言葉はここで途切れて終わりました。
母はもっと話したかったのでしょう。
途切れた後に続く言葉が何だったのか、長く私を悩ましました。
しかし、今は私なりの言葉を見付けたと思っています。
「不幸に・・・」の後に続くのは「不幸になるかも知れないけれど」だったのだと思います。
幸せを願うだけならば真直ぐに、幸せになりなさいと言えば良いはずです。あえて不幸の言葉を
使ったのは、そのことを強く意識したからです。
それでは何故この言わずもがなの言葉を使わずにはいられなかったのでしょう。
その言葉はどうしても「父さんのことはもう赦しなさい」に戻ってしまいます。
そこに繋がって初めて言葉は完結します。
母は最後まで言い切りたかったのでしょうが、その力はもう残っていませんでした。
直ぐに危篤状態に陥り、そのまま亡くなりました。
鉄五郎様あなた様はこの母の最後の言葉から、何を感じ取るでしょうか。
「不幸にな・・・」の後にどんな言葉を繋げるでしょうか。
いえ、いえ、そのようなことを尋ねることはこの手紙の目的ではありません。
役目はもう終わっています。
最後に蛇足になりますが、私のことを語らせて下さい。
母の没後、私の中を吹く風は相変わらずです。たぶん私はこのままでこの風に吹かれながら生き
て行くのでしょう。
ときどき思うのです。