は、触れば冷たい鎖ながら、春雨が走り伝うと、艶めいて見える。水が生きている。(高橋正子)

★奥山のかわず鳴き居り十輪寺
「十輪寺」が効いている。業平寺とも言われている洛西の寺。奥山で聞くかわずの声が、のどかに、健やかに感じられる。(高橋正子)

3月28日(1句)

★坂道を登り来れば花の雲/桑本栄太郎
坂道を上ってきて下を眺めれば、花の雲。上っている最中は見えなかった景色に心が晴れやかに広がる。花の雲の見事さ。(高橋正子)

3月27日(2句)

★山桜に滴残して雨あがる/多田有花
山桜の魅力は山に置いてこそ。雨のあと訪ねれば花に雨の滴が残っている。雨はこの美しい滴を残してあがった。それにより、山桜にまた別の美が加わった。(高橋正子)

釣り上げし雪代山女手の冷ゆる/小口泰與
釣り上げた山女。釣り針を外そうと手に山女を持てば、手は悴んで冷たい。こんな冷たい水で泳いでいた山女とわが手への愛おしさ。冷たさの感覚がいい。(高橋正子)

3月26日(1句)

★チューリップ日の射す方に傾けり/廣田洋一
チューリップの茎が日の射すほうに傾いている。そのままの景色を写生した句だが、チューリップのかわいらしい動きが捉えられている。(高橋正子)

3月25日(2句)

★昼時を告げる鐘の音桜散る/廣田洋一
桜ののどかさが、昼を告げる鐘の音でいっそう強く意識される。鐘の音も桜によって、きよらかに、のどかに響いている。桜と鐘の響きあいがいい。(高橋正子)

★慎ましく楓の花の咲きにけり/多田有花
桜が満開のとなり、新緑が目にまぶしくなり始めると、楓の花が咲く。若緑に開いた葉の陰に「慎ましく」咲いている。見逃してしまいそうな楓の花に静かに心を止めた。(高橋正子)

3月24日(1句)

★渓音に育つや独活の青あおと/小口泰與
山に山菜が育つ季節。渓川が雪解け水を集めて力強く流れる音。その音が聞こえるところに育つ独活。渓音を聞いて、青あおと育っている。渓音と青あおと育つ独活のもつ感覚がいい。(高橋正子)

3月23日(1句)

★春暁の雲の流れの早きかな/廣田洋一
春暁は枕草子の冒頭の章句でも詠まれているが、日本人が心引かれるテーマ。この句は雲の流れの速さに、春暁の寒さ、なにかいつもと違う気配や緊張を感じ取っている。(高橋正子)

3月22日(1句)

★公魚や火灯しごろの鄙の宿/小口泰與
公魚釣りには、釣りの楽しみと、鄙びた宿に泊まる楽しみがあるようだ。公魚と鄙びた宿の灯の醸す抒情がいい。癒される句。(高橋正子)

3月21日(1句)

★山桜離れて生まるさくら色/多田有花
山桜は近くで見るとやや白く見える。離れて、塊としてみると、たしかに、さくら色なのだ。白く見える桜も桜の色をもっている。(高橋正子)
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3月21日~31日

2021-03-22 11:06:16 | Weblog
3月31日(5名)

小口泰與
支流より利根へ水増す弥生かな★★★★
吾妻の峡の棚田の菫かな★★★
潤える色のほのかに楓の芽★★★

川名ますみ
さくらさくらさくら人なき公園★★★
その先のひかりを透かす花曇★★★★
春陰に小動物を照らす小屋★★★

桑本栄太郎
花びらの花びら追うや花の塵★★★★
うす暗き屋敷畑や蘇芳咲く★★★
散る時を知りて紅差す花あはれ★★★

多田有花
花時を終えたる山のいきいきと★★★★
花の時は花の時で、心豊かな季節であることには違いないが、花にも倦んでくる。入れ替わるように、山は新緑に燃え始める。まさに、「山がいきいきと」してくるとき。元気が湧く季節。(高橋正子)

花の下母娘が自転車で通る★★★
通勤の車が並ぶ花の下★★★

廣田洋一
雨空に黄金振りまく花いっぺい★★★
焼け跡に蒲公英光る首里の城★★★★
瑠璃越しの世界遺産や風薫る★★★

3月30日(4名)

小口泰與
雪形や日矢の差したる波頭★★★
初花や菓子の訳あり市へ来よ★★★

漆黒の森へ朝日や花こぶし★★★★
森が漆黒であったが、朝日がさすと、辛夷の白い花が浮かび上がる。漆黒の夜から明るい朝へのあざやかな展開が物語の舞台を見るようだ。(高橋正子)

多田有花
おぼろ月おぼろのなかへ沈みゆく★★★★
本堂へ枝さしのべし花満開★★★
郵便ポスト桜吹雪を浴びている★★★★

桑本栄太郎
川べりの満開なるや霾ぐもり★★★
花屑のほんのり紅の地道かな★★★
折り返す対岸となる花明かり★★★★

廣田洋一
大空よりも青く澄みたる春の海★★★★
空より青く澄んだ春の海は、沖縄の海だろうかと想像する。穏やかな春の海が青という色に澄むのは、ひたすらに美しい。(髙橋正子)

春雨を浴びし草の葉生き生きと★★★
春の水滴り落ちて鍾乳仏★★★

3月29日(4名)

小口泰與
薇の三和土に干せり婆の顔(原句)
薇を三和土に干せり婆の顔★★★(正子添削①)
薇を三和土に干して老婆なり(正子添削②)

花時の鎖樋より水走る★★★★
花時の鎖樋は、触れば冷たい鎖ながら、春雨が走り伝うと、艶めいて見える。水が生きている。(高橋正子)

桃の花散るや狭軌の足尾線★★★

桑本栄太郎
奥山のかわず鳴き居り十輪寺★★★★
「十輪寺」が効いている。業平寺とも言われている洛西の寺。奥山で聞くかわずの声が、のどかに、健やかに感じられる。(高橋正子)

山里の背につづきけり花の雲★★★
さみどりの混じり片方や春落葉★★★

多田有花
昇りゆく車に花吹雪しきり
「昇り」にちょっと違和感があります。

春雨に洗われし木々眺めおり★★★
幾人の人を迎えし桜かな★★★

廣田洋一
蝶二頭縺れ合ひつつ飛び去りぬ★★★
囀りに取り巻かれおる玉泉洞★★★★
春風や霊気満ちたる遥拝所★★★

3月28日(4名)

小口泰與
薇や里人以外入山禁★★★
奥利根の峡の田径の蕨かな★★★
頂上や見事ひともと花明かり★★★★

廣田洋一
道端に丸まり咲きしたんぽぽかな★★★★
蒲公英や絮の飛ぶ先新天地★★★
一便に乗り損ねたる蒲公英の絮★★★

多田有花
日輪を隠す山桜の大樹(原句)
日輪を隠す大樹の山桜★★★★(正子添削①)
日輪を隠す大樹や山桜    (正子添削②)
切れ字「や」を使うと古い感じになるので、それを避けたければ添削①にします。

花びらのながれ来るなか演奏す★★★
春風がしきりに楽譜めくりおり★★★

桑本栄太郎
二巡目の春の宴の自粛かな★★★
坂道を登り来たりぬ花の雲(原句)
「来たりぬ」の「ぬ」は動作の完了の意味で強く切れています。したがって「花の雲」が付け足したようになっています。その関係は、不即不離で。(高橋正子)
坂道を登り来れば花の雲★★★★(正子添削)
坂道を上ってきて下を眺めれば、花の雲。上っている最中は見えなかった景色に心が晴れやかに広がる。花の雲の見事さ。(高橋正子)

密となるピンク色濃くにはざくら★★★

3月27日(4名)

多田有花
奏でれば鶯鳴くよ絶え間なく★★★
山桜に滴残して雨あがる★★★★
山桜の魅力は山に置いてこそ。雨のあと訪ねれば花に雨の滴が残っている。雨はこの美しい滴を残してあがった。それにより、山桜にまた別の美が加わった。(高橋正子)
境内は甍の波と花の波★★★★

小口泰與
釣り上げし雪代山女手の冷ゆる★★★★
釣り上げた山女。釣り針を外そうと手に山女を持てば、手は悴んで冷たい。こんな冷たい水で泳いでいた山女とわが手への愛おしさ。冷たさの感覚がいい。(高橋正子)

葦の芽や水きり石の対岸へ★★★
轟ごうと谷川駆ける雪濁★★★

廣田洋一
卒業の紫袴早稲田かな★★★
夕茜映して紅き夕桜★★★★
遠富士の裾に浮かびし夕桜★★★

桑本栄太郎
花影のさくら並木やトンネルに★★★
つんつんと赤き垣根や新芽立つ★★★
咲き初むる黒き目玉や豆の花★★★

3月26日(3名)

小口泰與
山峡の一人静へ夕日影★★★
園児らの楽しい歌や筆の花★★★
大利根の渡しの跡や蘆の角★★★

廣田洋一
春なれど明るく揺れる芥子の花★★★
チューリップ日の射す方に傾けり★★★★
チューリップの茎が日の射すほうに傾いている。そのままの景色を写生した句だが、チューリップのかわいらしい動きが捉えられている。(高橋正子)

チューリップ赤き一花重たげに★★★

桑本栄太郎
ふるさとを遠くに偲ぶ犀星忌★★★
川べりの花の三分や地道行く★★★
花影の鋪道に揺るる散歩かな★★★

3月25日(4名)

小口泰與
揚雲雀空の近づく展望台★★★★
春宵や両面染めの江戸小紋★★★
物の芽や窓をさえぎる通り雨★★★

廣田洋一
沈丁の香に誘われて遠まわり★★★
昼時を告げる鐘の音桜散る★★★★
桜ののどかさが、昼を告げる鐘の音でいっそう強く意識される。鐘の音も桜によって、きよらかに、のどかに響いている。桜と鐘の響きあいがいい。(高橋正子)

産土の桜の下に幼稚園★★★

多田有花
降る雨に桜の白く浮き立ちぬ★★★
楓の芽ほぐれればはや陽を透かす★★★
慎ましく楓の花の咲きにけり★★★★
桜が満開のとなり、新緑が目にまぶしくなり始めると、楓の花が咲く。若緑に開いた葉の陰に「慎ましく」咲いている。見逃してしまいそうな楓の花に静かに心を止めた。(高橋正子)

桑本栄太郎
ほつほつと頬に雨つぶ春曇り★★★
さみどりの釣鐘かさね土佐みづき★★★
咲き分けの源平桃の軒端かな★★★★

3月24日(4名)

小口泰與
渓音に育つや独活の青あおと★★★★
山に山菜が育つ季節。渓川が雪解け水を集めて力強く流れる音。その音が聞こえるところに育つ独活。渓音を聞いて、青あおと育っている。渓音と青あおと育つ独活のもつ感覚がいい。(高橋正子)

囀りや割り箸すぱっと割れにける★★★★
夕暮の雨後の椿や潦★★★

廣田洋一
次々と小鳥飛び来る桜かな★★★
朝桜歩みゆるめて仰ぎけり★★★
道端に画帳広げし桜かな
「(広げ)し」は、「(広げ)き」の連体形なので、桜を修飾することになります。口語になおせば、「画帳広げた桜」となります。


桑本栄太郎
岩走る垂水となりぬ春の川★★★
足元のクッションなりぬ草芽吹く★★★★
春の夢遠くの孫と遊び居り★★★

多田有花
沈丁花白一色の香を放つ★★★
まだ若き枝垂桜が境内に★★★★
この山にこれほど桜ありしとは★★★

3月23日(4名)

小口泰與
ごうごうと男波を踏まえ雪解川★★★
囀りや園児の描くクレヨン画★★★★
隠れ沼に影震わすや春の蝶★★★

廣田洋一
春暁や高層ビルの窓暗し★★★
春暁の目覚まし止めてまどろみぬ★★★
春暁の雲の流れの早きかな★★★★
春暁は枕草子の冒頭の章句でも詠まれているが、日本人が心引かれるテーマ。この句は雲の流れの速さに、春暁の寒さ、なにかいつもと違う気配や緊張を感じ取っている。(高橋正子)

桑本栄太郎
咲き満つる丘一面の花菜かな★★★★
山里に旧知と出会う春日さす★★★
つんつんと赤き垣根や新芽立つ★★★

多田有花
朝ごとに今日の桜へ挨拶を★★★
手水舎に寄り添い枝垂桜咲く★★★★
残る梅の下に座りて鍵ハモを★★★

3月22日(4名)

小口泰與
花咲きてひときは老し我と犬★★★
公魚や火灯しごろの鄙の宿★★★★
公魚釣りには、釣りの楽しみと、鄙びた宿に泊まる楽しみがあるようだ。公魚と鄙びた宿の灯の醸す抒情がいい。癒される句。(高橋正子)

産土は今ひたすらに花のころ★★★

廣田洋一
墓参終へ珈琲すする彼岸かな★★★
彼岸桜は菩薩の笑みや墓参り★★★★
春疾風たまらず入る軒のした★★★

桑本栄太郎
花冷えや未だ三分のさくら咲く★★★★
ひこばえの幹に咲き初む桜かな★★★
びょうびょうと耳朶過ぎぬ春疾風★★★

多田有花
雨のなか染井吉野の咲き始め★★★
アスファルトの隙間に咲ける菫かな★★★
山桜さくらの色もさまざまに★★★★

3月21日(4名)

小口泰與
木蓮やテレビアンテナみな西へ★★★
雛菊やひたと日の出る地平線★★★★
ひたぶるに朝の読経や松の花★★★

廣田洋一
ふらここの順番待ちの母一人★★★
十年経てなほ余震有り彼岸かな★★★
お彼岸や手を取り合ひて老夫婦★★★

多田有花
対岸は桜の山となりにけり★★★
春分や曇りて夜には雨となり★★★
山桜離れて生まるさくら色★★★★
山桜は近くで見るとやや白く見える。離れて、塊としてみると、たしかに、さくら色なのだ。白く見える桜も桜の色をもっている。(高橋正子)

桑本栄太郎
ふるさとを遠くに想う入り彼岸★★★★
房枝垂れ雨の滴や馬酔木咲く★★★
囀りに合わせ口笛真似にけり★★★
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自由な投句箱/3月11日~20日

2021-03-12 15:43:51 | Weblog
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今日の秀句/3月11日~20日

2021-03-12 15:41:56 | Weblog
3月20日(2句)

★芽柳や紙飛行機の風に乗り/小口泰與
芽柳がやわらかにそよぐほどの風がある。紙飛行機が軽く風にのって飛ぶ。春風の姿がよく詠まれている。(高橋正子)

★五分咲きの桜の枝の活気かな/廣田洋一
桜が五分ほど咲いた。十分花を楽しめる咲き具合。これから満開へとぐっと力を溜めている。いきいきとした桜の様子に励まされる思いだ。(高橋正子)

3月19日(2句)

★桜の芽緑色濃くふふみけり/廣田洋一
桜の芽が膨らんできている。今、芽は生気に満ちた緑色。日々刻々に変化して開花に向かう桜を楽しみにしている心。(高橋正子)

★来し方を振り返りつつ花仰ぐ/多田有花
「さまざまな事思ひ出す桜かな 芭蕉」の句を思い出すが、桜は一年の区切りを印象付けてくれる花。多くの人が持つ心境。(高橋正子)

3月18日(2句)

★道はたと途絶え端山の牧開き/小口泰與
端山への道を辿ると、はたと途絶えるところ。そこに牧場が開かれ、思わぬ景色にであう。いよいよ放牧の季節となった明るさが感じられる。(高橋正子)

★鴬の啼く姿見ゆ三角点/古田敬二
三角点は山の頂上あたりに設置されている。そこで、鴬が啼く姿を目の当たりにした。普段は声を聞くのみの鴬だけに、感激である。「三角点」を詠み込んだのが新しい。(高橋正子)

3月17日(3句)

★あたたかや使ひ古しの木の定規/廣田洋一
最近は木の定規が珍しくなったが、使い馴染じみ古した木の手触りがあたたかい。暖かな日が差すところにある木の定規。昭和のなつかしさが湧く(高橋正子)

★朝を呼び幾度も雉の鳴き続く/多田有花
春山に雉の声が鋭く響く。いく度もなく鋭声に記事は朝を呼んでいるようでもある。春の朝が雉に呼ばれてやって来る。(高橋正子)

★御嶽の遠くかすんで桜咲く/古田敬二
御嶽と桜がある景色。霞がかかり御嶽は遠くかすんでいる。桜の雲がやわらかに前景にある。(高橋正子)

3月16日(2句)

★つばくろや軒の広びろ菓子問屋/小口泰與
「つばくろ」は「つばめ」のこと。春になってつばめが南の国から帰って来てくれるのはうれしいことだ。代々続く菓子問屋の広い軒のつばめの巣。さそじゃ貫録のあるものであろう。(高橋正子)

<洛西の山里>
★白壁の築地に添いぬ白木蓮/桑本栄太郎
白壁の築地は、日にあたると白が眩しい。白木蓮の白も眩しい。白に白が重なる眩しさがいい。(高橋正子)

3月15日(1句)

★春雷や玻璃戸を囃す山の風/小口泰與
春雷が轟き、山から吹く風はガラス戸をガタガタ鳴らす。座っている部屋の出来事。雷やガラス戸を鳴らす山の風が上州の作者の生活を語っている。(高橋正子)

3月14日(3句)

★山峡の田水に走る蝌蚪の影/小口泰與
山峡の田には、昭和の景色がそのままが残っているようで、懐かしい。光が差し込む澄んだ田水には蝌蚪が泳ぐ影が映っている。(高橋正子)

★鴬の囀り響く濃き朝霧/多田有花
朝霧が濃く立ち込める中に鴬の囀りが聞こえる。「濃い朝霧」に山深さを思い起こす。鴬の声は、山で聞きたい。(高橋正子)

★蓬餅思い起こせば母がおり/古田敬二
蓬餅を食べると、母を思い出す。思い出す以上にそこに母がいる。野で摘んだ蓬がたっぷりと入った蓬餅は母が作ってくれるものだった。「母がおり」の心境がいい。(高橋正子)

3月13日(1句)

★春の野や摘みたる花を押花に/廣田洋一
春の野に遊んだ一日。摘んだ花を押し花にした。春の野の記憶を残すように、花を押し花にした。もちろん花好きのせいで。(高橋正子)

3月12日(1句)

★ものの芽や在校生のランニング/桑本栄太郎
在校生とあるから、上級生が卒業していないのだろう。残された在校生たちが、ランニングに励んでいる。上級生が欠けた一時は、ものの芽が育つとき。その時が上手く詠まれている。(高橋正子)

3月11日(2句)

★我が浅間今ひたすらに雪解かな/小口泰與
「我が浅間」は、毎日毎日見ている浅間山。私のもの、私の体となった浅間山。それほど親しい浅間山は今雪解けの季節なのだ。浅間山賛歌。(高橋正子)

★友を訪う分葱一束携えて/古田敬二
友を訪うときにもってゆくもの。酒や魚もあるだろうが、この日は分葱。早春の料理としてぬたに和えて食べるとおいしい分葱だ。ご自分が丹精してつくられたのだろう。心の籠った一束に友は喜ばれたことだろう。(高橋正子)
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