7月20日(5名)
多田有花
夏草を日差しの中で刈る人よ★★★
書き物の傍ら微風の扇風機★★★
陽は我の友なりカンナ群れて咲く★★★
古田敬二
カサブランカ光集めて庭の隅★★★
七月や眩しく光る屋根の反り★★★★
「屋根の反り」が印象的。七月の光の眩しさが如実に伝わる。(高橋正子)
七月や天にらみいる鬼瓦★★★
小口泰與
夏安居の鯉のあぎとう朝かな★★★
郭公や暁の寝をやぶりける★★★★
いかずちの迫りし尾根の如何にせむ★★★
廣田洋一
冷し酒独りの夕べ静まれり★★★★
「夕べ静まれり」がよく、とくに「静まれり」がいい。冷やし酒の美味さが胃染み透るときの心持。(高橋正子)
日の暮を確かめてより冷し酒★★★
丑の日ややはり買ひたる鰻かな★★★
桑本栄太郎
空蝉の縋るもの欲しこの世かな★★★
炎昼の鳴くもの黙や昼下がり(原句)
炎昼の鳴くもの黙(もだ)す昼下がり★★★★(正子添削)
雨雲の降らずままなり夕焼雲★★★
7月19日(5名)
多田有花
頂は涼しき風の集う場所★★★
電線に止まりし二羽の夏燕★★★
夏草の刈られし後の香を歩く★★★★
生い茂る夏草を刈ったあとは、さっぱりと、広々とする。辺りには夏草を刈り取った時の青々亜とした香りが残っている。いい気分だ。(高橋正子)
小口泰與
炎天やダムより現るる分教所★★★★
裏庭の百千のばらや雨後の朝★★★
炎熱や穴の開きたる滑走路★★★
古田敬二
大きめに切る冷奴妻は留守★★★★
妻の留守のときの食事。冷奴は、大きめに切る。さっぱり、簡単に、ざっくりと済ませたい夏の男の食卓。(高橋正子)
まっすぐに地球へ伸びる胡瓜もぐ★★★
陽の熱に温く輝く茄子をもぐ★★★
廣田洋一
灸花生垣這ひて咲きにけり★★★
雨に濡れ早乙女花の光りける★★★★
灸花白さ際立つ花なれど★★★
桑本栄太郎
炎天のミストシャワーや商店街★★★★
炎熱の家居の一日の入日かな★★★
一日終行く空の茜や蝉しぐれ★★★
7月18日(4名)
小口泰與
大利根のあらぬ所に鯰かな★★★
裸子のあらわに出でし大広間★★★
薫風や学舎の壁に残る図画★★★★
古田敬二
草むしる空の四方に雲の峰★★★★
畑の草むしりをして、腰を伸ばして立ち上がると、四方に雲の峰が立っている。こんな景色に私もよく遭遇した。暑い最中の草取り、勢い溢れる雲の峰。自然と共にある生活が健康的だ。(高橋正子)
バリバリと根から引き抜く夏の草★★★
原爆ドームの天辺燃える猛暑かな★★★
廣田洋一
白玉や抹茶をかけて瑞々し★★★
白玉や唇紅き女の子★★★
白玉や緑の風の吹き込めり★★★★
桑本栄太郎
ほとばしる噴水風に青空に★★★★
噴水がほとばしる。水しぶきは青空に吹き上がり、風に乗って流される。噴水の涼しい光景。(高橋正子)
西日さす部屋の温度や34℃★★★
一日終え涼風窓に入り来たり★★★
7月17日(4名)
多田有花
目覚めればはや高かりし蝉の声★★★
かなかなの声続きけり森の道★★★
夕風に夏三日月の光増す★★★★
小口泰與
農道の日に抗える蚯蚓かな★★★
上州の山荒けなし凌霄花★★★★
雲の峰妙義は巨岩巨石にて★★★
廣田洋一
水打ちて庭生き返る夕べかな★★★★
夕方の打水。昼間の暑さを鎮めるように打水をすると、庭が生き返る。子どもころの夏の思い出に、
夕方女の子たちは、庭をきれいに掃き、打水をする手伝いをしていた。庭がさっぱりと涼しくなると一日が終わるという感じがあった。(高橋正子)
打水を少し多めにお稲荷様★★★
水打ちて大入り期する居酒屋かな★★★
桑本栄太郎
<祇園祭山鉾巡行>
祇園会の結界放つ稚児一閃★★★
祇園会や籤改めの畏まる★★★
炎天の巡行臨むコンチキチン★★★
7月16日(4名)
多田有花
洗濯をすませし蝉の声のなか(原句)
「すませし」の「し」は、過去の助動詞「き」の連体形なので、蝉を修飾することになります。「洗濯をすませた蝉」の意味になります。
洗濯をすませり蝉の声のなか★★★★
洗濯をすませた爽快感や幸せ感に、暑さも涼しとなる感じがいい。(高橋正子)
停車してバイクの青年麦茶飲む★★★
南風がからり乾かす洗濯物★★★
廣田洋一
海の日や空晴れ渡り波静か★★★
海の日や泥の海たる町の有り★★★
海の日や色取り取りの帆の祝ひ★★★★
海の日。今年は豪雨災害もあったが、海の日は海の日として楽しみ祝いたい。海にはウィンドサーフィンやヨットの色とりどりの帆が走り、まさに海の日を祝っているよう。「祝ひ」がよかった。(高橋正子)
小口泰與
雨のばら散り際を過たず散る★★★
凌霄花や山の白雲太りける★★★★
石段や梔子の香の風にのり★★★
桑本栄太郎
黒蟻の舗道を急ぐ日射しかな★★★
緑陰に風を待ちたり坂の道★★★
宵山の青空のこる四条かな★★★★
7月15日(4名)
多田有花
雲ひとつ無くて始まる酷暑の朝★★★
涼風の通るところに来て座る★★★
青空を高々とゆく鳶涼し★★★★
連日の猛暑に、涼しいところを見つければ、嬉々となるだろう。鳶が青空を滑空している姿を見れば、涼しそうなのだ。涼しさが見る作者。(高橋正子)
小口泰與
夫婦してカメラ好きなり青嵐★★★
鈍色の雲の厚きや凌霄花★★★★
雷となることを危ぶみ犬と居り★★★
廣田洋一
行水盥でんと据えたり駐車場★★★★
ぴちゃぴちゃと水撥ねながら行水の子★★★
行水やホースの水を浴びてをり★★★
桑本栄太郎
宵山へ向う鼻緒や赤き爪★★★
涼しとも暑きも祇園囃子かな★★★★
祇園祭は八坂神社の祭り。山鉾巡業などでクライマックスを迎える神事や行事が7月中続く。コンチキチンの祭囃は、浴衣姿の見物人がいたり、高揚した祭り気分に「涼し」。だが、流れる汗に、祇園囃は暑さに拍車をかけて「暑き」。(高橋正子)
送電線少し垂れ見え炎暑来る★★★
7月14日(4名)
多田有花
山の道次々と来る揚羽かな★★★★
山の道を歩くと、揚羽蝶が次々と、不思議なくらい飛んで来る。平地では大ぶりな揚羽蝶が次々に来ることはほどんどない。自然により深く入った感じだ。(高橋正子)、
家々の屋根を照らせり大夕焼★★★
夕焼の名残とどめつ夜に入る★★★
小口泰與
あじさいやへら鮒竿の弓なりに★★★★
凌霄花や利根の川瀬に夕涼み★★★
雨脚の強弱あるやばらの花★★★
桑本栄太郎
葉の形の影の揺れ居り片かげり★★★★
(14日の京都は38.5℃)
炎熱の盆地地獄や京の町★★★
長刀鉾の四条通りや大丸前★★★
廣田洋一
水着よりはみ出す傷や水中歩行★★★★
スピードと書かれし水着水泳教室★★★
平泳ぎゆろき隣はバタフライ★★★
7月13日(4名)
多田有花
せせらぎの音を間近に合歓の花★★★★
夏の夕奏でしショパンのノクターン★★★
涼風の中に目覚めし朝かな★★★
廣田洋一
噴水や雫に映る木の緑★★★★
噴水や水道管の破裂せし★★★
噴水や幼子追ひてパパたちも★★★
小口泰與
早駆けの夏鴨消ゆる木立かな★★★
そろそろよ目高の水を換えようか★★★
杏もぐ手元が暮れてしまうまで★★★★
桑本栄太郎
西日射す窓に部活のブラスかな★★★★
西日が差してくる窓辺に近くの学校から部活のブラスバンドの音楽が聞こえてくる。放課後を暮れるまで、練習に励んでいる。元気のある練習につい耳を傾けている。(高橋正子)
夕焼や高層ビルの日に赤く★★★
涼風の窓辺に座すや句の推敲★★★
7月12日(3名)
小口泰與
浮石や竿を放さぬ岩魚釣★★★★
ちゅんちゅんと雀青芝立ち泳ぎ★★★
萱草や浮子を見つめてひもすがら★★★
廣田洋一
雷光や一直線に山の裾★★★★
山裾を一直線に走る雷光。雷光の一瞬の鋭さが目に見える。山は高山であろう。山裾の雷光は、富岳三十六景の「山下白雨」にも描かがれている。(高橋正子)
雷一閃音は如何にと身構える★★★
木々騒ぎ雷雨に備え怠らず★★★
桑本栄太郎
涼風の部屋を吹きゆく昼下がり★★★★
カーテンの風に煽られ昼寝かな★★★
子供等の下校の声や昼寝覚★★★
7月11日(4名)
桑本栄太郎
クーラーを新調したり初稼働★★★
初蝉の声聞き背なの滾りけり★★★
真青なる空の彼方や梅雨夕焼★★★★
廣田洋一
炎天下並木の蔭で信号待ち★★★
炎天下シャベル振るひて土砂除く★★★
炎天を救護ヘリの赤き色★★★★
多田有花
峠越ゆ耳にとどきし初蜩★★★
夏燕甍の波を群れて飛ぶ★★★★
燕は子育ての時期以外は群れて行動するらしい。若い燕が育ってくると、その燕たちを集めて群れて飛ぶ。甍の波を、波に乗るかのように自由闊達に飛ぶ。そういった景色が見られるのも夏だからこそ。やがて秋口には集まって南へ帰ることになる。夏燕の特性を捉えた句。(高橋正子)
大樹あり緑陰つくる河川敷★★★
小口泰與
紫陽花や田川の流れ滔滔と★★★
あけぼのの鶏舎はべらす植田かな★★★★
急流をくの字の首や泳ぐ蛇★★★
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