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映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

農民(2023年)

2024-12-02 | 【の】

作品情報⇒https://eiga.com/movie/102795/


 20世紀初頭、ポーランドの農村。村一番の美女ヤグナは、その美貌故に男たちからは欲望の対象とされ、女たちからは嫉妬の的にされている。

 村一番の大地主マチェイは、農地を親の代の倍に広げたことが自慢ながら吝嗇家で、自分の資産をいずれは引き継ごうと虎視眈々と狙っている長男のアンテクとは諍いが絶えない。そんなアンテクとヤグナは不倫関係にあり、アンテクの妻ハンカも黙認状態にある。

 マチェイは先年妻を亡くしており、周囲から再婚を勧められるものの最初は取り合っていなかった。が、「ヤグナはどうだ?」と言われたことで、息子たちに資産を渡したくないこともあって、俄然再婚に前向きになる。

 ヤグナは不本意ながらも、母親がマチェイと取引をしたことから逆らえず、愛人の父親と結婚したのだが、、、。

 ポーランドのノーベル賞作家ヴワディスワフ・レイモントの小説『農民』を映画化。


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 ポーランド映画祭にて上映。本作はロトスコープによる油絵のアニメーション映画です。制作に膨大な時間と人力が費やされているのですが、映画が完成する前に生成AIが普及してしまったという、何とも皮肉な事態となりました。が、作品自体はその熱量を十分に感じられるものとなっています。

 また、私が見た回は上映後に、ポーランド映画と言えばこの方、久山宏一氏によるレクチャーもあり、充実した鑑賞となりました。


~~以下、ネタバレしておりますのでよろしくお願いします。~~


◆登場人物全員、、、

 レイモントの名は、本作で初めて知ったのだけど、ワイダ監督作「約束の土地」(未見)の原作が同じくレイモントの小説だったと知って、へぇー、、、であった。「約束の土地」見たいと思っていたので、、、。

 内容としては、上記あらすじからも分かる通り、女性が主体的に生きる術のない時代の話で辛いものがあるのだが、これが実写でなくアニメだったので、グロいところは幾分緩和されていた。

 ストーリーはシンプルで、設定はちょっと違うけど、「マレーナ」に似ているかな。その美貌故に、男たちの容赦ない視線に晒され、終盤では女たちからリンチを受けるという、、、。マレーナは愛する夫に貞節を守っていたけど、ヤグナは、結婚した後も義理の息子となったアンテクと不倫関係を続ける。

 ……そらそーだわね。あんなケチ爺ぃ、別に愛して結婚したわけじゃないもんね。

 結局、不貞行為の現場を爺夫に見られて、アンテクともども焼き殺されそうになるところを逃げ出したヤグナだったが、土地を巡る諍いが起きて夫は死に、アンテクは投獄される。ハンカとアンテクの弟が土地の相続問題に乗り出してくるが、ヤグナはただただ成り行きを傍観しているだけ。……だけなのに、なぜかどんどん状況はヤグナにとって良くない方へと進展し、村人から総スカンを喰らう事態にまでなるという、、、。

 果ては、村人総がかりのリンチである。おまけに、サイテーなのがアンテクで、シャバに戻って来た彼は、ヤグナが村八分に遭っている状況を見て助けようとしないどころか、積極的に人身御供にするのである。

 とにかく、誰一人マトモな人間が出て来ないという胸糞悪い話なのに、映画としては、油絵独特の持つ味わいの効果か、全編にパワーが漲り、非常に躍動感があったという、、、稀なる作品だった。


◆久山宏一氏によるレクチャーから

 レイモントは、ポーランドのウッチ出身で、父親がオルガン弾きだったせいで(?)、終生、ピアノ音楽を憎んでいた、、、のだそう。面白いのは、ワルシャワの聖十字架教会の柱にショパンの心臓が収められているのだが、通路を挟んで反対側の柱に、レイモントの心臓が収められているという、、、。久山氏曰く「彼があれほど嫌っていた教会のオルガンと音楽家ショパンの心臓の傍らに置かれているということになります」だそう。

 若い頃のレイモントは演劇に興味を持って地方巡業の劇団に加わり女優に失恋して拳銃自殺を図ったり、心霊術の霊媒師をしたりもしていたとか。聖職者になることを夢見ていたことも。極めつけは、鉄道の保線係をしていたときに、駅長の奥さんと不倫してクビになり、奥さんはレイモントとの間にできた子を流産しているとか、、、とにかく、なんというかジェットコースターな生き様である。

 16歳で一念発起してワルシャワに上京した際には、既に書き溜めた短編を多く携えていたそうな。作家としてはもともと勝算があったということみたい。

 本作の原作『農民』はパリで書かれたもので、本作同様4部構成。残念ながら現在上梓している邦訳はないらしい。

 また、本作の監督ウェルチマン夫妻は『ゴッホ 最期の手紙』も監督していて、私はこちらは未見。そう言えば、予告編を見たことあるような、、、。面白そうだから見てみようかな。

 撮影手法は、『ゴッホ~』同様、ロトスコープによるペインティングアニメーション。なんと、のべ25万時間を制作に要したというのだから、気の遠くなる作業だったに違いない。冒頭書いた通り、その制作途中に、生成AIがあっという間に普及してしまったのだけれど、本作ではAIは一切使用されていないとのこと。

 なかなかインパクトのある映画だったが、やはり私には『執事の人生』に勝るものではなかったかなぁ。本作はでも、何となく劇場公開されそうな気がする。『ゴッホ~』の実績もあるし。あぁ、、、『執事の人生』、公開してくださいな、、、もう一度見たいです、是非是非!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケチ爺を演じていたのは「デカローグ<ある殺人に関する物語>」の殺人犯役だったお方。

 

 

 

 

 

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ノマドランド(2020年)

2021-04-08 | 【の】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv71711/


以下、公式サイトよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 リーマンショックのあおりを受けて、長年住み慣れたネバダ州の住処を失った60代のファーン。彼女はキャンピングカーにすべての思い出を詰め込んで、車上生活者=現代のノマド(遊牧民)として過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを決意する。

 行く先々で出会うノマドたちと心の交流を深め、一日一日を懸命に乗り越えながら、誇りを持って生きる彼女の自由な旅は続いていく。

=====ここまで。 

 アカデミー賞最有力候補だそうな。


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 アカデミー賞って、いつも3月くらいじゃなかったっけ?? と思ってちょっと調べたら、やっぱりここでもコロナの影響だったのですね。再延期とかいう噂もあるらしいけれど、リモートでやりゃええやん、と思うのですが、どうするんですかね?

 毎年、アカデミー賞なんて、、、と思いつつも一応チェックしてしまう小心者。本作と『ミナリ』、あと『Mank/マンク』が気にはなる。確か『Mank/マンク』は昨秋、渋谷で期間限定で公開していたけれど、見に行きそびれました。ネット配信が主なんですか?? まあ、よく分からんけど、いずれ見たいと思います。

 本作も、平日の昼間に仕事そっちのけで『ミナリ』とハシゴで見に行ってまいりました。話題作でも、劇場はガラガラでした~♪

 ……で、感想ですが。

 うぅむ。次回に感想を書くつもりの『ミナリ』と同様、本作も、ザ・ビンボー映画。昨年オスカー受賞の『パラサイト 半地下の家族』もビンボー映画だった、そう言えば。

 でも、本作は、『パラサイト~』みたいにぶっ飛んではいなくて、何かこう、どよ~んとした感じが残る。フランシス・マクドーマンド演ずるファーンは、自らの意思でノマド生活を続けているので、悲愴感はないし、ノマドの仲間たちも同様である。けれども、じゃあ幸せそうかというと、そうは見えない。

 この映画は、見て、作品自体を云々するというのではなくて、見て、自分の生き方を見つめ直す作品なんじゃないかしらん。生きるって? これからどーすんの? みたいなことを、嫌でも考えさせられる映画だと思う。老いて、死ぬまで、どう生きるのが幸せなのかね? 私も、もうそういう問題が他人事ではない年齢になっているので、時折そういうことは考えるけど、まあ、分からん。先のことなど、1年先、、、どころか、1か月先だって分からん。

 ファーンは、年金をもらおうと思えばもらえるみたいだけど、それは拒否して、アマゾンの倉庫で季節労働するなどして収入を得ながら、放浪生活を続ける。実の姉が少し離れた所でまあまあ恵まれた生活をしていて、「一緒に暮らそう」と言ってくれるが、それも拒否する。ファーンに好意を寄せるそこそこ裕福そうな爺さんがいて、その人も一緒に暮らそうと言ってくれるが、それも拒否する。

 彼女が拒否する理由は、亡くなった夫と暮らした土地から遠く離れた所には行きたくない、というもの。でも、夫と暮らした土地はもう、人が住めない、町ごとなくなってしまっているのだ。リーマンショックがなくて、その町に住み続けられれば、彼女は幸せな老後が送れたのか? それは誰にも分からない、けど、きっと送れていたんだろう。

 私は、人生なんて成り行きで、行き当たりばったりで行くしかないと思っているし、これからも多分、そういう人生だと思うが、それでも、本作で描かれているようなノマド生活は多分ムリだと思う。やっぱり、布団で足を延ばして寝たい。狭くても良いから、動かない家が良い。トイレも屋内で水洗が良い。風呂もちゃんと入りたい。……という、みみっちいところで、どうしてもあのようなサバイバルに近い生き方は、わたしには厳しい。旅なら良いけど、生活だもんね、あれが。

 しかし、ファーンにとっては、それよりも、その土地を離れた所で落ち着いた生活をする方が厳しいんだよね。

 本作は、原作が社会派ルポみたいなんだが、それ故か、本作も現代アメリカの分断・貧困を抉るみたいに言われている様だけれど、あんましそういう視点で見る映画じゃない気がする。前述したとおり、ファーンの生き様を見て、自分のこれからの生き様を少し考える、どう生きて行きたいのかを自分に問い掛ける、そういう映画だと思う。

 あと、ものすごく現実的な疑問として、あんな車上生活をしていて、例えば、ヘンな人らに襲われたりだとか、事故に遭ったりだとか、そういう危険はないのかな、ということ。いや、多分あるにちがいないと思うんだけど。そういう点が全く描かれていなくて、ただただ牧歌的なビンボー放浪生活、、、みたいな描き方もどうなんだろう、とは思ったかな。

 でもまあ、これがオスカー最有力かぁ、、、と、ちょっと拍子抜けな感じは正直しましたね。DVDでも良かったくらい。

 

 

 

 

 

 

 

全般にちょっと退屈でありました。

 

 


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コメント (2)
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