7月31日(1句)
★更衣マダムロシャスの香ばかりに/川名ますみ
更衣をした爽やかさ。それに加わる香水の香り。多分、昨年12月他界されたお母上の愛用の香水なのであろう。
パリのエレガンスと言われたマダムロシャスの香りに、母上をしのび生きる力をもらっているように思う。(高橋正子)
7月30日(1句)
★落日に金の縁取り雲の峰/古田敬二
金色に縁取られた雲の峰が絵のようだ。雲の峰の力強さは、夕方にあっても衰えない。(高橋正子)
7月29日(1句)
★ひぐらしや暮れて残りぬ茜空/桑本栄太郎
日は沈んだが、空の茜はいつまでも残っている。ひぐらしの声も淋しさを帯びてきたが、、茜空は今日の日を最後まで静かに燃えて終わるのだ。(高橋正子)
7月28日(1句)
★蜜豆や句作の苦労明かし合ひ/廣田洋一
楽しさもあり、苦労もあるのが句作の醍醐味なのであるが、男性が、蜜豆で話が済む苦労なら、楽しい苦労なのであろう。手の内を明かしたり、相手の技を聞いてみたりと。(高橋正子)
7月27日(1句)
★初取りの胡瓜を詰める旅かばん/古田敬二
旅に出る。子どものもとへの旅だろう。旅かばんのすき間に自家菜園で採れた新鮮な胡瓜を詰めて土産とする。飾らない親の思いだ。(高橋正子)
7月26日(2句)
★夕暮れの入日惜しむや油蝉/桑本栄太郎
夕暮の蝉の声は、「入日を惜しむ」と思えるほど波打つように鳴く。時を惜しむかのようでもある。(高橋正子)
★野に立てる水筒たちまち汗を噴く/古田敬二
野の仕事、草取りなどの野の仕事に水筒をもって出掛け、野に立てておくと、冷たい水筒は、たちまちに結露して、汗を噴く状態に。まるで生きている過のように。(高橋正子)
7月25日(2句)
★水たっぷり持って真夏の山登り/多田有花
真夏の登山は、汗だくなのであるが、山頂に至って涼風に吹かれる醍醐味は捨てがたいのだろう。汗をたっぷりとかいた体には、たっぷりの水が必要。お茶ではなく、「水」であるのが、さわやかだ。(高橋正子)
★杉林まっすぐそろう時鳥/古田敬二
杉の林は、人工的に植林されて、まっすぐにそろい、美林と言うに相応しい。そこに響く時鳥の声。時鳥の鋭声に山の静寂が思える。(高橋正子)
7月24日(1句)
★太梁の煤ける山家時鳥/古田敬二
山家の大梁が煤ている。その煤けた大梁に囲炉裏など焚いた昔の生活が偲ばれる。山家には時鳥が鳴く。久女の旧家か。久女には英彦山で詠んだ名句「谺(こだま)して山ほととぎすほしいまゝ 」がある。(高橋正子)
7月23日(1句)
★庭隅の涼しげな色誘蛾灯/廣田洋一
暑い夏。涼しげな色があれば、ほっとする。「涼しさ」は心の内にあるのかも。誘蛾灯の色に涼しさを見つけた。(高橋正子)
7月22日(2句)
★部屋中の窓開け見上ぐ月涼し/多田有花
部屋中の窓を開け放ってみると涼しいのだ。見上げる月も涼しい色に輝いている。月があれば涼しさもなお、である。(高橋正子)
★水替へて華やぎ戻る水中花/廣田洋一
水は不思議なもので、新しく替えた水はやはり、よく透き通り、いきいきとしている。水中花も新しい水で、鮮明な色を発して、華やぎがもどった。そこに涼しさが生まれた。(高橋正子)
7月21日(1句)
★ボート漕ぐ土手の家族に手を振りつ/廣田洋一
ボートを漕ぐ楽しさもいろいろ。土手の家族に手を振り、ボートの楽しさを分かち合う。水上の涼しさがと手の家族にも伝わりそう。(高橋正子)