「古田織部の世界:歴史ヒストリアから学ぶ」
NHKテレビ番組「歴史ヒストリア」にて、あの織部焼きで有名な
古田織部の人物像を紐解いていた。
歴史とは、現在からの目線や価値判断で物事を眺めることは
避けられない。
だからこそ、歴史は難しく、そして面白い。
さて、「日本の美」というと、茶道や能などの伝統美を想像する人も
多いだろう。
「わび」・「さび」のイメージである。
しかしながら、織部焼きはこのイメージから随分とかけ離れている。
歴史から見れば、丁度戦国時代である。
実は、皆さんもご承知のとおり、「かぶく」というあの時代ならでは
、超絢爛豪華な美意識が生まれていました。
古田式部はあの時代に生まれ、生き、大成したのです。
番組では、織部焼きが、一見現代美術のような雰囲気があるという。
型破りの造形美や色彩感覚が当時の常識から「おもしろい」の
意識を生み出していると。
「おもしおい」は、「へいげもの(ひょんきんもの)」として、
当時の茶の湯や人々の意識に強く働き、一時代を築いたようである。
思うに、戦国時代というあの「明日をも知れない生活」の中で、
人々は不安や恐怖と同時に、「笑い」や「おもしろみ」を求めた
といえよう。
こんな織部焼きを生み出した、古田織部であるが、実は歴史上の
武人としては、その後の歴史に残っていない。
かれを歴史から抹殺したのは、あの徳川家康であるという。
織部は、千利休に学び、千利休を継承しながらも、独自の茶の湯
を構築した人物である。
当時の茶の湯は総合芸術である。
千利休とも一味違う世界。
それが「へいげもの(ひょうきんもの)」といわれる世界観である。
一度壊して再生する。
傷や割れ目を楽しむ心根を説く。
千利休がそうであるように、自然織部も茶の湯を通して、
当時の大名への影響力が絶大となる。
そんな織部は、秀忠の茶の湯指導者として大阪の陣を迎える。
徳川家繁栄のためには、「一点の曇りも許さない」と決断した家康
に対し、「平和共栄」・「日本の滅び行くものへの美意識」などを
持ち合わせた織部は、豊臣への家康の対応が性に合わなかった
のであろう。
一世を築くということは、生易しいものではない。
織部も自己主張が相当に強い人物であったと思われる。
ゆえに、従来的価値観を超えた織部様式が広まる一因はここあると
芋太郎は考える。
だからこそ、悲劇もここに内在する。
家康との葛藤は人生のピークに「謀反」という汚名を着せられる。
その後、謀反人の美学として、織部焼きは葬りさられたのではないか。
番組ではそのように蛍雪するようだ。
実は、織部の弟子である秀忠に芋太郎は注目している。
何ゆえの関が原遅延か。
大阪夏冬の陣における消極対応。
ここに、織部式部と同一の世界観を見出すことができまいか。
織部焼きが一掃されたのは、単なる古田織部の謀反だけが原因では
ないような気がする。
根源に有る「ひょうげもの」の精神ことが、徳川幕府体制を構築する
官僚組織には秩序を乱すものとして見えたのではないだろうか。
将軍「秀忠」派の美学として。
話は変わるが、秀忠自信、将軍として大御所である家康との葛藤が
あると思うのは自然の成り行きであろう。
それ以上に秀忠の周りにいた人物が、織部であり、伊達正宗、兼継
本多であったりする。
老中職の権力争いもあったであろう。
まさに、心の中では「反家康」の人物ばかりである。
そう考えると、その後の歴史の流れも偶然にしては面白いように
筋がとおる。
織部の失脚、正宗の飼い殺し、兼継の表舞台からの隠居、本多氏の
権勢からの追い落とし。
クライマックスは秀忠の毒殺(?)。
織部焼きの一掃。
余談であるが、秀忠は英明であった可能性が高い。
英明な将軍は幕府という組織を崩壊させかねない。
ワンマン社長と初代派官僚組織の対立。
歴史は面白い。
教えられたとおりに学ぶ必要などまったくない。
事実と推論を織り交ぜて、自らの解釈をすることこそ、
歴史を学ぶことではないだろうか。
だれも真実歴史など観た事はないのだから。
無論、これは芋太郎の仮設であり、とんでもない解釈である。
しかし、唐津の技法と瀬戸の焼き物を結び、美濃で一大工業として
作られた織部焼き。
美術品だけではなく、おそらく富の創造でもあったはず。
織部焼きは、第二第三の「ひょうげもの」を創造する可能性が
あったからこそ、一掃された。
無論、そこには磁器というライバルも現れたであろう。
しかし、考えて観れば不自然だ。
ゴミといっしょに棄てられた事実も忘れては成らない。
磁器により駆逐されたのなら、他の陶器はなぜ生き延びたのか。
私たちの遺伝子の中で「織部焼き」に対するなんともいえぬ
安心感や共鳴感はなんであろうか。
暖かい「笑い」をもたらす織部焼き。
ぜひ、皆様も織部焼きを手にとって見てください。
「破調の美」は弛まない生と死(靜と動)を繰り返す宇宙と
同じ波調ではなかろうか。
完全ではないが故の美、愛さずにはいられない。
人間(芋太郎自信)も何時までたっても未完成であるのだから。
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