今日は現オバマ大統領の後任を決める全米の大統領選挙である。ヒラリークリントン氏かトランプ氏かの選挙人を各州で選出する。住民の代表というべき存在であるが、代理人は、そちらかの大統領候補を決めているため、選挙人の数の和が274名以上(過半数)となれば、どちらかが大統領に推挙されることになる。選挙人の総数は、過半数の2倍なので、548名である。この制度は一見、間接選挙の形であるが、実際は、直接選挙である。大方はヒラリー氏がオバマ氏の後任と目されていたが、最終的には、トランプ氏に決定した。
この衝撃的なニュースは、大方の予測と反するもので、安定政権を求めないアメリカ市民の気持ちを如実に示した、想定外のことであった。コメンテーターなり解説者の如何に事前の予想が覆される事態を想定できなかったかの限界を示すものであるという教訓である。
このことも今後勝因の分析等、解説者や分析者があることないことを宣うのであるが、後出しじゃんけんで、見苦しい姿を見ることになる視聴者にとっても、無意味な時間を過ごすことになる。そのことが分かっていながらの世界はなんともむなしい時間である。
衝撃的なのはそのことではない。あのニコンが1000名の従業員削減を発表した記事である。詳細については新聞紙上でご確認していただければよいのであるが、自分にとっては、アメリカ大統領選以上の衝撃であった。つまり技術立国として戦後の我が国を支えてきたトップランナーの世界的シェアが極端に落ち込み、今や、1割にも満たなくなったのである。光学精密機器の分野は、将にお家芸でもあった。現在でも大手の数社は国際競争力の上位を占めているが、ニコンがなぜこのような凋落を示したのか?
答えは簡単である。グローバル化に乗れなかった企業体質であり、自社ブランドを守る戦略の失敗である。聞こえは良いが、発明当初の技術はブラックボックス化し、それを大切にする姿勢である。しかし、今回の凋落の原因は、オープン化しなかったために起こった悲劇というほかはない。抱え込んでしまったために、世の中の潮流に取り残されてしまったのである。
カメラの基幹部分である半導体露光装置の自前執着が、対抗馬である、オランダのフィリップスから独立したASML社に凌駕されてしまった。ASML社が取る戦略は、オープンイノベーションであった。これは外部企業への技術情報の提供と協力関係で連携し、機動的な製品開発を続けたためと分析されている。あきらかに、他の血を入れることによって、新製品開発への活路が開けるのであり、自社の力だけでは今の技術向上は不可能であることを示す結果となった。
我が国の多くの企業が抱えている狭い了見は、いずれ、他者に吸収されることは必至である。オープン化することによるデメリットよりメリットが大きいことをお伝えしたい。