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今月の推薦書(七つの会議:池井戸潤氏)各章の主人公の言葉に注目

2013-07-07 18:00:13 | 本を読む
今月の読書推薦書

七つの会議
池井戸 潤

七つの会議
池井戸 潤
日本経済新聞出版社



本書は、意味深な題名です。
会議であれば、当然、経済小説と来るでしょ
う。
だが、七つとはどう言う意味なのか。
私が初めて本書を手にした時の想です。


七つの会議というものの、本書は8構成で進
みます。
短編小説の集合かと思うでしょうか。
半分正解、半分不正解です。
どの話も実は、短編で主人公が違います。
違うのですが、研鑽し尽くされた構成で、
密接につながります。
一話を読むと、その背景やその後の展開を
知りたいという読者の気持ちを掻き立てま
す。
見事に、それを次の章で解決してくれます


さて、内容ですが、まさに経済小説です。
城山三郎という大家がいましたが、著者も
皆外れた資質を感じました。


是非、読んでいただきたい。
すべての章に共通の脇役がいます。
その人物の言葉に面白みがあります。
組織に流され、組織に潰される人々。
あがきもがき、憎まれ蔑まれながらも、
懸命の生きる人々、
そこには、人生の深みがあります。
単純な懲悪小説ではない、本書の面白みが
そこにあると考えます。

読者は、ふと漏らす、主人公や敵役、そし
て脇役の彼が漏らす言葉に注意して、読ん
でください。

内容は一切語りません。
この手の小説は結論を読んだら、半減して
しまいます。

ひとつだけ、著者が賛同しているであろう
人物の生き方を紹介しましょう。

脱サラをして、ドーナッツ売りに転身する
OLを称して、「会社の姿を正確に見抜いて
いたのかなと最近思うのです。」

脇役八角(彼)の周りにこそ、著者の人生
への世界観が隠れている気がする。
不正、暴露、中傷、セクハラ・ハワハラ、
非難、自己欲、責任転嫁、人生につきもの
の所作を会社と個人という関係を通して、
7通りの「生き様」を展開してくれます。

その生き様にこそ、私たちが感じる対人・
社会への嫌悪と反省・憧れと希望があるよ
うな気がします。

そして、いつも、素敵な人物には、素敵な
伴侶が伴います。
7人の主人公の伴侶を比較してください。
今の自分の伴侶とも。
みたされない人も、満足されている人も、
ここに「人生はささやかな小異にり変わる
ものである。」ことを示してくれる何かが
あります。

何が大切なことか、じっくりと考えさせら
れます。
言葉を探す旅に出ませんか。
本書には、いたるところに、奥義が隠れて
いるような気がします。


追伸
私が好きな登場人物は、二人。
ひとりが、副社長の村西。
そして、共通の脇役(実は・・・)の八角
とその奥様ですね。


今の自分を後悔するか、反省するか。
かく言う芋太郎も会社人生の終結が迫る中
本書を読めたことを幸運と考えます。
何が当たり前のことか。
大切なものを見失うことなく、生きる、
生きていくことを再確認しました。

上げ潮の人も、そうでない方も、楽しめる
ことを保障しますよ。


最近の情報では、TV化されるようです。
その前に、一度読んでみてください。
映像では、つかめない何かがきっとありま
す。
それが「読書」ですから。


平成25年7月7日 川越芋太郎


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