北アイルランドのベルファストに派遣された若きイギリス軍二等兵士ゲイリー・フックは、現地のアルスター警察を補佐し敵対派の家宅捜索の護衛をすることに。敵対派を刺激しないため、軽装備で現地に入ったゲイリーたちだったが、アルスター警察の捜索は厳しく乱暴なもので、それに刺激された住民はゲイリーたちの部隊を取り囲み、暴動に発展してしまう。
そのどさくさで少年にライフルを奪われたゲイリーは、少年を追いかけて部隊からはぐれてしまった挙句、反対派の過激集団に命を狙われ逆に追いかけられることに。ゲイリーは、逃げ惑ううちに、反対派の街中で完全に迷子になってしまう。どうにか追っ手をまいたものの、果たして彼はこの敵の巣窟の中から逃げ出せるのか……!
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アイルランド紛争の映画は、敵味方が入り組んでいるので、集中してみていないと分からなくなるんだけれど、本作もそうでした。99分の間中、ずっと緊張を強いられる。
まあ、とにかく、もの凄い臨場感です。カメラワークとか、あんまし詳しくないけど、凄いのです。よく撮ったなぁ、と感心します。ゲイリーが迷子になることになった最初の逃走シーンですが、細い路地をあっちへ曲がりこっちへ曲がりするんだけど、もうこれがドキドキものです。敵もすごいしつこく追いかけてくる。怖いのなんの。逃げるゲイリーは丸腰ですからね、なんつっても。追っ手は拳銃持っているんです。
途中、親イギリス派の少年が助けてくれて、その少年とのささやかなふれあいで、ほんの少しホッとする時間もあります、一応。
が、しかし、そんなのは一瞬で吹き飛ばされてしまう。そう、まさにゲイリーと少年のいたパブは、大爆破に遭ってしまう、、、。さっきまで元気いっぱいだった少年の体は、、、。
ゲイリーも脇腹に深い傷を負い、気を失って倒れているところを助けたのが、カトリック派の元衛生兵の男エイモンとその娘。敵の本拠地の、しかもど真ん中のアパートに図らずも入り込んでしまったのでした、ゲイリーは。
・・・で、あーなってこーなって、まあ、結局ゲイリーは助かるのですが、このエイモンに助けられてから、自分の営舎に戻るまでが、本当に恐ろしいのです。これは、ここで説明してもほとんど意味がないので、実際に見るに限ります。
アイルランド紛争の映画を見ると、いつも思うのだけど、同じ国の人同士が殺し合うって、やっぱりちょっと想像を超えた話です。世界中には珍しくない話でしょうが、思想信条の違いが、縺れた挙句に殺し合いに、、、。本作を見ても、本当に、不毛そのものです。誰も何も得ることもなく、ただただ命を落としていくだけなのです。これこそ、不毛でしょう。
本作は、メッセージ性とかそういうものは一切前面に出ていません。ただ、ひたすらゲイリーの脱出劇を描いている「だけ」です。サスペンス映画、あるいはスリラー映画と言っても良いかも知れません。ネタとしてもいわゆる実話ものではなく、完全なフィクションだそうですし。だから、アイルランドの悲劇、みたいな感じは全然ありません。どっちに義があるとか、そういう描き方も全くされていません。ただただ、自分たちの主張のためにお互いがお互いの敵をやっつける、それだけです。だからこそ、より不毛感、虚無感に襲われます。
戦争(紛争)なんて、結局こんなもんだわ。背景? 理由? そんなもん知らんわ。殺らにゃ殺られてまうだけだがや(なぜか名古屋弁) ・・・みたいな。
あんまり予習しなくても分かりやすいとは思いますが、見ている間は集中力が必要です。どっちがどっちか、分かんなくなりそうなんで。見終わった後、どっと疲れるかもです。私は疲れました。
こんなの見せられると、饒舌な安倍談話が無意味に思える。
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