FESCOの基本戦略は機能したか?
FESCO創業時の基本的な事業戦略は、以下の3つであった。
第一に、トータルサービス戦略。第二に、バーチャル・コーポレーション戦略。第三に、アウトソーシング戦略である。
第一のトータルサービスとは、FESCOが顧客施設の省エネルギーに関する「総合ドクター」として振舞うこと。それまでの省エネ営業は、機器や手法が先にありきのもの。顧客の都合や状況は、おかまいなし。機器が売れればよく、工事が受注できればハッピー。
対して、総合ドクターである以上、あくまで顧客の目線で、ソリューション提供に重点を置くことになる。まさに、顧客指向型ビジネスである。
これは「言うは易し、行い難し」であった。この姿勢を貫くのは、事業利益をサービスの対価として十分に確保するという観点から、容易ではなかった。ただ私の想いとしては、「サービスはただ」という既成概念をなんとか払拭したかったのだが、それは時代共に徐々に受け入れられてきたのではないか。
第二のバーチャル・コーポレーションとは、インターネットをフルに活用して、さまざまな省エネルギーに関する知恵やノウハウを効率的かつ効果的に集めようというもの。時には、動画や写真などを用いれば、実際に現場に行かずとも省エネ診断ができないのか、と時間と空間を超えたかった。
この戦略は、97年当時のネット環境では、発想は良かったが明らかにハード機能が未熟であった。まだ、ネット接続がダイヤルアップであり、写真や動画などの重いファイルは、とても送れずフリーズの連続。10年経過した「Web.2.0」時代になって、やっと実現可能になった戦略である。
第三のアウトソーシングとは、より多様な省エネルギーの知恵とノウハウを安価に集約するために採用した考え方。二つの側面を考えた。「内的アウトソーシング」と「外的アウトソーシング」。
前者は、FESCO組織内部において、当初からさまざまな雇用形態を許容してきた。これは、事業の立上げ時には、かなり成功したと思う。最初からプロパー社員だけというのは、ベンチャー企業には重過ぎる。問題は個人のモチベーションであるが、そこは社長のリーダーシップが求められるところ。
後者は、FESCO自体が顧客のアウトソーサーとして位置づけてもらうこと。理想は、エネルギー管理全般のアウトソーシング受託であったが、わが国の事業所における自前主義の壁は思ったより厚かった。
次回からは、上記3つの各戦略ごとに、もう少し深く分析してみたい。
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