日々雑感

心に浮かんだこと何でも書いていく。

彼女に案内してもらう6-28

2018年04月10日 | Weblog
見下ろせる。そこから10分も歩いただろうか、寺院の正門の前に出た。寺院はここから何百段かの石段を上り詰めた上にある。しかもその石段たるや、見上げるにかなり急な勾配である。
ここまで来て、やめることはどうしても出来ない僕は、石段を数えるようにし ヌてそろり、そろりと上り始めた。
どこでもそうだが、神社仏閣には乞食がいるものだが、ここも例に漏れず身障者の乞食がいた。近付くにつれて手にもったアルミ製の器を差し出して施しを乞うてくる。僕は清しい気持ちでお寺参りをしている筈なのに、ものを乞う手が疎ましくて仕方がなかった。疎ましいというよりは、休み休み上ったとはいうものの、息切れがして呼吸を整えるだけが精一杯であったのだ。我が身をもちかねて、とても何かをする余裕はない。しかもここの石段は上に行けばいくほど勾配が急になっている。ハアハアと息を弾ませてやっとの思いで頂上についた。
               彼女
 最後の石段に棒のようになった足を懸けて踏ん張ったときに、僕は黒い陰を見た。それは日本人に見えた。
「あっ、あなたは日本人ですよね、」
僕は出会いを全く予期してなかったので、驚いてこんなことを口走ってしまった。
「ええ、日本人です。」 彼女は関東のなまりでそう答えた。
「どちらから」
「いえ、私はもう2年近くもこちらに住んでいます。ごく最近までこの下にある小学校で先生をしていました。」
「じゃ、ネパール語はしゃべれる訳だ。へー、先生です トか。」
話を聞けば聞くほど僕は彼女に興味をもち始めた。日本を出るときネパールで、うら若い日本人女性の先生に出会うなんて想像することすら難しい。
 彼女の次の予定を気にはしながら、時計とにらみっこをして、ネパールについていろいろ説明してもらった。ネパールのお葬式のこと、インドのようなカースト制度のこと、バクタプルのミトーナ像の事やネパールの歴史について、そして彼女が勤務していた小学校のことなど、僕は矢継ぎ早に彼女に問いかけた。彼女はいちいち丁寧に質問に答えてくれただけでなく、よかったら今から行く小学校に連れて行って上げてもよいと言ってくれた。僕は即座に是非連れて行って欲しいと頼んだ。
                  

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