◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

12月11日~20日

2021-12-11 14:21:23 | Weblog
12月20日(4名)

小口泰與
寒鴉松百幹に潜む闇★★★
冬梨の瑕瑾なき汁溢れけり(原句)
瑕瑾なき冬梨の汁溢れけり★★★★(正子添削)
山風や利根の瀞へと枯葉舞う★★★

廣田洋一
冬凪や渚に貝を拾ひけり★★★★
冬凪の渚には、風は冷たいものの明るい日差しがとどき、貝を拾いたくなる。この所作に素敵な静けさがあっていい。上品で穏やかな静けさに心休まる句。(高橋正子)

冬凪の沖に浮かべる島青し★★★
冬ざれの畑啄む小鳥どち★★★

多田有花
冬帝のどっと渡りし日本海★★★★
カレンダー紙一枚の十二月★★★
重ね着て心がけたりエコロジー★★★

桑本栄太郎
小春日や買物道の蒼き空★★★
冬旅の妻の土産は吊し柿★★★★
霜の夜の頻尿なるや三度目に★★★

12月19日(4名)

廣田 洋一
冬凪や渚に遊ぶ鳥の群★★★
新しき仕事引き受け日記買ふ★★★★
冬ざれや倒れし竹のそのままに★★★

小口泰與
葉牡丹の雨を受けたる盃の如★★★
わたらせに沿いて単線冬ざるる★★★★
青首の伸びて縮んで眠りけり★★★

桑本栄太郎
洗面の水の悴む朝かな(原句)
洗面の水に悴む朝かな★★★(正子添削)
燦々と背ナに冬日や朝餉摂る★★★★
朝餉の時間、ちょうど背ナに冬日が当たって、暖かい。日の当たる背ナは、暮らしてきた歳月がそのまま表れて見える。(高橋正子)

階段の踊り場に舞う落葉かな★★★

多田有花
風の音激しく月光の冴える★★★
風荒れて眠る山への子守歌★★★
北の山雪に輝く山となる★★★★

12月18日(4名)

廣田 洋一
診療所の庭を明るく花アロエ★★★★
赤き花出窓に飾りクリスマス★★★
マンションの窓の電飾聖樹かな★★★

小口泰與
健啖の老の眼差しずわい蟹★★★
葉牡丹や帰省児居間に大の字に★★★
空風や砂利を噛みたる天邪鬼★★★

多田有花
暮れてゆく窓辺に北風のつのりけり★★★
寒波くる入日いっそう輝けり(原句)
「くる」「輝けり」の二か所に切れがあります。切れは一か所に。(髙橋正子)
寒波来て入日いっそう輝けり★★★★(正子添削)
寒波の厳しさが入日を磨くように、いっそう輝かせる。厳しい寒さが空気を鋭利にさせたようだ。(高橋正子) 

北風の音の激しき夜の窓★★★

桑本栄太郎
初雪や想い出遠き宙の果て★★★
初雪の止んで日差しの燦々と★★★★
切干の室に取り込み甘き香よ(原句)
切干を室に取り込み甘き香よ★★★★(正子添削)

12月17日(4名)

小口泰與
膝折りて枯菊根より切にける★★★
冬萌や牧舎の牛の鋭声せる★★★
漢薬を煎じる土瓶枯忍★★★

廣田 洋一
冬凪のヨットハーバー静まれり★★★
冬凪や鳥は渚に遊びをり★★★
電飾の華やぐ聖夜丸の内★★★

多田有花
旧宅の鍵送り出す師走かな★★★
ニット帽耳まで被り買物へ★★★
冬林檎にかけし豆乳ヨーグルト★★★

桑本栄太郎
大木の伐り株白し寒波来る★★★★
大木ならば、切株も大きく白さも鮮やかだろう。切株の白の鮮烈さに、生々しささえ見える。寒波が来て、いっそう切株の白さば目立つ。(髙橋正子)

しがみつく楓もみじや冬の風★★★
山すその里に灯点る冬暮色★★★

12月16日(3名)

廣田洋一
湯豆腐の煮くずれ掬ふ手の白し★★★
贈り物箪笥に隠し聖夜待つ★★★
地下広場讃美歌響くクリスマス★★★

小口泰與
枯葦や入日受けたる群雀★★★
一筋の没日の剣や冬の沼★★★
猪肉や下仁田葱の香の甘し★★★

桑本栄太郎
小春日や遠回りなる買物へ★★★
一枚を脱いで歩きぬ冬ぬくし★★★
満天星の冬の紅葉の緋色かな★★★

12月15日(3名)

小口泰與
寒風や農婦の手足ねこ車★★★
山峡に雲一刷や紅蜜柑★★★
一献のあとの味噌汁滑子かな★★★

廣田洋一
湯豆腐や気の向くままに一人鍋★★★
湯豆腐や一升瓶を横に置き★★★
マンションの窓を飾れる聖樹かな★★★

桑本栄太郎
星冴ゆる真夜の報せや叔父逝去★★★★
叔父様のご逝去お悔み申し上げます。
星が冴える夜は、冷え込みがまし、家うちに居ながら、感覚がさえる。そんなときの身内の訃報はある意味納得し、ある意味受入がたく、思い出がふつと湧く。人の死と切り離せない星の冴える夜である(髙橋正子)

枯尾花風に抗うすべ知らず★★★
又一枚木の葉しぐれのはらり落つ★★★

12月14日(4名)

小口泰與
隠り沼の彼方此方に鴨の陣★★★
産土の山風堅き空っ風★★★
在野に遺賢居り枇杷の花咲けり★★★

廣田洋一
湯豆腐や舌の先にて右左★★★
湯豆腐のをどりに合わせ酒を酌む★★★
駅出れば星の迎へる十二月★★★★
日もいよいよ短くなり、寒さがつのり、空気が澄んでくる十二月。駅を出るとたくさんの星が空にきらめき、出向かえてくれるようである。(髙橋正子)

多田有花
脱水機手で回しおり年の内★★★
大霜の中自転車のセーラー服★★★★
霜の朝日差しあふれる昼となり★★★

桑本栄太郎
水禽の次々潜る静寂かな★★★★
からからと枯れし落葉や踏みしだく★★★
讃美歌の窓にあふるる待降節★★★★

12月13日(4名)

小口泰與
眼間の朱き冬芽のひたすらに★★★★
庭の木々を見上げると、眼間には朱い冬芽がたくさん育っている。その姿は「ひたすら」とさえ思える。そう思うのは優しさ。(髙橋正子)

雪山やあだに年取る吾髪膚★★★
新しき日に錆にける冬薔薇★★★

廣田洋一
喪中挨拶日毎に増える十二月★★★
電飾のトナカイ駆ける十二月★★★
湯豆腐やゆっくり煮込む一人鍋★★★

多田有花
渋皮煮たっぷり載せし冬のケーキ★★★
背に冬陽浴びつつ洗濯機を回す★★★
土踏まずじんわり温し足温器★★★

桑本栄太郎
木枯や園児ら駆ける鬼ごつこ★★★
竹林の節の白さや寒波来る★★★★
木々の枝の闇に悲鳴や冬の鵯★★★

12月12日(3名)

小口泰與
潮風の香る金時蜜柑かな★★★
凍草や湖の紫紺を極めける(原句)
凍草や湖は紫紺を極めける★★★★(正子添削)
湖のほとりは凍草が覆っている。湖も紫紺の色を極め、静寂がやがてこころのなかに、華やかさに変わっていく、美的なセンスのある句だ。(髙橋正子)

青首や浅間の雲の遊びける★★★

廣田洋一
ブロッコリー採られぬままに花咲きぬ★★★
口開けて冬の日呑めり鯉の群★★★
裸木の実をついばむや鳥せわし★★★

桑本栄太郎
一つのみぽつと日に咲く返り花★★★
チリチリと赤き地肌や山眠る★★★
山茱萸の赤き実乾ぶる冬日かな★★★
 
12月11日(4名)

小口泰與
弓道の師範の声や冬の月★★★
赤く染む冬夕焼の忽と消え★★★
田雲雀や田は寂寞の草の原★★★★

廣田洋一
黄ばみたる障子のままや男世帯★★★

破れ障子小鳥の動き忙しなし(原句)
障子の破れた穴から小鳥の動きが見えるということでしょうか。添削は、障子に小鳥の影が映って、その影が忙しく動いている情景にしました。
破れ障子小鳥の影の忙しなし★★★★(正子添削)

電飾に見とれて歩く十二月★★★

多田有花
仲冬の入日は塔とあいまみえ★★★
本年の講義を終えし年の内★★★
裸木の立つ雲低き午後の空★★★★

桑本栄太郎
バスに乗り冬の日差しの眩しさよ★★★

落葉松の錆びのようなる落葉かな(原句)
情景が足りないように思います。(髙橋正子)
落葉松の錆びのようなる積む落葉★★★★(正子添削)
落葉松は金色の黄葉から錆び色の落葉へと変わっていく。錆びを落としていくように地面に深々と降り積もる。芽吹くときも、黄葉のときも、名のとおり落葉となるときも、人の一生のごとく趣ある変化を見せて来る。(髙橋正子)

くもり来る午後の日差しや冬ざるる★★★
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自由な投句箱/12月1日~10日

2021-12-02 10:09:57 | Weblog
※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之
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今日の秀句/12月1日~10日

2021-12-02 10:09:08 | Weblog
12月10日(1句)

★霜晴や深閑として大庇/小口泰與
見上げる大庇の向こうに霜晴れの空。大屋根に霜が強く降りているであろう。森閑としたわが家を囲む霜の朝が堂々と詠まれている。(髙橋正子)

12月9日(1句)

★冬の水並木の枝をくっきりと/廣田洋一
静かな冬の水が、ただ並木の枝をくっきりと映している。水と枝だけの簡明さがすっきりとして、冬の清浄イメージを喚起させてくれる。(髙橋正子)

12月8日(1句)

★仲冬の野葡萄に青まだ残り/多田有花
仲冬は大雪から小寒の前日までをいうが、寒さもいよいよ厳しくなり、霜も降りるようになる。そう言った寒さの中に野葡萄はきれいな青色を残している。枯れの中で生き生きとした青さが印象に残る。(髙橋正子)

12月7日(1句)

★新障子真白き中にラジオ聞く/廣田洋一
貼り替えられた障子は、真っ白で、ぴんと張っている。聞いているラジオの声もきれいに響くようだ。ささやかながらも、生活の喜びが感じられて、昭和のような、なつかしさを覚える。(高橋正子)

12月6日(1句)

★八つ手咲く厨の窓に食器の音/桑本栄太郎
八つ手は日陰に強く、日陰となる厨の窓の近くにあるのを目にする。八手の花の白さが食器の清潔さを想像させてくれる。(高橋正子)

12月5日(1句)

★枯枝の枝垂れ桜のしだれけり/桑本栄太郎
枯枝となった枝垂れ桜は、花を付けていたときそのままの枝垂れ具合。華やかな花の枝と枯れ枝が対比されて自明の理の納得の句。(高橋正子)

12月4日(1句)

★後の日は空白故人の古日記/多田有花
日記をつけていた故人。亡くなってからは空白のページが続く。古日記の空白のページが意味するものは、あきらか。それだけに喪失感が募る。(高橋正子)

12月3日(1句)

★寒犬や耳門に鈴の鳴りにける/小口泰與
耳門は、この句ではくぐり戸。くぐり戸をくぐろうとすると、愛犬が主人の気配を感じて鈴を鳴らして近寄っている。寒々とした日、鈴を鳴らしてよってくる犬にほのぼのとした温かさを感じる。(高橋正子)

12月2日(1句)

★短日の通夜に集まる親族ら/多田有花
夕やみがたちまちにやってくる「短日」は、気持ちもあわただしい。死亡の知らせに通夜に集まった親族たちは、短日のあわただしさの中にも、密やかに、温かく、故人の冥福を祈ったことであろうことが知れる句。「短日」が効いている。(高橋正子)

12月1日(1句)

★綿虫の青き翅浮く川辺かな/桑本栄太郎
綿虫は小さく宙に浮かんで、点のような綿虫は灰色にも見えるが、明るい光があれば、翅が青がかって見える。その妖しいような青を川辺の光が見せてくれた。それを捉えた感覚がいい。(高橋正子)
コメント (10)
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12月1日~10日

2021-12-02 10:06:57 | Weblog
12月10日(4名)

小口泰與
雪蒼き谷川岳の狭間かな★★★
霜晴や深閑として大庇★★★★
見上げる大庇の向こうに霜晴れの空。大屋根に霜が強く降りているであろう。森閑としたわが家を囲む霜の朝が堂々と詠まれている。(髙橋正子)

百態の水の流れや紙漉女★★★

廣田洋一
ガード下おでん屋台の賑わへり★★★
冬の水しんと映れる金閣寺★★★
冬の水河原の石を磨きをり★★★

多田有花
韋駄天と呼ばれし人よ師走に逝く★★★
昼休み甘き蜜柑を二つ剥く★★★
あぶらげと焚かれ大根のやわらかし★★★

桑本栄太郎
くいくいと桜冬芽や蒼空に★★★
川べりのあっけんからと枯尾花★★★
からす飛びあまた塒へ冬夕焼け★★★

12月9日(4名)

小口泰與
青星や赤城のすそ野明らかに★★★
蔵開けて潜みし凍てにぶち当たり★★★
白鳥やあくまで蒼き湖の色★★★★

廣田洋一
定時にて退社の友とおでん酒★★★
冬の水浮かべるものの何もなし★★★
冬の水並木の枝をくっきりと★★★★
静かな冬の水が、ただ並木の枝をくっきりと映している。水と枝だけの簡明さがすっきりとして、冬の清浄イメージを喚起させてくれる。(髙橋正子)

桑本栄太郎
日を透きし空の蒼さや枯木立★★★★
綿虫の翅の大きく透き通る★★★
手袋の二つで一つ何処へやら★★★

多田有花
開戦日友の訃報の届きけり★★★
小春日や老人ホームの母を訪う★★★★
母のため電気毛布を買いにけり★★★

12月8日(4名)

小口泰與
奥利根の峡田棚田の霜柱★★★
碧天や雪の浅間へ禽の群★★★
おやみなき風や麦芽の谷戸の空★★★

廣田洋一
大根の味しみわたるおでんかな★★★
冬の水鯉の動きも緩やかに★★★
川底の石光りけり冬の水★★★★

桑本栄太郎
照るくもる冬の日差しの定まらず★★★
固まつて孤独のままに枯蟷螂★★★
綿虫のたじろき舞いぬ田道かな★★★

多田有花
葉は枯れて花のみ残り冬の菊★★★

仲冬に野葡萄の青残りおり(原句)
もとの句は「仲冬に」の「に」で句が、散文的、説明的になっています。(髙橋正子)
仲冬の野葡萄に青まだ残り★★★★(正子添削)
仲冬は大雪から小寒の前日までをいうが、寒さもいよいよ厳しくなり、霜も降りるようになる。そう言った寒さの中に野葡萄はきれいな青色を残している。枯れの中で生き生きとした青さが印象に残る。(髙橋正子)

山茶花の赤白ピンクと咲きそろう★★★

12月7日(4名)

小口泰與
突然に羚羊に遭い棒立ちに★★★
羚羊、ニホンカモシカは渋川市あたりでも見られるようですね。びっくりしました。(高橋正子)

綿虫や赤城陰れば利根晴るる★★★★
天つ日と風の群馬や麦畑★★★

廣田洋一
大根が主役を努めおでん鍋★★★
新障子真白き中にラジオ聞く★★★★
貼り替えられた障子は、真っ白で、ぴんと張っている。聞いているラジオの声もきれいに響くようだ。ささやかながらも、生活の喜びが感じられて、昭和のような、なつかしさを覚える。(高橋正子)

花模様透かして浮かぶ白障子★★★

桑本栄太郎
大雪や雨の一日の暮れゆける★★★
水涸るる近江の湖や浮御堂★★★
夢に見るふるさと遠き枯野かな★★★

多田有花
紅白の実南天に迎えらる★★★
銀杏落葉踏み自転車の疾走す★★★
冬半ば素焼きの鉢にパンジー咲く★★★

12月6日(4名)

小口泰與
帰り花朝明(あさけ)の空へ伝書鳩★★★
渓音にのめり込んでる冬黄葉★★★
谷川へ影踊らすや柿落葉★★★

廣田洋一
隠し味は土地の銘酒やおでん炊く★★★
子供らにおでん残して一人旅★★★
冬紅葉今を盛りの六義園★★★

桑本栄太郎
八つ手咲く厨の窓に食器の音★★★★
八つ手は日陰に強く、日陰となる厨の窓の近くにあるのを目にする。八手の花の白さが食器の清潔さを想像させてくれる。(高橋正子)

白き実のナンキン櫨や冬ざるる★★★
雲間より水色空や寒波来る★★★

多田有花
裸木の囲む広場でキャッチボール★★★
遠目にも赤き実南天と思う★★★
青空に憧れている木守柿★★★

12月5日(4名)

廣田洋一
綿虫や雪富士見つつ飛びてをり★★★
鍋持ちてコンビニへ行くおでんかな★★★
おでん煮て夕餉の支度終へにけり★★★

小口泰與
あかつきの日日渡り行く舟と鴨★★★
茜さす雪の浅間や下校の児★★★
雪山を下りし漢のあぎとかな★★★

多田有花
漢方薬煎じる香り冬厨★★★★
冬野菜たっぷり入れしスープかな★★★
道の辺の花壇の手入れ冬の朝★★★

桑本栄太郎
峰奥の日差し明るき時雨かな★★★
枯枝の枝垂れ桜のしだれけり★★★★
枯枝となった枝垂れ桜は、花を付けていたときそのままの枝垂れ具合。華やかな花の枝と枯れ枝が対比されて自明の理の納得の句。(高橋正子)
一斉に翔びしすずめや冬田晴れ★★★

12月4日(4名)

小口泰與
鈴鳴らす魚の魚信や冬の沼★★★
へら浮子の塗りは漆や囲炉裏端★★★
牧場の白馬足掻くや空っ風★★★

多田有花
後の日は空白故人の古日記★★★★
日記をつけていた故人。亡くなってからは空白のページが続く。古日記の空白のページが意味するものは、あきらか。それだけに喪失感が募る。(高橋正子)

年々の月日の加速師走かな★★★
クリスマスソング聞きつつ洗濯を★★★

廣田洋一
久闊を叙したるともとおでん酒★★★
コンビニでおでんを選ぶ昼餉かな★★★
散り来たる木の葉とつかる露天風呂★★★★

桑本栄太郎
冬蝶の日差しためらい彷徨いぬ★★★★
ひと風に木の葉しぐれやバス通り★★★
落葉松の冬の紅葉や蒼き空★★★

12月3日(4名)

小口泰與
来し方の煙の町や寒の晴★★★
寒犬や耳門の鈴の鳴りにける(原句)
寒犬や耳門に鈴の鳴りにける★★★★(正子添削)
耳門は、この句ではくぐり戸。くぐり戸をくぐろうとすると、愛犬が主人の気配を感じて鈴を鳴らして近寄っている。寒々とした日、鈴を鳴らしてよってくる犬にほのぼのとした温かさを感じる。(高橋正子)

廃寺への九十九折なり息白し★★★

廣田洋一
山間にぱつと光れる紅葉かな★★★
冬の陽をきらきら返す播磨灘★★★
木枯しに少し揺れたるケーブルカー★★★

多田有花
斎場への道の傍ら冬紅葉★★★
捨てるべきものを物色十二月★★★
いと軽しベビーピンクのジャケットは★★★

桑本栄太郎
園児らのカートに乗りて冬田道★★★
煉瓦這い日差し明るく蔦枯るる★★★
降るように零れるように落葉時★★★

12月2日(4名)

小口泰與
冬草の各各の挙措雨の丘★★★
夕暮や時雨の遊ぶ鎖樋★★★
鋭声上げ鳥発ちにけり寒茜★★★

廣田洋一
白丸に三角四角おでん食ぶ★★★
おでん鍋久し振りなと迷ひ箸★★★
枯菊を焚きたる煙香りけり★★★★

多田有花
凩や叔父の訃報の届きけり★★★
午後の陽の翳り具合の冬めきぬ★★★
短日の通夜に集まる親族ら★★★★
夕やみがたちまちにやってくる「短日」は、気持ちもあわただしい。死亡の知らせに通夜に集まった親族たちは、短日のあわただしさの中にも、密やかに、温かく、故人の冥福を祈ったことであろうことが知れる句。「短日」が効いている。(高橋正子)

桑本栄太郎
瘤かざすように立ちたる冬木かな★★★

さざ波を切つて進むや浮寝鳥(原句)
浮寝鳥は水に浮かんで眠っている鳥を指しますが、「さざ波を切つて進む」のは、どんな状況でしょうか。(高橋正子)
さざ波に乗れば進むかに浮寝鳥★★★★(正子添削)
実際は、添削のような場合と思います。

峰の端に冬の入日や今まさに★★★

12月1日(3名)

小口泰與
忽と消え忽と現る雪浅間★★★
水枯れの添水や風の竹林★★★
隼の真一文字の雄飛かな★★★

廣田洋一
去年今年希望の光点滅す★★★
枯菊を折れば放てる香のありぬ★★★★
枯菊のごみとなりてもなほ香る★★★

桑本栄太郎
綿虫の青き翅浮く川辺かな★★★★
綿虫は小さく宙に浮かんで、点のような綿虫は灰色にも見えるが、明るい光があれば、翅が青がかって見える。その妖しいような青を川辺の光が見せてくれた。それを捉えた感覚がいい。(高橋正子)

冬日差す旧家にありぬ網代垣★★★
ふかふかと銀杏落葉を歩きけり ★★★
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