本日の番組は「洋食器」こんなナレーションで始まりました。
「洋食器」 料理をいっそう引き立ててくれる、洋食器。
その誕生の背景には、こんな物語があります。
それは、中国や日本の白くて硬質な「磁器」。
アウグスト強王は、ザクセン国でも、この白く美しい磁器を生産したいと
考えます。
錬金術師や科学者たちを集め、秘密が漏れないよう城に監禁してまで開発。
磁器を完成させます。
<美の壺1:艶(つや)めく白を味わう>
以来、磁器の生産法は各地に広まり、西洋で使われる食器の主流となりま
した。
洋食器は、当時の人々の白へのあこがれから生み出された。
洋食器の白は、作られる窯によって多種多様です。
300年前、ドイツで突き止められた、白さの決め手となる原料「カオリン」
粘土。
様々なニュアンアスの「白」が生まれます。
「真っ白ならいいかというと、そうでもありません。
『白色度100』というのはいわゆるチョークの白
料理が引立つ白さが重要。
そえは、窯元により多少異なる「白」が生まれる。
大倉陶園では、『色気のある白さ』を目指しているそうです。
写真に馴染みのある方はこの白色度の変更による微妙な感じがわかりましょう。
ウェジウッドはボーンチャイナ(牛の骨)、ジノリは青みがかった白という
具合に。
<美の壺2:絵柄に秘められた歴史に思いをはせる>
ドイツの窯「マイセン」の「ブルー・オニオン」と呼ばれる青い模様。
登場して270年、
世界中で描かれてきた、洋食器の伝統的な絵柄です。
こうした図柄には、さまざまな物語が秘められている。
なぜ皿にオニオン、タマネギが描かれているのでしょう?
なんと東洋の絵柄を欧州風に理解した結果だそうです。
そこに、西欧のものの考え方が次第に反映された物が今現在の残っている
訳です。
「中国や日本から伝わったお皿を手本に、当時のドイツの人々が、ザクロを
描いたお皿を見てザクロとわからず、オニオンと次第に呼びならわされる」
面白いですね。
同時に、花やくだものは西欧では豊かさの象徴でした。
こんな背景を知りながら、「洋食器」を眺めるとまた、楽しいですね。
さらに、たまねぎ・桃・花という3種の東洋のモチーフを、4つずつ均等に
配置した構図は、春夏秋冬や朝・昼・夕・夜など時間の流れを表すもの。
12絵柄は宇宙をつかさどる星座を表すとも。
ついては、皿の模様は、「人間の一生」や「永遠」を意味していると
言われています。
<美の壺3:ディナーセットが奏でる交響曲(シンフォニー)に耳を傾ける>
そろいの洋食器をディナーセットといいます。
私達日本人には馴染みがないですね。
本家本元の東洋と違う歩みを始めた「食器類」です。
ディナーセットというスタイルは、ヨーロッパ18世紀の宮廷でほぼ完成
しました。
ヨーロッパの国々が覇権を争った当時、晩さん会は、重要な外交交渉の場。
そろいの食器を前にテーブルにつくことが、友好の証となった。
ディナーセットは、会食の目的によって使い分けられる。
私的な会食で使われるものはゆかりの図柄を取り入れ、ふるさとの話題を
添えることで、来賓とより親しくなることができる。
ディナーセットはこのように、さまざまなメッセージを伝えてくれる器です。
また、器ひとつひとつの多彩な形が、会食を盛り上げるための役割を果たす。
この大きな楕円の皿「プラター」はかつて西欧で、チキンの丸焼きなど
細長いメイン料理を、そのまま載せるために生まれた形です。
レストランなどでお目にかかる、ちょっと変わった役割のお皿。
あらたまったレストランでは、席に着いたとき、一枚のお皿が目の前に
置かれています。
ディナーが始まると、下げられてしまいます。
最初の料理は、別の皿に盛られて出てくるのです。
このカラのお皿は何のためのものだったのでしょうか?
サービス・プレートといい、歓迎の意を示すためのお皿。
観るためだけの皿だったのです。フォークやナイフで傷つけることもないため、
華やかな装飾を楽しめます。
もてなしの心が生み出したディナーセットはこうしていつしか、持ち主にとって
特別な存在になることもあります。食器に思いがこめられる。
その思いがもてなしの心としてシンフォニーを奏でてくれる。
大げさなディナーセットではなくても、皆さんの家にも、思い出の食器は沢山
あるのではないですか。コーヒーカップでも。
大切なものは、そこにこめられた使用者の思いではにでしょうか。
それを語るとき、ゲストとの心のふれあいが生まれる気がします。
皆様も、ぜひ、お茶会でも企画してみたらいかがでしょうか。
「ご馳走様です」