伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ201

2021-07-11 20:49:57 | ジャコシカ・・・小説

 

 彼は何かにカブレているのかも知れないと思った。

 

 一クラスに一人や二人は必ずいる、成績が上のスカシ野郎だ。

 

 そんな風に考えてみる。

 

 しかし、言葉は耳の奥から、忘れた頃にひょっこりとまた聞こえてくる。

 

 千恵は次第に苛立ちを覚えた。

 

 その苛立ちはやがて最後に、彼が雪の峠で父に拾われた、処に行き着く。

 

「あのままだとあいつは、間違いなく行き斃れだった」

 

 父は彼の話しが出ると、何度もそう言った。

 

そこに辿り着くと、彼の言葉が単なるスカシとは思えなくなる。

 

一体何を考えているのか、結局千恵には解らない。

 

 自分がまだ子供だからなのか、大人になら充分に理解できるのか、苛立ちはまた迷路をさ迷い始

 

めた。

 

 突然、楽し気な鈴の音を響かせてドアが開き、ハーフのスプリングコートを着た、清子が現われ

 

た。

 

 「待った」

 

 姉はいつもの第一声をかけながら、優し気にそっと薄いコートを脱いで、頑固な樽材の椅子の背

 

もたれにかけた。

 

 こんな時、千恵は姉に強く、大人の女を感じてしまう。

 

 「姉さんいい人できた」

 

 千恵は急に意地悪気に聞いてみる。

 

 もちろん姉には、そんな人がいないことは百も承知だ。

 

 

コメント
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