◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

9月11日~20日

2020-09-11 14:15:21 | Weblog
9月20日(4名)

小口泰與
縁どれる田のそれぞれに曼珠沙華★★★★
鶏頭の灯火の紅を失わず★★★
ビル街の四角の空へ秋の月★★★

廣田洋一
入浴剤や夜長の香り満喫す★★★
ワイン手にファドを聞きたる夜長かな★★★
ミステリー一つ追ひかけ夜長かな★★★★

多田有花
<明日香村サイクリング三句>
亀石に彼岸花咲く明日香かな★★★
稲田抜け聖徳太子生誕地★★★★
橘寺変遷はるか芙蓉咲く★★★

桑本栄太郎
京なれや妻の見に行く藤ばかま★★★★
大原の里で、藤袴が再発見され、それから各寺社にこの花が広がったそうだ。京都であればこそ、主婦である妻も野生の藤ばかまを見に行ける。藤袴には、蝶もよく集まるから、優雅なながめをあとで聞くことになる。(高橋正子)

午後五時の秋の入日や寺の鐘★★★
暮れゆけば峰の連なり秋の冷え★★★

9月19日(4名)

廣田洋一
浮世絵に描かれし富士や秋の暮★★★
そうめん南瓜白き身を見せ売られをり★★★
道端にごろりはみ出す南瓜かな★★★

小口泰與
梨配るおかっぱの子の眼澄み★★★
コスモスの露天風呂へとなだれ咲き★★★★
電線にジャズの音符の小椋鳥★★★

桑本栄太郎
ふるさとを遠くに想う秋彼岸★★★★
連休といえど籠りや秋入日★★★
糸瓜忌のひと日短く暮れにけり★★★

多田有花
<明日香村サイクリング三句>
秋高し天武・持統天皇陵★★★
彼岸花棚田に咲き初め明日香村★★★
水煙の彼方に広がるうろこ雲★★★★
古色を帯び空に聳える水煙とのびやかに広がる鱗雲はいかにも奈良の村らしい。(高橋正子)

9月18日(4名)

小口泰與
黙の中一山の霧流れけり★★★
秋草の籠(こ)を食卓え妻の所作(原句)
「所作」が強調されすぎる感じです。
秋草の籠を食卓へ妻が置く★★★★(正子添削)
籠に活けられた秋草がある食卓。妻の優しい心遣いは、秋草のやさしさそのものと思える。(高橋正子)

年ごとにおちし足腰秋遊★★★

多田有花
鶏頭やかたまって立つ畑の隅★★★★
鶏頭の花の力強さが、「かたまって立つ」のよく表現されている。(高橋正子)
鶏頭の黄色もときにありにけり★★★
刈田かな彼方に今朝の日が昇る★★★

桑本栄太郎
夜半より咆哮つづく野分かな★★★
黒雲の低く垂れ居り野分空★★★
暗闇の土間の深きやつづれさせ★★★

廣田洋一
透き通る緑の葡萄際立てり★★★★
明けの明星またたきて見ゆ秋の空★★★
朝焼けの消えし途端に秋の雨★★★

9月17日(4名)

小口泰與
初紅葉トマの耳より初便り★★★
嬉嬉として落鮎料る厨かな★★★
稲妻や忽と起こりし川の風★★★

廣田洋一
月を背にゆっくり歩む家路かな★★★
公園に一人座りて月を待つ★★★
松の枝細かく光る月の夜★★★★

多田有花
秋曇り国勢調査を回答す★★★

稲刈機始動させたる音聞こゆ(原句)
聞こえた音をどう捉たかが大切ではと思います。(高橋正子)
稲刈機始動させたる音弾む★★★★(正子添削)

大毛蓼垂れ初め朝の散歩道★★★

桑本栄太郎
曇り来る川辺の径や葛の花★★★
鬼城忌の朝顔の実こぼす日差しかな★★★
さみどりのベビー帽子や櫟の実★★★

9月16日(4名)

小口泰與
赤城山長きすそ野は秋霞★★★
鶏頭やカーテンの色変えにける★★★
脚来の緑や寺の初紅葉

廣田洋一
日焼けしてなほ働くや秋簾★★★
夕暮れて巻き上げられし秋簾★★★
客室の軒下覆ふ秋簾★★★

多田有花
今朝角を曲がれば刈田に出にけり★★★
あちこちに出会うコスモスみな黄色★★★
開き初む芙蓉真っ赤な花びらを★★★

桑本栄太郎
闇深き土間の静寂やつづれさせ★★★
うつすらと有明月や京の空★★★
秋蝶の浮かれ舞いたるバルコニー★★★

9月15日(5名)

小口泰與
秋の月乗せて水面に音もなく★★★
秋滝の艶ますしぶき日は斜光★★★★
秋の滝がしぶきをあげて落ちているが、斜めに日があたって、しぶきに艶がましている。飛沫の輝く艶と、秋の滝のあたりの色づきも想像されて、いい景色となっている。(高橋正子)

霧襖神のこえ聞く山の風★★★

廣田洋一
薔薇一輪咲き残りたる秋の園★★★
水切りの良く跳ねたるや秋日和★★★★
秋日和を賜れば、、気持ちがさわやかになる。石を拾って水切りをしてみたくなる。幾段にも跳ねて向こうへ跳ぶ。気持ちも跳ねて遠くまでゆく感じ。(高橋正子)

秋日和友と散歩の東御苑★★★

桑本栄太郎
顔の染み見つけし朝の秋愁ふ★★★
推敲の視線眼下にうす紅葉★★★
夕餉終えひんやり食ぶや夜の梨★★★
「夕餉終え」ではなく、生活のほかの場面、「読書終え」、「ドラマ見て」「妻といて」などをいろいろ詠まれたらどうでしょうか。「夕餉」「ひんやり」「夜の梨」とあれば、「付きすぎ」(似たようなものが並ぶこと)と言えます。句に元気がなくなります。(高橋正子)

多田有花
秋涼の絵具流せる如き雲(原句)
秋涼の絵具・・」と続くので、イメージが湧きにくいです。
秋涼や絵具流せる如き雲★★★★(正子添削)

秋めきて縷紅草なり紅き星★★★
えのころの光が空地に群れし朝★★★★

川名ますみ
桔梗のうしろすがたの少し揺れ★★★
無音にはならぬ夜明けの残暑かな★★★
雨だれに伴われ落つ日日草(原句)
「落つ」の意味があいまいです。散ることでしょうか。
雨だれに伴われ散る日日草★★★★(正子添削)
「散る」ことも「散る力」なのです。

9月14日(4名)

小口泰與
流星や父の遺せし金時計★★★
秋声や渓より仰ぐトマの耳★★★
湯けむりが消えて紅葉の露天風呂★★★★

廣田洋一
川越の風吹き来たり葛の花★★★★
捨畑の草に隠れて葛の花★★★
濃く淡く紫纏ひ葛の花★★★

多田有花
新しきカーテンを吊り秋の昼★★★★
まだ人影無き庭にあり秋の薔薇★★★
苦瓜の割れ鮮やかな橙色★★★

桑本栄太郎
震えつつ朝の目覚めや秋寒し★★★
秋すだれ透いて茜や峰の端に★★★
幼子の手紙添えあるぶどう届く(原句)
幼子の手紙添えあるぶどう着く★★★★(正子添削)
ぶどうの産地に住んでいるお孫さんだろう。両親の気遣いで送られてくるぶどうながら、幼い字で、「おじいちゃん、おばあちゃん、ぶどうを食べてください。」などと一生懸命書いてある。ぶどうもさることながら、幼子の手紙は心あたたまるものだ。ぶどうのようなつぶらな字かも。(高橋正子)


9月13日(3名)

小口泰與
橡の実のどすんどしんと眼間へ★★★
コスモスの揺れいるあたり鍬の音★★★★
畑のコスモス。丈高く育ち花を咲かせて、その向こうは目が届かない。でも、鍬の音が聞こえているあたりのコスモスが揺れている。あそこで、誰か、鍬で耕しているな、と分かる。花と人の生活のふれあいが面白い。(高橋正子)

あけぼのの青磁の空や去ぬ燕★★★

多田有花
午前七時二百二十日の町内放送★★★
野の朝顔小さく淡き青を持ち★★★★
野原の朝顔は、栄養が足りなくて花が小さい。その小ささが野の花のよいところで、つつましく淡い青が心を洗ってくれる。(高橋正子)

朝方の雨を宿して秋の薔薇★★★

桑本栄太郎
ごみ出しの路地を曲がればちちろ鳴く★★★
通り過ぎうしろに聞こゆちちろむし★★★★
おそろしき事になりたるうそ寒し★★★

9月12日(4名)

廣田洋一
雨空にすつくと伸びし白木槿★★★★
人気無き朝の公園八重木槿★★★
止みたれど雲垂れしまま秋の雨★★★

小口泰與
不器用に生ききし我に新走★★★
鴉にも負けじ日を受く黒葡萄★★★★
「負けじ」は、鴉の羽の黒さだけではなく、その逞しさにも負けないということであろう。鴉が黒葡萄を狙っていそうだが、黒葡萄は太陽の日をしっかりと受け充実した粒が力強い。(高橋正子)

北からの便りもあらむ渡り鳥★★★

多田有花
数日に分けて西瓜をいただきぬ★★★
朝日浴び畑にオクラの花と実と★★★★
酔芙蓉萎みし花も美しき★★★

桑本栄太郎
浮雲のやがて茜や秋の暮★★★★
秋蝉の夕となりたる茜空★★★
転園の孫の事聞き秋愁う★★★

9月11日(4名)

小口泰與
熟練の火加減さだか子持ち鮎★★★
「さだか」と思う熟練の火加減の様子を述べていただくと句が生きてくると思います。(高橋正子)
外つ国の人も絵馬掛け秋の虹★★★
見慣れたる山も秋色深まりぬ★★★

廣田洋一
動かざる鯉の二匹や水澄めり★★★
護岸工事終へたるや水澄めり★★★★
護岸工事という気持ちを挟みにくい題材ながら、川が流れ、水が澄んでくると、情趣が湧いてくる。きれいに工事が終わり、水も澄んで流れて、爽やかな光景だ。(高橋正子)

水澄みて光りて見ゆる白き石★★★

多田有花
連れ行くか連れられ行くか秋の蝶★★★★
秋。歩いていると蝶が飛んできた。蝶が後になり、先になって飛んでゆく親しさに、「連れて行く」ような、また、「連れられて行くような」気持ちになる。秋蝶にもさびしさがあるのだろう。(高橋正子)

自己紹介終わればいつか秋の昼★★★
紅芙蓉ゆっくり流れるピアノの音★★★

桑本栄太郎
朝冷えや登校生の列が行く★★★
おしおしと鳴いて急きたる秋の蝉★★★
秋すだれ透いて茜の入日かな★★★
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自由な投句箱/9月1日~10日

2020-09-02 13:55:17 | Weblog
※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆花冠発行所◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan100
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今日の秀句/9月1日~10日

2020-09-02 13:54:17 | Weblog
9月10日(2句)

★こんこんと水湧く尾瀬の新豆腐/小口泰與
尾瀬の9月の水は、長く手を浸しておけないほど冷たい。こんこんを湧き出て尽きない水で作った新豆腐は、すっきりと、やわらかな大豆の香りのする豆腐なのだろう。水あっての豆腐。(高橋正子)

★踏切の音を間近く稲穂垂る/多田有花
田んぼのほとりを線路が通り、踏切がある場所をよく見かける。踏切が鳴ると稲穂に踏切のカンカンカンと鳴る音が響き、空気が澄んでくるような思いになる。(高橋正子)

9月9日(1句)

★夕刊を取りに階下へうす紅葉/桑本栄太郎
マンション住まいなどで、階下の郵便受けに夕刊を取りに出るのは、ちょっと庭に出る感じ。植栽に植えられた木がうすく紅葉していて、紅葉の始まるときかと、驚く。(高橋正子)

9月8日(2句) 
 
★軒下の日を照り返す唐辛子/廣田洋一
軒下に吊るして干してある唐辛子だろう。つるつると滑らかな表皮をして、言えば、プラスチックのようにも見える。残暑の日を照り返しててらてらと輝いてきれいだ。(高橋正子)

★何処までも台風一過の空の青/桑本栄太郎
台風が過ぎ去り、空は塵が吹き払われて、青空が広がる。何処までも広がる。限りない青空に気持ちを渡してみたい。(高橋正子)

9月7日(1句)

★庭木の実小さく成りし野分晴/廣田洋一
野分が去って晴れると、庭が明るく生き生きとしてくる。見ると小さな実がなっている。いよいよ秋本番の訪れを感じる。(高橋正子)

9月6日(2句)

★朝露を吸ひに来たるや小さき蝶/廣田洋一
露が宿るようになると、小さな蝶が露を吸いにやってくる。露と小さな蝶とがいる、やさしく、すずやかな光景。(高橋正子)

★朝顔の開く彼方に朝の虹/多田有花
朝顔と向こうの虹。素敵な光景で、遭遇したいもの。虹の解釈は色々であるが、朝顔の向こうに虹がかかることのきれいな、すがすがしさがいい。(高橋正子)

9月5日(1句)  

★音声の報らす湯張りや涼新た/桑本栄太郎
風呂に湯がちょうどよく張られたことを報せる装置が、「お湯が入りました」
などとでも言うのだろうか。大抵が、女性のすずやかな声で報せてくれる。風呂に張られたお湯のさっぱりした透明感に「涼新た」を思う。(高橋正子)

9月4日(1句)

★白鶺鴒おさなきが側に寄りて鳴く/多田有花
幼いものはなんでも可愛い。人を怖がることもなく、側に寄って来て鳴く。親鳥はどうしたのか。(高橋正子)

9月3日(1句)

★秋の蚊に追われて参る久女の碑/古田敬二
敬二さんが訪ねられたのは、夫杉田宇内の実家の屋敷跡の久女句碑「灌沐の浄法身を拝しけり」であろう。秋の蚊も出てきそうな場所であるが、四季桜が植えられている。蚊に追われながら訪ねた句碑は意味をまた深めたのではなかろうか。久女は、私も第一に尊敬する俳人である。(高橋正子)

9月2日(2句)

★甘き香の妻の作りし生姜漬け/桑本栄太郎
家庭で漬けた生姜漬けは、好みの甘酢の加減で、残暑厳しいころには、さっぱりと、ぴりっとして、食欲が刺激される。甘き香はまた妻の香。(高橋正子)

★朝顔の紺一輪の涼やかに/多田有花
紺色の朝顔が一輪あれば、あたりはすずやかな風が流れる。さっぱりとした表現が、内容とよくあっている。私は、毎朝、朝顔を一輪摘んできてガラスにさして一朝だけの花を楽しんでいる。(高橋正子)

9月1日(2句)

★溝蕎麦や丸太橋より山道へ/小口泰與
山道へ入っていくところの景色。川に丸太橋がかかり、溝蕎麦がさいている。いかにも、此処よりは山へという雰囲気だ。(高橋正子)

★朝露をたたえ稲の稔りゆく/多田有花
稲がふさふさと稔る様子は、それだけで十分目に快い。それに朝露が宿っていれば、冷涼な空気のさわやかさまでが伝わってくる。(高橋正子)
踏切の音を間近く稲穂垂る/多田有花
★★★★
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9月1日~10日

2020-09-02 13:49:28 | Weblog
9月10日(4名)

小口泰與
律の風二の腕太き宮大工★★★
こんこんと湧き出づ尾瀬の新豆腐(原句)
「湧き出づ」だけでは、何が「湧き出づ」なのか、わかりません。
こんこんと水湧く尾瀬の新豆腐★★★★(正子添削)
尾瀬の9月の水は、長く手を浸しておけないほど冷たい。こんこんを湧き出て尽きない水で作った新豆腐は、すっきりと、やわらかな大豆の香りのする豆腐なのだろう。水あっての豆腐。(高橋正子)

見慣れたる赤城のすそ野小鳥來る★★★

多田有花
仲秋の雲ひとつなき空仰ぐ★★★
角錐に切って西瓜を食べにけり★★★
踏切の音を間近く稲穂垂る★★★★
田んぼのほとりを線路が通り、踏切がある場所をよく見かける。踏切が鳴ると稲穂に踏切のカンカンカンと鳴る音が響き、空気が澄んでくるような思いになる。(高橋正子)

廣田洋一
茹で具合匙ですくひて新小豆★★★
新小豆とろりと煮込みぜんざいかな★★★
林檎剥く蜜の香り湧き出しぬ(原句)
林檎剥き蜜の香りの湧きだしぬ★★★★(正子添削)

桑本栄太郎
登校の児童の列や秋黴雨★★★
下冷えや色とりどり傘の列★★★★
こつ然と鳴き声聞かぬ秋の蝉★★★

9月9日(4名)

小口泰與
竹春や飛行機雲の一直線★★★
ままごとのキッチンセット赤のまま★★★
ひそと揺れ雨の岸辺の秋桜★★★★

廣田洋一
梨の実や袋をかぶりて光りをり★★★
梨を剥く食後に一つ召し上がれ★★★
川風の畑越へ来る梨畑★★★★

多田有花
エアコンをつけずに走る秋めく日★★★
秋色のシャドウを選ぶ女たち★★★
さんざんに刺す秋の蚊に驚きぬ★★★

桑本栄太郎
下冷えや胸掻き寄する朝まだき★★★
毬栗のすべて落下や嵐止む★★★
夕刊を取りに階下へうす紅葉★★★★
マンション住まいなどで、階下の郵便受けに夕刊を取りに出るのは、ちょっと庭に出る感じ。植栽に植えられた木がうすく紅葉していて、紅葉の始まるときかと、驚く。(高橋正子)

9月8日(4名)

小口泰與
切岸へなだれ咲きたる秋桜★★★★
竹筒に真菰の花や杣の宿★★★
落人の里に咲きたる濃竜胆★★★

廣田洋一
にょきにょきと赤き角出し唐辛子★★★
軒下の日を照り返す唐辛子★★★★
軒下に干してある唐辛子だろう。つるつると滑らかな表皮をして、言えば、プラスチックのようにも見える。残暑の日を照り返しててらてらと輝いてきれいだ。(高橋正子)

いきり立ち自己主張する唐辛子★★★

桑本栄太郎
何処までも台風一過の空の青★★★★
台風が過ぎ去り、空は塵が吹き払われて、青空が広がる。何処までも広がる。限りない青空に気持ちを渡してみたい。(高橋正子)

夕方の今日初めてや秋の蝉★★★
午後五時の寺の鐘聞く野分凪ぐ★★★

多田有花
風いまだ残れど午後の野分晴れ★★★
朝ごとに群れ咲く露草見て歩く★★★★
味噌汁に浮かぶオクラの五角形★★★

9月7日(4名)

小口泰與
追想の北の甚句や古酒を汲む★★★
コスモスの怒涛の如くなだれ咲く★★★
等伯の紫苑や池の智積院★★★

廣田洋一
勤め終へログインしたる夜学生★★★
灯の点る教室一つ夜学かな★★★
庭木の実小さく成りし野分晴★★★★
野分が去って晴れると、庭が明るく生き生きとしてくる。見ると小さな実がなっている。いよいよ秋本番の訪れを感じる。(高橋正子)

多田有花
仲秋を告げて嵐の来たりけり★★★
嵐去る白露の朝の雲速し★★★★
晴れていく雲の彼方に朝の月★★★

桑本栄太郎
余波といふ放歌高吟秋の風★★★
葉の裏の鳩吹く風に白きかな★★★
ゑのころの風に抗ふすべ持たず★★★★

9月6日(4名)

小口泰與
山あいの鉄橋の色秋薊★★★★
沼に入る水が水押す蘆の花★★★
どぶろくや納戸の奥の隠し棚★★★

廣田洋一
朝露のぽつぽつ光る庭の草★★★
朝露を吸ひに来たるや小さき蝶★★★★
露が宿るようになると、小さな蝶が露を吸いにやってくる。露と小さな蝶とがいる、やさしく、すずやかな光景。(高橋正子)

九州の野分こぼせる雨の関東★★★

多田有花
朝顔の開く彼方に朝の虹★★★★
朝顔と向こうの虹。素敵な光景で、遭遇したいもの。虹の解釈は色々であるが、朝顔の向こうに虹がかかることのきれいな、すがすがしさがいい。(高橋正子)
秋水の流るる朝の空映し
「秋水流る朝の空映し」がもとの句意です。「流るる」(流るの連体形)が「朝」を修飾しているので、問題です。

稔る田の間に大鷺の一羽★★★

桑本栄太郎
秋あはれ今朝は鳴かざる蝉の声★★★
木々の枝の風の騒めき野分空★★★
空被う雲の峰の端野分来る★★★

9月5日(4名)

小口泰與
鉄橋はペンキ塗りたて秋の虹★★★
白芙蓉我が一系に法学者★★★
松虫草利根上流の淡き水
「淡き水」は、水の何が淡いのでしょうか。

廣田洋一
つくづくと見上げるばかり天高し★★★
テニスコートラリー続きて天高し★★★★
有明の光り柔らか和みけり★★★

多田有花
種見せてくれし風船葛割き★★★
白萩の咲く道朝の散歩道★★★
河原への道に菊芋咲き乱れ★★★

桑本栄太郎
秋あはれ群青残る入日かな★★★
宵空の青空ありぬ法師蝉★★★

音声の報らす湯張りや涼新た★★★★
風呂に湯がちょうどよく張られたことを報せる装置が、「お湯が入りました」
などとでも言うのだろうか。大抵が、女性のすずやかな声で報せてくれる。風呂に張られたお湯のさっぱりした透明感に「涼新た」を思う。(高橋正子)

9月4日(4名)

小口泰與
天地ゆれおる一山の蝉時雨★★★
我が里は富士見村とて花芙蓉★★★★
止めどなく盃酌み交わす夜長かな★★★

廣田洋一
酒酌みつ虫の声聞く一人かな
「つ」は、句意から「つつ」(・・ながら)とするところです。5.7.5音にあわせるために、「つつ」を「つ」としてしまう方が、多く見られます。「つ」と「つつ」は、違うので、ご注意ください。

誘蛾灯青く灯りて虫の声★★★★
床下の闇を満たせる虫の声★★★

多田有花
唐辛子花咲く如く実りおり★★★★
白鶺鴒おさなきが側に寄りて鳴く★★★★
幼いものはなんでも可愛い。人を怖がることもなく、側に寄って来て鳴く。親鳥はどうしたのか。(高橋正子)

早朝の市営住宅常山木咲く★★★

桑本栄太郎
登高や微醺匂わせハルカスへ★★★
鳩吹くや木蔭の径の雨催い★★★★
背の高き乙女躍りぬ秋桜★★★

9月3日(5名)

小口泰與
草覆う草軽鉄道秋の風★★★
見下ろすと利根蛇行せり蕎麦の花★★★
雨後の磴萩咲きこぼる朝まだき★★★★

廣田洋一
無月かなそれでも仰ぐ曇り空★★★
無月なり街灯照らす帰り道★★★
新月を仰ぐ狭庭の暗きかな★★★★

多田有花
犬連れて散歩の人にジンジャー咲く★★★
秋燕の飛び立つ後へ通り雨★★★★
萩咲くや外科病院の駐車場★★★

桑本栄太郎
うつうつと朝の夢路や秋涼し★★★
子蟷螂の孤独孤児とや鎌を上ぐ★★★★
葛の花咲く道あゆむ折口忌★★★

古田敬二
秋の蚊に追われて参る久女の碑★★★★
敬二さんが訪ねられたのは、夫杉田宇内の実家の屋敷跡の久女句碑「灌沐の浄法身を拝しけり」であろう。秋の蚊も出てきそうな場所であるが、四季桜が植えられている。蚊に追われながら訪ねた句碑は意味をまた深めたのではなかろうか。久女は、私も第一に尊敬する俳人である。(高橋正子)

百日紅散り始めたる久女の碑★★★
十薬や主なき家の車庫の前★★★

9月2日(4名)

小口泰與
山風やリフトの下に藤袴★★★★
あけぼのの秀つ枝に咲きし木槿かな★★★
正面に赤城全容蕎麦の花★★★

廣田洋一
稜線のくっきり伸びる秋の空★★★
多摩川の水面きらきら秋の空★★★★
俄雨開きしままの秋日傘★★★

桑本栄太郎
風流れ微かに香る藤袴★★★
甘き香の妻の作りし生姜漬け★★★★
家庭で漬けた生姜漬けは、好みの甘酢の加減で、残暑厳しいころには、さっぱりと、ぴりっとして、食欲が刺激される。甘き香はまた妻の香。(高橋正子)

青空の残る茜や秋入日★★★

多田有花
秋の雷うたた寝の目を覚ましけり★★★
朝顔の紺一輪の涼やかに★★★★
紺色の朝顔が一輪あれば、あたりはすずやかな風が流れる。さっぱりとした表現が、内容とよくあっている。私は、毎朝、朝顔を一輪摘んできてガラスにさして一朝だけの花を楽しんでいる。(高橋正子)


法師蝉鳴くや夜明けを待ちきれず★★★

9月1日(4名)

小口泰與
溝蕎麦や丸太橋より山道へ★★★★
山道へ入っていくところの景色。川に丸太橋がかかり、溝蕎麦がさいている。いかにも、此処よりは山へという雰囲気だ。(高橋正子)

芙蓉咲き朝の冷気を身の内に★★★
鳳仙花掛け声高き草野球★★★

多田有花
ここよりは糸の細道芙蓉咲く★★★
朝風の少し変わりし九月来る★★★

朝露をたたえつ稲の稔りゆく(原句)
朝露をたたえ稲の稔りゆく★★★★(正子添削)
「たたえつ」の部分の意味は、「たたえながら」(たたえつつ)ではないかと思います。そうならば、「つ」だけ使うのは誤りです。古語辞典で「つ」をご確認ください。
稲がふさふさと稔る様子は、それだけで十分目に快い。それに朝露が宿っていれば、冷涼な空気のさわやかさまでが伝わってくる。(高橋正子)

廣田洋一
午後五時の鐘が鳴るなり芙蓉閉づ★★★
子規庵の閉ざされしまま糸瓜伸ぶ★★★★
床の間に一つ転がる糸瓜かな★★★

桑本栄太郎
ふるさとの篤き思いや梨の着く★★★★
嫋やかにコスモス咲きぬ夢二の忌★★★
目覚むれば惜しみ鳴き居り法師蝉★★★
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