米国第44代大統領にオバマ氏が就任した。弱冠47歳、自分よりも5歳も若く、人生経験の短い者が、超大国のリーダーになる。それにもまして、彼は所謂マイノリティーであり、血縁も地縁も何もないところからトップへ昇りつめた。
これこそが、米国のダイナミズムなのであろうか。日本ではとても考えられないことである。
それにしても、彼の就任演説を英文で確認すると、それまでの選挙戦でのスピーチとは、かなり趣が異なっていた。結構、難しい単語も入っており、日本語訳でも難しくよく分からない。格調高いスピーチと言えばそのなのかもしれないが、明らかに以前のオバマとは違っていた。
私も期待していた「Yes! You can.」が出てこなかった。なおさら長時間待たされた大観衆は、大熱狂を期待していただけに、ちょっと肩すかしをくらったような感じではなかったろうか。
現状の米国が置かれた立場を考えると、確かに熱狂だけでは対処できない。国民一人一人の「責任の時代」が強調され、国や政府に頼るのではなく、自らが自らの力で前に進むべきだと言い放った。
苦境の状況にあるリーダーとは、こうした厳しさが不可欠なのだということをオバマは身を持って示したのである。
47歳の若者がどうしてこれほど力強く厳しいメッセージを発せられるのか、それも米国の舵取りというとてつもない大きな重荷と責任を背負いながら。おそらくは1年以上にわたる大統領予備選挙において、相当鍛えられるのであろう。あの誹謗中傷合戦の中を勝ち残るということは、それだけでも精神的なタフさが要求される。やはり、人間力は年齢ではなく、どれほどの修羅場をどれだけ潜り抜けたかということによるのだろう。
まずは、若きリーダーの今後の一挙手一投足に注視していきたい。私のような者が言うのはおこがましいかもしれないが、そこから学ぶべきことは多々あるはずである。
それにしても熱狂の就任式は無事終わって良かったが、その後を取材した日本の某ジャーナリストが印象に残ることを伝えている。
「会場周辺は、すさまじいゴミの山だ。国民は自らの責任を持てというオバマのスピーチの真意は、まったく伝わっていないのではないか」
「自分で出したゴミは自分で始末する」
「もったいない」と並んで、これは地球環境問題解決に向けた精神の基本中の基本である。この感覚を違和感なく肌で感じ、苦もなく実行できる「お行儀の良さ」こそが、実は日本人の誇るべき特質なのである。
これらかの温暖化問題等の国際交渉の場において、こうした米国人の「行儀の悪さ」「躾のなさ」を堂々と指摘し、彼らのマインドの「Change」を促すことが、これからの日本が主張すべきテーマの一つであろう。そのためにも、まずはわれわれ自らを律する心が肝要になるのである。