「赤間さんが札幌の伯母さんに報せて、伯母さんがお前さんに伝えたと言うことか」
「そんなところね。最初に謝っちゃうけれど、一度も連絡しないで、所在も報せないでごめんな
さい。
私、心得違いをしていたし、それにここの海を見るのがずっと怖かったの。
辛かったし、誰かを憎まないと自分が立っていられなかった。だからその気持ちを鉄さんにぶつ
けていた。本当は鉄おじさんにはずっと申し訳ないと思っていました。
感謝しているのに、薄情で不義理で可愛気のない子でした。
小父さんが倒れたと聞いて、改めてそのことが良く分かった。だからこのまま死なれたら取り返
しがつかないと思ったの。
鉄小父さん赦して下さい」
「いきなりよしてくれ。わしは当分死なないつもりだ。お前さんはわしの娘だ。そんな他人行儀
な言い方をされたら、どうしていいか分からなくなる。
分かっているよ。お前さんにとって、ここが辛い場所だってことは、充分に分かっている。だか
らもうそんな言い方はしないでくれ。
帰って来てくれて嬉しいよ。
とにかく、何というかよかった。嬉しいよ」
高志は今までに見たこともない、優しい笑顔の鉄さんを見て、自分がこの場所にいることに、心
苦しさを覚えた。
そんな高志に気付いたのか、それとも今のあやとのやりとりを終わらせたかったのか、鉄さんは
話しを変えて言った。
「彼は居候だ。昨年の11月からわしと暮らしている。漁協の休憩所で拾った。