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生まれて生きて死んでそれから・・・(8)

さて、ある日、長官は寄居国の国王に呼ばれて
お城に赴きました。

「王様自らのお呼び出しとは、
 いったいどんな御用なのだろう?」

ドキドキしながら謁見の間に通された長官でしたが、
国王は
「長官、君のお陰で、この寄居国は美しく平和で
 富栄えている。

 ありがとう」

と、並み居る重臣たちの前で、
最上級の言葉で長官を讃えました。

そして
「実は、私の友人の王様が治めている深谷国が
 荒れ果て、国民たちが争いばかりで、
 とてもひどい有り様になってしまっているらしい。

 ついては 長官、君の手腕を見込んで、
 甚だ遠い深谷国だが、
 かの国を 平和な国にしてやってきて欲しい」

と命じました。





王様から直々に重大な仕事を依頼された事に感激しながら、
長官は その足で 第一夫人の家に向かいました。

「今、国王様から直々に、
 深谷国の治安を守るように頼まれた。

 この仕事は とても名誉な仕事だ。

 1カ月後に 深谷に向けて出発するから
 準備をしておきなさい」



それを聞いた第一夫人は、
「深谷国って どこにあるんですか?

 聞いた事もありません。

 きっと野蛮な国に違いありませんよね。

 私はそんな国に行くなんて絶対嫌です。

 あなた一人で行って下さい」

と答えました。



頭にきた長官は、次に第二夫人の元へ向かいました。

「実は今日、王様から かくかくしかじか。

 第一夫人は 行ってくれないそうだ。

 第二夫人のキミを連れて行く。

 そのつもりでいてくれ」

第二夫人「そんな遠い国に行くなんて大変ですねぇ。

 私だってそんな遠い国に行くのは嫌ですよ、

 あなた一人で行って下さい」

という返事。



「こんなに大事にしているのに 第二夫人までもか」

とむしろ戸惑いながら、
長官は 第三夫人の元へ向かいます。

「実は今日、王様から かくかくしかじか。

 第一夫人と第二夫人は 一緒に行ってくれないそうだ。

 キミは一緒に行ってくれるよな」



それを聞いた第三夫人は 驚いた顔をしながら
「お供をしたいのはやまやまですが、

 私は 年老いたお父様、お母様と、
 幼い子供たちの面倒を見なければなりません。

 一緒には行けません。

 遠路深谷国まで大変でしょうが、
 くれぐれも気を付けて行って下さい」

との返事。



がっかりした長官は 自分の家に帰ります。

肩を落として帰宅した長官を見た第四夫人。

「いったいどうしたのですか?」

「実はなぁ、
 今度 国王の命で 
 深谷国という遠い国に赴任する事になったんだよ。

 第一夫人も第二夫人も第三夫人までも
 一緒に行ってはくれないんだそうだよ。

 キミもそんな遠くて野蛮な国に
 一緒に行くのは嫌だろうなぁ」



第四夫人「何を言っているんですか!

 私はあなたの妻です。

 もちろん一緒にお供します。

 お供させてください」

と言って にっこり微笑みました。





1カ月後、旅立ちの日、
第一夫人は 今日が長官の出発の日だということすら忘れて、
豪奢な家の 豪奢な部屋で 近習の者たちと、
ご馳走を食べ、遊び惚けていました。

第二夫人は 屋敷の窓から手を振って
長官を見送ってくれましたが、
もう片方の手は 
窓の外から見えないように隠れていた別の男性の手を 
しっかりと握っていました。

第三夫人は家族と共に 
長官を 寄居国の門、国境まで
「どうぞご無事で」
と涙を流しながら見送ってくれました。



そして、第四夫人だけが かいがいしく長官に寄り添って、
共に旅立って行った。

という物語です。





さて、ここで言う豊かで美しい寄居国とは、
私たちが今暮らしている「この世」です。

野蛮で荒んだ深谷国とは「あの世」です。



では、第一夫人とは・・・ それは自分の肉体です。

生まれてから死ぬまで 人は肉体の快楽のために
我慢をし尽くして生きていますが、
死んだら肉体は荼毘に付され、
土に埋められ、
滅びて無くなってしまいます。



第二夫人とは 自分の財産です。

人と争って手に入れたたくさんの財産も、
あの世まで持って行く事はできません。

自分が死んだら、他の人の物になってしまいます。



第三夫人は 家族・親戚です。

親族は あなたの死を 涙を流して悲しんでくれますが、
一緒に死んでまではくれません。



それでは 第四夫人とは?・・・ それは自分のです。

肉体が滅んでも、
財産が無くたって、
寄り添う家族・親族がいなくなっても、
死んでも
自分自身の心は ずっと自分自身と共にあるんです。

心は魂の事です。

心とは 人の命の源泉です、そのものなんです。



つづく



          


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生まれて生きて死んでそれから・・・(7)

第3章 あなたの大切な奥さま(旦那さま)は?


これは、みなさんに、
インドの昔話を 少しわかりやすく 
私なりに改めた物語、創作脚本です。

「奥さまは?」としましたが、
インドもカースト制度の延長で 男尊女卑の傾向があったので、
原文がそうなっているので
お赦し下さい。

女性の皆さんは
「旦那さまは?」と言い直していただいても
もちろん結構です。





昔 インドに 平和で文化水準が高く、
産業も発達した 豊かな美しい国がありました。

(インドも日本と同じで、
 昔はたくさんの国が別々に寄り集まっていたんですが、
 その中でも秀でた先進国)

その国を仮に寄居国としましょう。

寄居国の警察庁長官には4人の奥さんがいました。

(今言ったようなことで、一夫多妻は 当時のインド地方の常、
 女性の皆さん、元々の物語がそうなっているんで、
 くれぐれもお赦し下さい)



第一夫人は 長官の幼馴染の女性です。

子供の頃から いつも一緒、
大好きな女性で、
いつも これでもかこれでもかと溺愛していて、
その女性のために お城のような豪邸を建てて、
「キミを 心から愛しているよ 
 I love you.  I need you. 」
と毎日会いに訪れていました。



第二夫人は、長官が街を巡察していた時に見初めた美しい女性です。

「私は、この国の警察庁長官である。

 君は美しい、私の第二夫人にならないか」

と声を掛けます。

女性は
「長官の事は よく存じています。

 凛々しいお姿に いつもあこがれていました。

 ぜひ 第二夫人にしていただきたいのですが、
 私には既に許嫁がいるので、
 とても残念ですが
 長官とは結婚できません」

と言いました。

長官「では その許嫁とやらと決闘をして、
   私が勝ったら私の第二夫人になりなさい」


かたや町人、かたや百戦錬磨の警察庁長官、
当然のように長官が勝って、
女性は長官の第二夫人になりました。

長官は 美しい第二夫人に悪い虫がつかないように
完璧なセキュリティーを備えた要塞のような家を建て、
1カ月に1回ほどの割合で その女性の元を訪れ
「キミはいつ見ても美しいなぁ 
 Very very beautiful.」
と愛でていました。



第三夫人は お見合い結婚の相手です。

長官の両親が
「お前も警察庁長官になったんだから、
 しかるべき家柄の しかるべき女性を
 奥さんにしなければいけないよ」
とお見合い話を持ち掛けました。

最初は 長官は
「私には もう2人の妻がいます。

 3人目の妻は考えていません」

と辞退したのですが、
両親があまりにも熱心に言うので、
何度かのお見合いでい見初めた女性を
第三夫人にしました。

女性のためには ごく普通の住宅を建てて、
両親の面倒を見させながら一緒に住まわせ、
半年から1年に1度の割合で 様子を見に訪れていました。



第四夫人は押しかけ女房です。

一人暮らしの長官には 
身の回りの面倒を見てくれている女性が
もともと いました。

その女性が ある時 長官に言いました。

「ご主人様、
 私はご主人様を心から尊敬しています。

 ぜひ4番目の奥さんにして下さい。

長官は答えます。

「知っての通り、私には もう3人の妻がいる。

 もう 妻はいらないんだよ」


女性「お側に置いていただけるだけで、結構です。

 家も何もいりません。

 今まで通り 
 ご主人様のお世話をさせていただけるだけで十分です」

長官「そんなに言うのなら、名前だけでいいのなら、
 4番目の妻にしてあげよう。

 今まで通り、私の身の回りの世話をよろしく頼むよ」

と 決まった家も建ててあげないで、
掃除、洗濯、食事の用意と、
それまでと同じように、相変わらずこき使っていました。



つづく


   
       


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