◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

●添削12月④●

2012-12-24 09:26:42 | Weblog
[12月23日~31日]

▼12/31

●桑本栄太郎
目玉品値切る客あり年の暮★★★
暗闇を燈し切れざり冬の月★★★
歳晩の積み木広場や爺と孫★★★

●小口 泰與
雨毎に鮮やかなりし冬菜かな★★★
上州の風に磨ける干大根★★★
寒雀ふわりと小枝動きけり★★★

▼12/30

●高橋 秀之
大掃除終えて玄関注連飾る★★★
今年から家族総出で年用意★★★
自転車の買い物籠に冬の雨★★★

●川名ますみ
年用意日々の下着を新しく★★★
掃納はたきの羽根を整える★★★
・首都高目黒線より自然教育園を望む
冬の日に自然教育園しろじろ★★★

●桑本 栄太郎
買物の袋せり出し注連飾り★★★
歳晩のカート山盛りレジの前★★★
数へ日の呼び込み高きスーパーは★★★

●多田 有花
雨多き師走間もなく暮れてゆく★★★
土砂降りの小晦日なり家籠り★★★
こんがりとお好み焼きの小晦日★★★★

●小口 泰與
熱燗や母家の土間に風棲める★★★
土間のある母屋は、伝統的な日本の農家の代表的な間取り。熱燗で一杯やるが、風がすうすうしている。作者がお住まいの上州ならば、余計に、土間にも風が棲んでいると思われるのだろう。(高橋正子)

年寄りの集う日向や寒雀★★★
また一羽鳶と争う寒鴉★★★

▼12/29

●桑本 栄太郎
燦々と桜冬木の青空へ★★★★
早ばやと友の挨拶年暮るる★★★
煤逃げの客の多さよ珈琲館★★★

●川名ますみ
カーテンに石鹼匂う年の暮★★★
石鹼の香のカーテンと年の暮★★★
冬空に子どもが塗ったような青★★★

●高橋 秀之
ポップコーン持って映画に冬休み★★★ 
昨年の挨拶見返し賀状書く★★★ 
結露拭く指に寒さを感じつつ★★★

●多田 有花
本堂に注連飾られて陽の燦々★★★★
本堂に注連が飾られ、新年を迎える用意ができた。陽が燦々と降り注ぎ、注連の藁も清々しく匂うようだ。新年を迎える境内の清浄な風景だ。(高橋正子)

晴れてくる霧の中から冬の山★★★
数え日や仕事の車洗う人★★★

●小口 泰與
隼や鈍色の雲沸き立ちぬ★★★★
上州の風の磨ける冬芽かな★★★
干大根老婆の皺の深きかな★★★

▼12/28

●高橋 秀之
汽笛鳴るフェリーの後にゆりかもめ★★★★
フェリーが汽笛を鳴らし港を出てゆく、その後を追って、真白なゆりかもめが飛んでゆく。ゆっくりとした明るい景色がよい。(高橋正子)

拭き掃除机は仕事納めの日★★★ 
薄雲の隙間に明るき冬の月★★★ 

●小西 宏
低い雲に焚き火の匂い町の畑★★★
半纏の胡坐して綯(な)う注連飾り★★★
モスクワの思い出
雪の街のビニール店舗にバラ花束★★★

●桑本 栄太郎
数へ日や役目の多き吾が休日★★★
雲流れたちまち嶺のしぐれ空★★★
露天湯へ出でて中天冬の月★★★

●多田 有花
石投げて氷の厚さ確かめる★★★★
夕映えに満月の出て年の暮★★★
霙るるや柿を飛び立つ椋の群★★★

●小口 泰與
青空や老婆白菜よっこらさ★★★★
雪止むや谷川岳へ続く径★★★
狼の牙の如きや冬妙義★★★

▼12/27

●藤田裕子
柚子添えて焼き魚にも華やぎを★★★
小夜時雨忌中はがきを読み返し★★★
「火の用心」師走の町に声透る★★★

●桑本 栄太郎
青空に白く枝張り冬日燦★★★★
想い出は吾の来し方賀状書く★★★
小さくとも鉢に渦巻きミニ葉牡丹★★★

●多田 有花
盛り土もパワーショベルも霜の中★★★
犬抱いて凍れる池を見る親子★★★
ひとときを歳暮の晴れし頂に★★★

●迫田 和代
葉を落とし枯木の向こうに蒼い空★★★★
静まった平和公園の年の暮れ★★★
僅かだが緑の残る冬の街★★★

●小口 泰與
冬落暉瞳に残し帰宅せり★★★★
冬落暉のイメージとしてその荘厳さが目に浮かぶ。今日の無事を思い、明日もそうであることを願う落暉を自分の心に取り込んだ思いがよい。厳しい寒さの一日の終わりなればこそ。(高橋正子)

泛子飛びて流れに乗るや冬ぬくし★★★
日に焼けし農婦寒波の中に居り★★★

▼12/26

●小西 宏
ひかり満てる冬木に鳥の影を追う★★★★
冬ざれの崖に羊歯の葉青みたり★★★
枯れ果てし蒲の穂綿の千切れ飛ぶ★★★

●佃 康水
 公民館に参加
部屋中に青き香させて注連を綯う★★★
句はがきを立花に添わせ年用意★★★
序の如き一花真紅の八重椿★★★★

●桑本 栄太郎
初雪の朝日の中よ青空よ★★★★
初雪や橋を行き交う傘とりどり★★★
鳥罠を想いだしけり青きの実★★★

●多田 有花
木の間より冬陽を返す播磨灘★★★
見上げれば真青な空に長元坊★★★
裏白を採りて戻りし人と会う★★★★
年用意に裏白を採ってきた人と出会い、さわさわとした山の匂いに年改まる気持ちが掻き立てられる。すっきりと爽やかな年の暮である。(高橋正子)

●小川 和子
積雪のまず語られる電話越し★★★
霜降る夜に剥くしっとりとラ・フランス★★★
夫と居て賀状書く夜の更けゆけり★★★

●小口 泰與
鈍色の雲の下なる枯尾花★★★
白息やがたんと停まる吾妻線★★★
くしゃみして寝ている犬を驚かす★★★

▼12/25

●桑本 栄太郎
遠き日の吾が青春よイブの夜★★★
幾たびも演じられ来し聖夜劇★★★
馬小屋の桶に聖夜の灯りかな★★★

●多田 有花
日の光蘇り来るクリスマス★★★
雲晴れて北風の音高まりぬ★★★
クリスマス山を巡りて戻りけり★★★

●祝 恵子
透く袋蕪の白さが見えている★★★
鍬置かれ立ち入り禁止のクワイ畑★★★
初採りの冬菜根を持ち土落とす★★★★
秋に蒔いた菜が寒さの中にようやく育った。引き抜いた菜の根を持ち土をほろほろ落とす。寒そうな土と丈夫な根に冬菜の元気が見える。(高橋正子)

●井上 治代
冬空の寂しきまでに青深し★★★ 
恙なくひととせ終えて日記買う★★★★ 
清澄な空気を纏い冬菜採る★★★

●小口 泰與
あけぼのの手袋通す山風よ★★★
ひと筋の朝日に浮ぶ浮寝鳥★★★
長き夜を波のままなる浮寝鳥★★★

▼12/24

●小西 宏
冬空の叫ぶや鵯(ひよ)の一羽いて★★★
枯芝の球場ひとり球を投ぐ★★★
里山の道正しかり青木の実★★★

●桑本 栄太郎
曳航の泡の軌跡や冬の海★★★
雨降れば雪と見まごう夜の家路★★★
高階の窓につらなり冬燈洩る★★★

●川名ますみ
人参の朱を透かせし泥払う★★★★
観察がいいのだ。下五の「泥払う」は、生活を詠んで、一句を引き締めている。(高橋信之)

人参のポタージュスープにスパイスを★★★
ドアノブに人参詰めし紙袋★★★

●多田 有花
枯葉踏み日の光踏み森をゆく★★★
クリスマスリースを飾りステーキ屋★★★
クリスマスイブその夕焼けの明るさよ★★★★

●小口 泰與
あけぼのの赤城颪ぞ浴びに来よ★★★
中腹へ陽の射してをる時雨かな★★★
風止みて初冠雪の赤城かな★★★

▼12/23

●桑本 栄太郎
芽をつむぐ冬の並木に朝日かな★★★
枯草や売地看板のみ目立ち★★★
風落ちて嶺の昏れゆく冬入日★★★

●小西 宏
蔦枯れて木目の深し古館★★★★
枯蔦の絡まる古館。木目に着目し、枯れ、古びたものの味わいを詠んだのがよい。(高橋正子)

石塀に背伸びをすれば花八手★★★
枯葉積む藪に小綬鶏鳴いて消ゆ★★★

●多田 有花
猪のどどどと去りし冬の森★★★
冬の陽が所々にこぼれ降る★★★
一枚になりて外され古暦★★★

●小口 泰與
茶の花や真白き富士を眼間に★★★★
雪の富士と茶の花の取り合わせの句だが、眼間の富士の厳しさと、茶の花の白のやわらかさがよく出ている。(高橋正子)

幾列も朝日切り行く鴨の列★★★
三ケ日の蜜柑や富士を仰ぎ見る★★
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●添削12月③●

2012-12-16 20:00:13 | Weblog
[12月16日~22日]

▼12/22

●佃 康水
強霜や畝に菜の葉を張り付かせ★★★
川満ちて白際やかや花八つ手★★
枯木道広島城の見え隠れ★★★

●下地 鉄
風にゆれ夕日に淋し枯れすすき★★  
君が代に微笑む真央の師走かな★★  
湯煙の流れる其処に石蕗の花★★★★

●桑本 栄太郎
朝空の淡き稜線山眠る★★★
青空をビルの切り取る十二月★★★
雲を刷きスカイブルーや冬の嶺★★★

●多田 有花
ノンアルコールビールで乾杯年忘れ★★
忘年会果て夜の雨の中へ★★★
実南天に雫残して雨あがる★★★

●小西 宏
枯枝の触れ交う空に青深し★★★★
青空に枯枝が交差している景色はきれいだが、この句は、さらに空をよく観察して「青深し」とした。そこに作者の「見よう」とする意思が働いて句に深みがでた。(高橋正子)

南面の辛夷冬芽の陽の温み★★★
過ぎしこと孫らのことよ冬至の夜★★★★

●迫田 和代
隔たった刈田の道のまっすぐさ★★★
冬の島何処まで空だか海かしら★★
一本の鉄路の通る枯野かな★★★★

●小口 泰與
三つ島の影も長きや冬落暉★★★
森深し水面にぎわふ冬桜★★★
寒暁や湖を割り行く鳥の列★★★

●川名ますみ
柚子風呂に葉を嗅いでみてほの甘き★★★
柚子の葉の甘さも冬至風呂の香に★★★
挿し木より白き根光る冬の土★★★

▼12/21

●藤田裕子
車窓にはつぎつぎ冬木武骨なる★★★
朝震わせ霰地面を跳ね返す★★★
雨上がり桜冬芽の赤微か★★★

●桑本 栄太郎
<神戸六甲アイランドへ>
冬潮へ乗り出し空へモノレール★★★
冬潮のゆらぎ眩しき朝日かな★★★
曳航の波の軌跡や冬の潮★★★

●小西 宏
山茶花の華やぎ広し山の陰★★★
水楢の落ち葉敷き積む社宅跡★★★
母を見舞う
リハビリの冬至の窓に歩を数う★★★

●多田 有花
頂に立ちて冬至の町を見る★★★★
「頂に立ちて」が効いた。「冬至」という日の作者の感慨が伝わってくる。一年で最も短い一日だ。(高橋信之)

跪き室咲きの花に近く寄る★★★
シクラメン並び冬至の生花店★★★

●河野 啓一
冬至湯のまるき柚の香に身を沈め★★★
冬至る森の樹冠の耀いて★★★
浮き寝鳥冬至の水に遊びおり★★

●小口 泰與
釣り筏冬満月を賜わりぬ★★★
見下ろすや伊勢湾光り小六月★★★
昇り来る朝日ひと筋牡蠣筏★★★

▼12/20

●桑本 栄太郎
嶺の端をほのと染め居り霜の朝★★★
極月の朝日眩しく日差しけり★★★
嶺と峰連ねる鉄塔山眠る★★★★

●小西 宏
白い雲ゆるりと浮かべ葱畑★★★★
師走の田園風景がいい。「ゆるりと」がいいのだ。「葱畑」に「白い雲」を見て、師走の心がゆたかだ。(高橋信之)

大根の葉のこんもりと根を隠す★★★
冬の陽に赤き葉残す花水木★★★

●河野 啓一
枯れ切って銀杏並木のさばさばと★★★
枯木立透かし見たれば鴨の池★★★
久しぶり子から便りの都鳥★★★

●多田 有花
枯枝の上に出ており昼の月★★★
池の水少なきに鴨散りばめて★★★
ぽつぽつと人来て冬の植物園★★★

●小口 泰與
茶の花や長き裾野の芙蓉峰★★★
伊勢湾の忽と艶めく冬の虹★★★
三つ島を浮かす光りや冬の月★★★

▼12/19

●小西 宏
やわらかな雲より広ぎ枯葉ふる★★★★
枯山に明かり残して暮れ行ける★★★
ビル遠く紅々と照り冬暮れる★★★

●桑本 栄太郎
書き込みめくりめくりて暦果つ★★
おにぎりとカラオケ妻の忘年会★★★
風呂タイル磨く戸外は虎落笛★★★

●小川 和子
治水橋
何処までも青空冴ゆる橋向こう★★★★
人は「橋」に特別な思いを寄せることが多い。橋の向こうは、知らない町へと続く。橋向こうの冴えた青空にその続きを思うこともある。(高橋正子)

選ることも楽し聖夜の贈物★★★
冬茜秩父の山脈際立たす★★★

●河野 啓一
冬耕の畦や水菜のみずみずし★★★
冬紅葉散りきって赤い輪に囲まれる★★★
芝青し枯れ葉を上に散り敷いて★★★

●多田 有花
稜線の空透けて来し冬半ば★★★★
稜線のちょうどその所の空は山際という。そう言わないで、稜線の空と言ったところに新しみがある。寒気が強まる冬半ばには、空が透けてくる。「透けて来し」に観察の深さが見える。(高橋正子)

石灯籠包むいっぱいの落葉★★★
時雨雲淡路四国を包みおり★★★

●佃 康水
 市内愛友市場2句
生簀より掴みし河豚の眼澄み★★★ 
四斗樽の重石かたむく冬菜漬け★★★★
冬枯れや川に沿いたる薬草園★★

●迫田 和代
冬の空切るよう伸びる飛行雲(原句)
冬空を切るように飛行雲伸びる★★★★(信之添削)

南天の赤き実を付けすくと立つ★★★
冬薔薇の海風弾く強さ見る★★★

●小口 泰與
湖の波尖りて鴨の羽ばたきぬ★★★★
湖の波が尖るほど寒々として風がある。鴨が時折羽ばたいて羽音をさせる。広げた羽の色も、羽音も命の温みを感じさせながらも寒々としている。(高橋正子)

伸びやかな富士の裾野の枯野かな★★★
浜名湖も豪雨に打たれ枯葉かな★★★

▼12/18

●河野 啓一
冬空に伸びゆくバラ芽の茜色★★★★
「茜色」の色彩感がいい。明日への嬉しい「芽」の「茜色」だ。(高橋信之)

烏鷺囲む小春の窓辺鳥の声★★★
実南天剪りて花瓶の彩りに★★★

●川名ますみ
冬の日の強き斜めが窓に入る★★★★
冬の日が低くから斜めに窓に入ってくる。意外にも冬の日差しは強い。その実感をすっきりとよくまとめている。(高橋正子)

追われずに落葉へ潜る十円玉★★★
稜線の南北へのび冬夕焼★★★

●小西 宏
枯芝に土黒光りノックの音★★★★
枯芝のよく踏まれるところの芝か、傷んで土が見えている。枯芝と土の黒さが対比され底にノックの音が響くのがよい。(高橋正子)

雪積むかと思えば窓に霧の街★★★
色濡らす落葉の霧の石畳★★★

●桑本 栄太郎
子に分けて選ぶクリスマス抽選会★★★
捨てるもの先ずは決め居り年用意★★★
数へ日や役目の多き吾が休暇★★★

●多田 有花
葉牡丹を積みし車の後をゆく★★★★
いい句だ。その説明はいらないであろう。(高橋信之)

ベゴニアの温室出れば冬の雨★★★
北東の山越え時雨里へ来る★★★

●黒谷 光子
寄りし娘に持たす海老豆かぶら漬け★★★
忍び泣く俊寛冬の能舞台★★★
本復の知らせ嬉しき冬日和★★★

●佃 康水
 歳末の広島・愛友市場(信之追加)
ふんだんに井戸水流し河豚捌く★★★★
「河豚捌く」の句は、珍しく、したがって、難しい句なので、読者にもっと親切であって欲しい。。「河豚捌く」ことの丁寧な前書が欲しいのである(高橋信之)

女子校の白山茶花や咲きこぼれ★★★ 
瑞枝さす梅の冬芽や未だ固し★★★ 

●小口 泰與
群馬・上毛三山(信之追加)
朝霜や三山の襞くっきりと★★★★
web<全国三山巡り>によると、全国の三山は、現在97例あるという。作者の在住地が解らなければ、この句の<三山>は、97例のどれだか解らない。作者が前橋在住であれば、この句の<三山>は、おそらく上毛三山であろうと思う。赤城山、榛名山、妙義山である。句の添削は困難。(高橋信之)

冬ばらの開くこと無き風の中★★★
明らかに映すや雪の逆さ富士★★★

▼12/17

●黒谷 光子
寄りし娘に持たす海老豆かぶら漬け★★★
忍び泣く俊寛冬の能舞台★★★
本復の知らせ嬉しき冬日和★★★

●桑本 栄太郎
やわらかに今朝の雨降る冬木かな★★★
残る葉の色極めけり朝しぐれ★★★
梢散り下枝の極む冬もみじ★★★

●多田 有花
冬三日月すでに隠れし帰り道(原句)
冬三日月すでに落ちいし帰りの刻★★★★(正子添削)
キャンドルに灯り点して待降節★★
「よいお年を」言いつつ別れ日短か★★★

●小口 泰與
冬薔薇の咲くほかはなし風の中★★★
くっきりと赤城の襞や空っ風★★★
寒菊や日差す縁側ゆったりと★★★

▼12/16

●小西 宏
枯芝に影踏み走る日曜日★★★★
枯芝に映った自分の影を踏んで走る日曜日。体を動かし走る快い小春日和の日曜日への賛歌。(高橋正子)

枯葦の狭間に光る鴨の波★★★
木枯らしに鴉の飛翔緩急す★★★

●川名ますみ
紅葉散る空に一片雲来たる★★★★
紅葉と青空の一片の雲の取り合わせがすっきりとして快い。「雲来る」がこの句を生かしている。(高橋正子)

裸木ののびやかに指す空青き★★★
動物園の柵に一枚冬紅葉★★★

●桑本 栄太郎
静寂と云えど冴え居る朝かな★★★
足もとを翔びて冬木へ群すずめ★★★
葉を落とし早も冬芽や青空に★★★

●多田 有花
雲晴れて明石海峡年の暮★★★
年の瀬や海の最も輝きぬ★★
冬空へ大きくクレーンの動きけり★★★★

●黒谷 光子
暮れ早し明るきうちに京を発ち★★
街の灯を映す車窓や日短し★★★
帰り来て仰げば細き冬の月★★★

●河野啓一
★冬野広し杖を頼りに地平見る(原句)
★冬野広し杖が頼りに地平見る★★★★(信之添削)
★枯れ葎八十路の旅はまだ一歩★★★
★電飾の点滅青き生誕祭★★

●小口泰與
★小春日の羽根いっぱいの孔雀かな(原句)
★小春日の日を羽根いっぱいに孔雀立つ★★★★(正子添削)

★寒薄夕映え集め光りけり★★★
★年古りて無益(むやく)となりし枯忍★★★

●藤田洋子
★極月の手帳に余白まだありぬ★★★★
極月も今日は半ば。手帳はまだ書き込む余白を残している。手帳の余白は大晦日までの残る日数。それを余白という白で表わした清潔感が好ましい。(高橋正子)

★柚子浮かせ湯船に満ちてくる香り★★★
★店々のポインセチアに街暮るる★★★

コメント (27)
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●添削12月②●

2012-12-16 18:43:04 | Weblog

[12月9日~15日]

▼12/15

●小西 宏
老いじみて厚き布団に明けを待つ★★
落ち葉積む里山深き小鳥影★★★
年忘れの友と別れて車の灯★★

●小川 和子
蓮掘られ肌色ひかる荷の届く★★★
掘りたての蓮根は、泥を水で流せば、蓮根の肌色が光る。いかにも新鮮な荷だ。(高橋正子)

鳴門手掘りという蓮根を天ぷらに★★★(信之添削)
蓮根掘る農園の写真添えられて★★★

●川名 麻澄
裸木と檻の向こうに雲なき空★★★★
檻も裸木も言ってみれば黒い線。無機的ながらもニュアンスの違う黒い線の間の青空が面白く、裸木も一種檻柵のように思える。(高橋正子)

青空に銀杏黄葉とフラミンゴ★★★
動物園の檻に絡まる落葉あり★★★

●多田 有花
木版画の淡き色合い冬の暮★★★★
もの暗い冬の暮に、木版画の淡い色彩が浮きたって、押し詰まった暗さに温かみと明るさを与えて和むものがある。(高橋正子)

冬の雨降る音を聞く夜明け前★★★
まだ少し新車に慣れず日短か★★★

●佃 康水
伐採の竹林冬の日矢とどく★★★
落葉掻く庭へ零るる群れ雀★★★
万両や奥まる庭へ真っ赤かな★★★

●迫田和代
楽しみね何時もの道に冬日射し★★★
来春の艶を残して桜散る★★
杵突きの音も懐かし年の暮れ★★★

●小口泰與
夕映えをたまわる雪の浅間かな★★★
大根引く赤城の裾野吹きさらし★★★
背を押され枯葉と駆けし風下へ★★★

▼12/14

●藤田裕子
湯気立てて私の時間愉しめり★★★★
「愉しめり」がいい。「私の時間」がいい。主婦の日常を詠んだ、作者のささやかだが、充実した生活が伝わってくる。この句を読めば、読者も「愉しめり」の境地になる。(高橋信之)

イルミネーション冬の夜空に夢描き★★★
冬の朝厳しさ迫る遠き山★★

●小西 宏
風寒く晴れいて空に広き道★★★★(正子添削)
下五の「広き道」の解釈が難しいが、良寛が子どもの凧に書いた「天上大風」を思い、天上の「広き道」と解した。地上の「広き道」との解釈も可能だが、凧が揚がり、飛行機が飛ぶ大空の「広き道」である。(高橋信之)

冬晴れに丹沢霞む西明かり★★★ 
冬の夜に割って歯に触るチョコレート★★

●佃 康水
焚火して段取り話す浜漁師★★★★ 
冬の漁師浜は、寒さこの上なく、流木などを集めて焚火をする。漁の段取りの話も焚火を囲めば、いろいろ出てくることだろう。(高橋正子)

陽を湛え紅さす梅の冬芽かな★★★ 
風尖る家路へマフラー深く巻く★★

●小口泰與
あけぼのの雨を弾きし青木の実★★★★
青木の実はやや楕円形で、つやつやと真っ赤に熟れる。あけぼのの冷たい雨を弾けば、艶も赤さも増して一層輝く。(高橋正子)

群雀群れて降りたる冬田かな★★★ 
寒菊の此処のみ日矢の射しにけり★★★

▼12/11

●迫田和代
初雪や原爆ドームの空に舞う★★★★
初雪はどこに降っても感動のあるものだが、とりわけ原爆ドームの空に舞うときは、さまざまなことが脳裏に浮かぶ。焼けたドームに透ける空に詩情がある。(高橋正子)

道端に咲ける野菊をただそれだけを★★★
一本の続く雪道に赤い傘★★★


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●添削12月①●

2012-12-14 13:54:37 | Weblog

[12月1日~8日]

●迫田和代
初雪や原爆ドームの空に舞う★★★★
初雪はどこに降っても感動のあるものだが、とりわけ原爆ドームの空に舞うときは、さまざまなことが脳裏に浮かぶ。焼けたドームに透ける空に詩情がある。(高橋正子)

楽しみね何時もの道に冬日射し★★★
来春の艶を残して桜散る★★
杵突きの音も懐かし年の暮れ★★★
道端に咲ける野菊をただそれだけを★★★
一本の続く雪道に赤い傘★★★

●小口泰與
あけぼのの雨を弾きし青木の実★★★★
青木の実はやや楕円形で、つやつやと真っ赤に熟れる。あけぼのの冷たい雨を弾けば、艶も赤さも増して一層輝く。(高橋正子)

夕映えをたまわる雪の浅間かな★★★
大根引く赤城の裾野吹きさらし★★★
背を押され枯葉と駆けし風下へ★★★
群雀群れて降りたる冬田かな★★★ 
寒菊の此処のみ日矢の射しにけり★★★

●佃 康水
焚火して段取り話す浜漁師★★★★ 
冬の漁師浜は、寒さこの上なく、流木などを集めて焚火をする。漁の段取りの話も焚火を囲めば、いろいろ出てくることだろう。(高橋正子)

伐採の竹林冬の日矢とどく★★★
落葉掻く庭へ零るる群れ雀★★★
万両や奥まる庭へ真っ赤かな★★★
陽を湛え紅さす梅の冬芽かな★★★ 
風尖る家路へマフラー深く巻く★★


★印は、高橋信之先生が付け、コメントは、高橋正子先生が付けます。

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●添削10月●

2012-12-14 13:54:16 | Weblog
■□添削10月
※★印は、高橋信之先生が付け、コメントは、高橋正子先生が付けました。

●藤田裕子
トンネルを抜けて眩しき稲穂田へ★★★★(正子添削)
「稲穂波」は使い古されて、言葉としてフレッシュさに欠けますので、添削しました。トンネルと稲穂田の明暗の切り替わりが鮮やかで、稲穂田の眩しさが強く目に焼きつきます。(高橋正子)

瀬戸の海釣り舟浮かべ秋の晴れ★★★
銀杏黄葉向こう駅舎の赤レンガ★★★

●藤田洋子
考古館
秋の日の勾玉一つ蒼く透く★★★★
勾玉は、単なる装飾ではなく魔よけなどの意味もあったようだ。秋の日なれば、蒼く透明に透く勾玉に弥生時代の人たちの魂が感じられるようだ。(高橋正子)

澄む秋の土師器一片籾のあと★★★★
組み上げし幟はためき秋祭り★★★★
御神灯戸毎に吊るし秋澄める★★★
新米の湯気を吹き上げ夕支度★★★
登り来て野萩の風のひとしきり★★★
一枝の萩に触れつつ丘登る★★★
青空の山道続き萩の花★★★
雲切れて見上げしところ月一つ★★★
一六夜ほのかに雲の奥を染め★★★
一六夜月の出を告げ夫帰る★★★
考古館
秋思ふと出土の甕に指を添え★★

●迫田和代
白菊や静かな日々をふり返る★★★★
白菊のたたずまいに、静かに過ごした日々が思い起こされる。清々しく、気高く香る日々のことを。高橋正子)

潮を見て向こうの島の冬仕度★★★★
刈り入れも終わりし稲田に道一つ★★★★
遠く来て白いりんどう目の前に★★★★
喘ぎつつ登る峠に野菊咲く★★★
さっと吹く風の冷たさ冬支度★★★
山水を含みてながむ薄紅葉★★★
窓の外朝日挿しこみ菊日和★★★
遠山の赤い輝き秋の暮★★★
瀬戸内に散ばる島々冬仕度★★★
国引きの大山全山紅葉かな★★★
冬咲きの苗を見ながらにっこりと★★
陽を浴びてフラフラフラと秋の蝶★★
花入れの野菊末枯れて次の花★★
秋冷の朝日眩しい細い腕★★

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