5月31日(4名)
小口泰與
あけぼのの赤城の涼気身の内へ★★★★
雨後の庭光り弾けるばらの花★★★
庭中にばらの花びら散りばめぬ★★★
多田有花
夏真昼バイクの事故を見て帰る★★★
夏の暁今日は何して遊ぼうか★★★★
明け易くなった。日が永くなり、一日を心愉しく過ごしたい。朝いちばんに「今日は何して遊ぼうか」は人生の余裕でうらやましい限り。(髙橋正子)
五月尽夜明けの空に月残る★★★
廣田洋一
殺虫剤浸みたる蚊帳やタンザニア★★★
サバンナのロッジレースの蚊帳吊られ★★★★
青蚊帳の昭和は遠くなりにけり★★★★
今、令和。平成も蚊帳は吊らなかった。蚊帳があったのは昭和まで。蚊帳にまつわる思い出も多い。蛍を放したこと。蚊帳に守られるように子供たちが並んで寝たこと。畳むときの蚊帳の手触りや匂い。いろいろと。(髙橋正子)
桑本栄太郎
白壁の築地に沿いて七変化★★★★
山影と家並みを映す植田かな★★★
何処までも田道辿りぬ夏の朝★★★
5月30日(4名)
小口泰與
我が影に目高素早く水面へと★★★
咳くと忽と席立つ日雷★★★
涼しさや湖を俯瞰の峠道★★★★
湖を俯瞰できる峠道。夏ならば、湖をすべて眺めて、その目に及ぶ涼しさを感じることができた。(髙橋正子)
廣田洋一
走り梅雨からり晴れたる今日の空★★★
今朝もまた長袖を着て走り梅雨★★★
風鈴の短冊変へて朝の風★★★★
風鈴の舌となる短冊を新しくした。去年のものはひと夏の草臥れで、涼しさをそこなう。朝の風が早速すずやかな音を響かせてくれた。朝の風がさりげなくていい。(高橋正子)
桑本栄太郎
玄関に炎と咲きぬアマリリス★★★
風吹けば葉影揺れ居り木下闇★★★
立ち止まる場所の決まりて枇杷熟るる★★★★
多田有花
幼子と夏の渚で砂遊び★★★
刈られるを待ちおり畔の姫女苑★★★
子を乗せし自転車新樹の下をゆく★★★★
5月29日(4名)
小口泰與
近寄ると忽と水面へ目高かな★★★
渓音に育つ木木の若葉かな★★★★
ルピナスや墨絵の如き妙義山★★★
多田有花
家島が遠く霞める夏の沖★★★
沖へ行くヨット日差しを楽しみつつ★★★★
真夏ならば、どうだろう。沖へ向かうヨットも日差しを「楽しむ」ことにはならないだろう。まだ夏の初め、沖の風に吹かれれば、日差しの柔らかな温みが
心地良い。日差しを大いに楽しむ若さがある。(高橋正子)
夏の波近くに聞ける車輪梅★★★
廣田洋一
青鷺の佇む先に鯉の群★★★
駅中で京の鯖寿司売られをり★★★
玄関前客に良き顔百合の花★★★
桑本栄太郎
風に揺れ葉影躍りぬ木下闇★★★
ひるがえる葉裏白きや青嵐★★★
つる薔薇の咲き上りたる垣根かな★★★
5月28日(3名)
廣田洋一
木々の葉の明るく跳ねる夏の雨★★★★
雨が、青々とした木々の葉にあたって、それぞれの葉を跳ねさせる。いたずらっ子のような夏の雨が、明るくてよい。(高橋正子)
ざっと降り静かに上がる夏の雨★★★
風もなくまっすぐに降る夏の雨★★★
小口泰與
連れ鳴きの秀つ枝下枝の目白かな★★★
松籟や峡の湯宿の閑古鳥★★★
ルピナスや四方八方鳥の声★★★
桑本栄太郎
麦秋の車窓遥かに琵琶湖かな★★★★
麦秋の車窓と琵琶湖の取り合せがいい。麦が熟れる頃の季節の心地よさに加え遠望される琵琶湖の景色が郷愁をさそう。(高橋正子)
との曇る天の切れ目や梅雨晴間★★★
一葉の風に揺れをり梅雨晴間★★★
5月27日(4名)
小口泰與
白樺の池に共鳴ほととぎす(原句)
「共鳴」が気になります。
白樺の池に木魂すほととぎす★★★★(正子添削)
白樺の木々の移る静かな池。ほととぎすが声を落として鳴きすぎると、池の面はほととぎすの声を返してくる。静かな中にも大きな広がりがある。(高橋正子)
鳰の巣や雨の水輪の重なりぬ★★★
青鷺や風の岸辺を動かざる★★★
多田有花
緑陰に途切れ途切れのトランペット★★★★
孔雀持つ鮮やか夏の海の色★★★
梅雨晴れ間白砂清松望みおり★★★
廣田洋一
雨空に真っ赤に咲きし百合の花★★★
百合の花庭の真ん中独り占め★★★★
門前にすっくと立ちし百合一輪★★★
桑本栄太郎
手の届く実を含みたるさくらんぼ★★★
仕立てらる棚の葉陰や花南瓜★★★
梅雨空のひと日暮れゆく大原野★★★
5月26日(4名)
小口泰與
奥利根の峡田棚田の雨蛙★★★
ルピナスや奇岩の山のとの曇り★★★
谷川の冷気や山葵咲きにける★★★★
廣田洋一
鯖一尾味噌で煮込みし夕餉かな★★★
皮一枚剝かれたるごと新玉葱★★★
門前の玉葱二つ百円也★★★★
桑本栄太郎
青柿や木洩れ日深き里の庭★★★
野に在りて青無花果の匂い濃く★★★★
田んぼや畑の隅に昔植えられた無花果がそのままになって実を付けているのを見る。茂る葉に隠れるように青い実がついて、傍を通ると青い匂いが強く鼻に届く。匂いの濃さに野の生命力を思う。(高橋正子)
枇杷熟るるあの日の君のすでに亡く★★★
多田有花
夏の浜少年少女のビーチバレー★★★★
高砂の清松夏の海の青★★★
赤旗をたてカヤックの釣り人は★★★
5月25日(4名)
小口泰與
花ぎぼし書肆に入りたる黄八丈★★★
花桐や露天湯に影二つあり★★★
山百合やぷいと横むく子の機嫌★★★
多田有花
翼たたみ鴎飛び込む夏の海★★★
夏の海青さの中を船が来る★★★
砲台場跡地に咲けり浜昼顔★★★★
砲台はペリーの来航により、外敵に向けて砲台の設置が藩に言い渡され造られた。いまその跡地が公園などに整備されているところも多い。快い海風が吹き抜ける跡地に浜昼顔がきらきらと咲き、往時とは違った趣を見せている。(高橋正子)
廣田洋一
砲弾を並べる如し十薬かな★★★
家の周り囲む十字架どくだみかな★★★
隙あらば入り込みたるどくだみかな★★★
桑本栄太郎
コンクリの割目を繋ぎ苔茂る★★★
ばんざいの手を拡げたる今年竹★★★
曲り根の鋪道破るや梅雨晴間★★★★
5月24日(4名)
小口泰與
花栗の香や山の子のまみつぶら★★★
夕映えの雲や垣根の花卯木★★★
九十九折り大山蓮花一望す★★★
多田有花
五月晴れ河川敷の草野球★★★
のびのびと新樹は風に葉を広げ★★★
麦熟れる道を海まで走りけり★★★★
熟れた麦の色と海の色の取り合わせが、さわやかで健康的な印象を醸している。走る爽快感がいい。(高橋正子)
廣田洋一
葉に隠れひつそり咲きし柿の花★★★
柿の花零れてをりし用水路(原句)
柿の花零れてをりぬ用水路(正子添削①)
実際は、落ちているだけかもしれませんが、中には用水路を流れてゆくものもあれば、景が面白くなります。
柿の花零れて流る用水路★★★★(正子添削②)
蝋細工のごとく固まり柿の花★★★
桑本栄太郎
うぶすなの故郷を想う若葉山★★★
鳴く鳥のけたたましきや木下闇★★★
人の吾をフェミニストとやらいてう忌★★★
5月23日(4名)
小口泰與
郭公や赤城のまほら長き裾★★★
翔つ構え目白の見目の光りけり★★★
峠越え人語は荒し日雷★★★
廣田洋一
畑一面つややかに揺れもろこしの花★★★★
花茄子の俯きたるに添木せし★★★
道端をみっしり埋めしさつきかな★★★
多田有花
梅雨晴れ間二階裏窓開け放つ★★★★
梅雨の晴れ間は、うれしいもの。二階は風の通りがよく、南と北の裏窓を開ければ、涼しい風が通り抜ける。梅雨晴れ間の心地よさ。(高橋正子)
マルチよりのぞく玉葱首白し★★★
用水の上に広がり柿若葉★★★
桑本栄太郎
躓きし夢に目覚むる昼寝かな★★★
公園の野球サッカー梅雨はれま★★★
見上ぐれば数多実の熟れさくらんぼ★★★
5月22日(4名)
小口泰與
黄牡丹の萼あらわなり山の風★★★
驟雨來し山の斜面の夏蕨★★★★
驟雨に襲われる山の斜面。その斜面には夏蕨が伸びて、日本画にもなりそうな景色だ。(高橋正子)
黄牡丹の風に首振り萼あらわ★★★
廣田洋一
採れたての蚕豆貰ふ垣根越し★★★
蚕豆の莢に浮かびし黒き枠★★★
空豆の青を引き立て清酒かな★★★★
多田有花
小満の空を仰げば陽の尊し★★★
雨の中ひらりと夏の燕かな★★★★
昼寝する寝ても覚めても外は雨★★★
桑本栄太郎
堰水の雨の怒涛や山法師★★★
とりどりの色に熟れたる夏の茱萸★★★★
青梅の頬に紅さし雨あがる★★★
5月21日(3名)
小口泰與
石楠花や赤城の大気身の内へ★★★
あけぼの雨を弾きし海芋かな★★★
お裾分け筍飯のほかほかと★★★
廣田洋一
和菓子屋の古き幟や竹落葉★★★
竹林の日を照り返し竹落葉★★★
用水路流れの早き竹落葉★★★★
竹林が近くにあるのだろう。用水路を竹落葉が流れる。その流れ方が速い。昔、笹舟を流したが、水嵩を増した小川に笹舟は速く流れた。そのイメージと重なって、落葉となって流れる様が味わい深い。(髙橋正子)
桑本栄太郎
雨ながら箱根卯木を見て帰る★★★
用水路の濁り怒涛や梅雨はげし★★★
小満の雨の一日の暮れ行けり★★★