7月31日(3句)
★大夕焼けコンテナ船は西へ行く/多田有花
コンテナ船が西へ、大夕焼けの中に入っていくように進んでいる。それが絵になっている。(高橋正子)
★分校の水場に陰を百日紅/小口泰與
分校の水場には、百日紅が咲いて、水場に陰を作っている。分校の校庭の隅だろう。少し時間が止まったような、分校の夏の雰囲気が伝わる。(高橋正子)
★白南風や白き潮目に舟二艘/谷口博望(満天星)
梅雨が明けると、海は眩しく耀く。潮目に白浪がたち釣り舟か二艘の船が浮き、目に涼しさを呼んでいる。(高橋正子)
7月30日(2句)
★甚平に心はずませ散歩する/廣田洋一
甚平の着心地の良さは、洋服にはない軽やかさだ。風が通り、腕や脚が自由だ。それでお洒落であれば、「心はずむ」。夏の衣を楽しむのもいいものだ。(高橋正子)
★夕菅や榛名湖へ投ぐルアー釣/小口泰與
榛名湖へルアーを投げる釣の時間を夕菅ロマンチックに彩る。「ルアー」が現実感から少し離れているので、夕菅の花との取り合わせに効果がでている。(高橋正子)
7月29日(2句)
★ひぐらしや夕餉につくるカルパッチョ/多田有花
カルパッチョ(Carpaccio)は、イタリアの画家であるヴィットーレ・カルパッチョの名に依頼する生の牛ヒレ肉の薄切りに、チーズもしくはソースなどの調味料をかけた料理の総称だが、日本においては、生の牛ヒレ肉の代わりに、マグロやカツオ、サケなどの刺身を使用したカルパッチョが和洋折衷料理(西洋料理の日本風アレンジ)の代表例となっており、カルパッチョの発祥国イタリアにおいても、世界的な刺身ブームの影響を受け、生の魚肉を使ったカルパッチョや、野菜やフルーツを使ったものも多くなってきている。(ウィキペディアより・高橋信之)
★土かびの匂い立ち居り夕立風/桑本栄太郎
懐かしい想いが蘇ってくる。「夕立」に見る、日本の懐かしい風景が浮かび、実感のある句だ。(高橋信之)
7月28日(2句)
★もぎたてのトマトに残る陽の温み/多田有花
父はサラリーマンだが、母が農家の出身だったので、家庭菜園での農作業で母の手伝いをした少年時代の思い出が懐かしい。私の兄弟姉妹は4人であったが、農作業の手伝いをしたのは、私だけであった。炊事などの家事の手伝いでも私だけであった。小学四五年生頃には、自家製のマヨネーズをよく作っていたのを鮮明に思い出す。算数理科が得意だったので、マヨネーズ作りは、理科の実験だと思ったのだろう。(高橋信之)
★炎天下水売りの鈴響きけり/廣田洋一
鈴の音に涼しさを感じたのだ。「水売り」という炎天下の涼しさがいい。(高橋信之)
7月27日(3句)
★朝涼のなかで一枚描きあげる/多田有花
一枚の絵を描き上げた充足感が伝わる句だが、その充足感が、朝涼の空気のように、あっさりとして、さらりとした絵を想像する。(高橋正子)
★親友と登山せし日の青き空/廣田洋一
親友と登山した日は、若い日であろうと思う。頂上に憩ったとき見た青空は、さわやかな充実感を象徴しているようだ。(高橋正子)
★葬儀より帰れば聞こゆ遠花火/川名ますみ
身近な人の葬儀かもしれない。空虚感を埋めるように遠くの花火の音が聞こえる。遠花火は美しくもはかない。(高橋正子)
7月26日(2句)
★夏の鯉濡れ新聞に包みけりつ/小口泰與
「夏の鯉」には、戦後の高校時代の思い出がある。戦後流行した結核に罹った私は、「夏の鯉」を食した。近くに住んでいた少年が川底に竹筒のような「仕掛け」を沈めて獲ってくれた。(高橋信之)
★風に添いうすき二匹や夏茜/桑本栄太郎
風に浮く「夏茜」の姿に、病に明け暮れた少年時代を思い起こす。「夏茜」の姿に明日の希望を見たのであろう。(高橋信之)
7月25日(2句)
★凌霄花や山の奇岩のそそり立つ/小口泰與
凌霄花は、中国原産の花で、平安時代には日本に伝わったとされている。橙色の大型の花で、どこにあっても目立ち、どくどくの雰囲気を作っている。山の奇岩の傍にあれば、南画のような風景が思い浮かぶ。(高橋正子)
★稜線のゆるむ遠嶺や炎暑なる/桑本栄太郎
炎暑に、空は煙ったようになる。遠山の稜線もくっきりとはしない。そこを「ゆるむ」と表現した。炎暑が極まった感じだ。(高橋正子)
7月24日(2句)
★燕二羽顔出す朝の風/廣田 洋一
夏燕と朝の風が涼しさを呼んでいる。燕二羽というもの可愛らしい。(高橋正子)
★河童忌の冷茶漬け食ぶ昼餉かな/桑本栄太郎
河童忌と冷茶漬けの取り合わせにペーソスがあって、涼しさがある。それがいい。(高橋正子)
7月23日(2句)
★日に晒す水をビニールプールへと/小口泰與
ビニールプールは子どもたちのためだろう。「日に晒す」がいい。ビニールプールに水を広々と入れると、水は日に晒される。ビニールプールの底の絵柄がよく見えてたのしいものだ。(高橋正子)
★鈍行の扉開くたび蝉しぐれ/桑本栄太郎
外は蝉時雨。鈍行電車が走っている間は、窓や扉はきっちり閉められ蝉時雨は聞こえないが、駅ごとに電車が止まり、扉が開くと蝉時雨がどっと入り込む。外の暑さ、蝉の元気さを知る時。(高橋正子)
7月22日(3句)
★遊船に声湧きあがる蓮の花/小口泰與
蓮の花見の遊船。蓮の花は仏様の花としてのイメージもあって、極楽に遊ぶような蓮見の遊船だ。(高橋正子)
★間伐の枝を手折りて登山杖/廣田洋一
登山には、特に足腰が弱い人でなくても、ストックがあれば、歩行が安定するし、ずいぶん助かる。杖もいらぬと判断して登り始めたのだろうが、途中、杖があればと、枝を杖に折った。登山の様子が眼に見えて、楽しい。(高橋正子)
★夏山の命盛んな道走る/川名ますみ
夏山の中の道を車で走ると、「夏山の命」というような、勢いのある夏木立、夏草に出会う夏山に「命」というものを感じてしまう。(高橋正子)
7月21日(2句)
★花葛の護岸に立てば厳島/谷口博望(満天星)
厳島が見張らせる葛の花の咲いている護岸。世界文化遺産になっている観光地厳島であるが、護岸には葛が生い茂り、花を咲かせている。生い茂る葛が自然の力を見せている。(高橋正子)
★少年のピアスきらめく朝涼し/桑本栄太郎
「朝涼し」がいい。ピアスをした、手足のすらりと伸びた日焼けした少年をさわやかにしている。(高橋正子)