2月28日(1句)
★囀が日差しとともに降り注ぐ/多田有花
囀は空のどこかからかこえているのだが、どこからか、とわからない。日差しに混じって降り注ぐ感じだ。そこをうまく捉えた。(高橋正子)
2月27日(2句)
★春暁の山は誠に青きかな/小口泰與
春暁の冷たく寒い暁であろう。しかし山は「誠に青き」と春が生まれているきりっとした気配がある。(高橋正子)
★残雪嶺に向かう棺の後につく/古田敬二
残雪の嶺、そこへと向かう棺の後につく。さまざまな思いが残雪の嶺に集約され、深い悲しみが流れる。(高橋正子)
2月26日(1句)
★揚雲雀赤城の風のまぎれなし/小口泰與
雲雀が揚がり春が来ているのだけれど、風は赤城山から吹く風に紛れもない。冷たい赤城颪なのだ。暖かい春が待たれる。(高橋正子)
2月25日(2句)
★ぐい飲みの形見と申す朧かな/小口泰與
朧夜酒を静かに酌み交わす。このぐい飲みは形見だという。朧が心情をよく表している。(高橋正子)
★春うらら腰のラヂオの鳴る菜園/桑本栄太郎
うららかな春の日。腰にラヂオをぶら下げて菜園の農作業。ラヂオを友に菜園に過ごす楽しさ。(高橋正子)
2月24日(1句)
★不器男忌の鶏砂を浴びて居り/桑本栄太郎
芝不器男の名句「永き日のにはとり柵を越えにけり」を思い、不器男を偲ぶ句。不器忌は2月24日。不器男の生家を幾度も訪ねたことがあるが、四国の旧家の佇まいが今も残って記念館となっている。(高橋正子)
2月23日(1句)
★たんぽぽや七十過ぎに厄はなし/小口泰與
たんぽぽは根を地中深く伸ばし、可憐な花は子どもが描く太陽のような形。明るい花だ。人生70歳までは厄年がいろいろあったが、七十を過ぎれば、古希、喜寿、米寿、傘寿など、どんどんめでたいことばかり。
2,3の具合の悪いところはあっても、自由闊達に生きれるのが七十代ではなかろうか。(高橋正子)
2月22日(1句)
★嫁ぎたる子の雛飾る雨水かな/廣田洋一
折しも「気雪散じて水と為(な)る也(なり)」の雨水。雪が解け、氷が水に、草木が芽吹く。雛を飾る日に相応しい。嫁いだ子の雛を、嫁ぐ前と同じように飾る。つい億劫になるのだが、きちんと飾られて、そのこともすばらしい。(高橋正子)
2月21日(1句)
★揚雲雀雲のほぐれし榛名富士/小口泰與
「雲のほぐれし」の「ほぐれ」で雲の柔らかさが思い浮かぶ。榛名富士の空に浮かぶ雲が柔らかく、雲雀が高く鳴いている。快活な魂の雲雀だ。(高橋正子)