今年は天候が不順だったせいか、収穫した柿は塾生が進んだもの、まだ表皮が青いもの等が多く、粒がそろっていない。2回に分けて収穫したが、2回目は熟成度がちょうどよかった。女房の弁によると、どこから聞きつけて来たのかわからないが、青い(未成熟)の柿を冷蔵庫に入れておくと、適度に熟すらしい。渋柿を焼酎に浸けると渋が抜ける。また、渋柿を蒸かす(あおす?)と甘くなる等生活の知恵の一つであろうか。「何事もやってみないと分からない」我が家の家訓である。
2週間ぐらいたった冷蔵した柿を食してみた。それが大変おいしいのである。じっくりと熟成させたからであろう。柔らかさといい、歯ごたえも残っていて、とにかく甘いのである。富有柿は、もともと渋みはないが、採り立ては固い感じがして、それはそれでおいしいが、まろやかさに欠ける。冷蔵した柿は、硬さ、甘さ、うまさどれも合格であった。
原理は想像すると、低温で、柿の持つ酵素が影響しているのかもしれない。常温の下では、酵素が活発化するし、皮から水分も抜けて、張りが失われる。しわしわになってしまう。しかし、低温化ではゆっくりと熟成するので、新鮮さを保つことができる。北国で、収穫した野菜等を室に貯蔵し、雪をかけることや積雪の多いところでは雪を掘ってそこに野菜を埋めておくことが行われている。そうすると断熱され,0℃以下にはならないという。
野鳥が未成熟の柿の実を突っつくことによって、早く熟すのはどのような理由かはっきりしないが、樹木のほうで傷をふさごうとする働きがあり、そのことと関係するかもしれない。柿の実の中には種がいくつか入っている。実は本来、成熟し、野鳥等の食性を利用して、種を遠くへ運ばせて発芽させるという知恵を持っている。その意味では、鳥の突っつきを契機として、スイッチが入り、早く熟させようとしているかもしれないのである。
富有柿の原種と現在の人間好みに変性を経た柿との間にはどのような遺伝子上の違いがあるのかわからないが、台木に挿し木をしていると聞いたことがある。すでに60年も前のことであるが、柿の種を植えただけでは確実に発芽するか、甘い実がなるとは限らず、一般的に渋柿になるそうである。自宅の柿の実を植えて実験すればよかったのであるが、熟して落ちた柿の発芽はほとんどなかったように記憶している。