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退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界

2015-02-04 06:19:07 | 韓で遊ぶ


母の約束

仁川のある遊園地で恐竜展示会が開かれていました。
券売所の前で、一人の子供が恐竜のポスターを見ながらうろうろしていました。入場料は6000ウォン。ですが、少年にはそんなお金はありませんでした。
少年の母親は魚を売る行商していました。しばらく前に夫と死別して、一人で子供を育てている苦しい暮らし。一人息子が恐竜展示場に行かせてくれと何日もせがんでも、さっとお金を出せるような暮らし向きではありませんでした。
子供は机の前に大きな恐竜の絵を張っておきました。そして暇さえあると「友達はみんな、行った。」と言ってしくしく泣きました。そうやってすっかり落ち込んでいる息子を見るたびに母の胸も痛みました。
そんなある日、これ以上は待てないという少年が、断食闘争を始めた夕方のことでした。
「さあ、夕飯を食べて寝ないと、早く、、」
「ご飯なんか食べるもんか、恐竜を見せてくれと言っているじゃないか。」
子供は母の心情も理解できないまま、駄々をこねてばかりいました。
ためらっていた母親は、何も言わずに子どもの手を引いて恐竜展示場に行きました。ですが、展示場はすでに閉まっていました。
恐竜たちは暗闇の中に隠れてしまった後でした。
がっかりした少年と母親が、どうしても帰ることができないまま金網の前にしゃがみこんでいる時でした。二人を見つけた展示場の警備員が静かに四方を見回した後、懐中電灯で合図を送り、閉まった門を開けてくれたのでした。門が開けられると二人は驚いた目で警備員を見つめました。子供が一言、希望のこもった声で口を開きました。
「おじさん、、、」
頭をあげた母親が静かに言いました。
「子供が恐竜を見たいと言って。」
警備員は、それ以上何も聞かないで、展示場の方に懐中電灯を照らしてあげました。その光の中で、恐竜が大きな姿を現し始めました。少年はあちこち見まわしました。
恐竜の身体が現れるたびに、少年は手をさっと上げて喚声を上げました。
「うお、ティラノだ、、うわ、、おじさんティラノでしょ。そうでしょ。」
そうやって展示場をひとまわり回った後、母親はポケットを探ってお金を差し出しました。しわくちゃになった1000ウォン札3枚。
母親は恥ずかしさを暗闇で隠したまま、お金を出しました。ですが警備員は軽く頭を振って言いました。
「半分も見ていないのに、、いつか昼にまた見に来てください。」
「ありがとうございます。では、、、」
母親は腰を深く曲げて挨拶をして、心の中で誓いました。もし、暗くてちゃんと見ることができなかったとしても、それは明るい真昼に見たものよりもすっと価値のある、忘れることのできない恩だと、昼にまた来ることは、その恩に反することだということです。
コメント
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