「私の顔を見たくなかったら、この法律を早く通せ!」
時の総理大臣がある民間人との会合で述べた言葉であるが、ここで対象となる法律とは、正式名称が「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」というもの。
再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社に一定価格で長期的に買取を義務付けるものであり、通称「再生可能エネルギーの全量買取制度」とも言う。
前回詳述したRPS法との違いは、大枠で以下の2点である。
① 買取価格と期間が固定されること
② そのためのコスト負担を電力会社は電気料金に上乗せできること
もし、現総理大臣の退陣とのバーター取引として、この法律が成立したとすると、折角の再生可能エネルギーの普及促進策が、国民の納得と合意の下ではなく、ある意味ゆがんだ形でスタートすることになる。それで本当にいいのだろうかと危惧している。
もちろん、再生可能エネルギーのビジネス展開を企図している企業や事業者としては、そんなことはどうでもいいので、早くなんとかして欲しいというのが本音ではあろうが。
もともと民主党は、地球温暖化対策基本法(未成立)の中で、この全量買取制度を環境税と排出量取引との3大セットの実現をマニフェストに謳っていた。
その目標は、「わが国が温室効果ガス(GHG)を2020年までに1990年比25%削減する」という前首相の国連での力強い宣言を達成することでもあった。
2年ほど前のこの国のリーダーの言葉に、環境・エネルギー分野で仕事をする人間はすべて雀躍したものであるが、その喜びと期待も一気に裏切られた。
実際問題として、再生可能エネルギーを将来のわが国エネルギー源の主力としていくためには、事業者には相当な覚悟と信念、そして決して途中であきらめない粘り強い努力が必要となる。同時に国民には、相当な痛み(経済的な負担や不安定供給)も受容願わねばならないだろう。
今の政治家の中で、今後予想される困難を乗り切る覚悟を持ったリーダーが見当たらないことが、この国の不幸でもある。
「環境では票が取れない」
実はそう政治家達に言わせている私たち国民レベルにこそ、最大の問題があるのだろうが。
結果として、政争の具となってしまったわが国の再生可能エネルギー政策は、果たして今後どうなるのか。
そもそも本質的に分散型電源でもある再生可能エネルギーは、国の政策がどうなろうとも、地域や自治体レベルでの草の根導入促進が今後のポイントになるのではないだろうか。
その意味では、今後、地域のエネルギー政策に注目し、期待していきたい。