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以下、公式HPよりストーリーのコピペです。
=====ここから。
1983年夏、北イタリアの避暑地。
17歳のエリオは、アメリカからやって来た24歳の大学院生オリヴァーと出会う。彼は大学教授の父の助手で、夏の間をエリオたち家族と暮らす。はじめは自信に満ちたオリヴァーの態度に反発を感じるエリオだったが、まるで不思議な磁石があるように、ふたりは引きつけあったり反発したり、いつしか近づいていく。
やがて激しく恋に落ちるふたり。
しかし夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づく……。
=====ここまで。
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ジェームズ・アイヴォリーという名前は、もう何年も聞いていない気がしていたところ、今年、オスカーを、しかも脚本賞をゲットしたというニュースを聞いて、へぇ~、生きてたんだ、おいくつ? ……と思ったら、なんと89歳だって!! ひょえ~、一体どんなシナリオをお書きになったのかしらん、、、と興味津々で、劇場まで行ってまいりました。
◆アイヴォリー氏、健在。
少し前に『モーリス』(4K)を見ていたのもあるけど、これは、現代版「モーリス」やね! と思ってしまった。まあ、モーリスでいえば、クライヴがオリヴァー、モーリスがエリオ、、、?? いや、どちらもちょっと違うかな。
それにしても、89歳のアイヴォリー氏が書いたシナリオは、30年前の『モーリス』にひけをとらない美しさと瑞々しさで、というより、むしろ本作の方が、舞台が北イタリアの夏で明るいイメージがあるせいもあってか、若々しさを感じたくらい。もちろん、その一方で、『モーリス』と通じる部分も多々感じられ、アイヴォリー作品が好きな者としては非常に嬉しく思った次第。
やはり、人と人が惹かれ合い、恋に落ちていく紆余曲折を描くのが、アイヴォリーは非常に上手い。本作でも、エリオとオリヴァーが互いに気持ちを確認するまでに結構な時間を要しているんだけど、それが見ていて必然を感じさせられる。相手が同性であるが故に、なおのこと互いに慎重になるのも然り。音楽をうまく話に入れ込んで、登場人物のキャラや心情を端的に描いて見せるのも、アイヴォリーのお得意技。
本作は、『モーリス』同様、同性愛にスポットが当たりやすいが、これは男女を問わない物語に仕上がっているのも素晴らしい。同性愛がテーマの作品の場合、“これが異性愛だったらただのベタなメロドラマやん”と言いたくなる作品は多いけど、本作は、そういう感覚を見ている者に抱かせない。人を好きになるって、こういう痛みを伴うものだよなぁ、、、という普遍的なことが描かれていると思う。
原作者のアンドレ・アシマンがどんな人かゼンゼン知らないけど、まあ、きっと彼にも同じような経験があるのでしょう。エリオのお父さんは、アシマンの実父がモデルだそうで、終盤、エリオにお父さんが“恋の痛み”について話すシーンが秀逸なのだけれど、あの話の内容は、アシマンの実父が話したことなんだとか。あのシーンは、本作のキモといってもいいだろう。アシマンが言いたいことは、あのお父さんのセリフに凝縮されているのだと思う。アイヴォリーも、あのシーンを本作のハイライトとしてシナリオを書いたに違いない。
◆現代の貴族。
本作は、設定が1983年となっていて、エリオ君は、私よりちょこっとお兄さんになるけど、ほとんど同世代と言って良いわけで、1983年時の自分とのあまりのかけ離れぶりに衝撃を受けてしまった。私が、やれ夏期講習だ、やれ宿題だ、やれ模試だ、、、と、ジメジメした猛暑の下で這いずり回っていた頃、エリオ君は、あの爽やかなイタリアの美しい青空の下、英語とフランス語とイタリア語を自由に駆使して、文学を論じたり、作曲したり編曲したり、セックスしたり、同性との恋を経験したり、、、って、こういう文化的レベルの差って、もうどーしよーもないわね。
そりゃもちろん、日本でも、エリオ君みたいな夏休みを過ごしていた若者はいただろうし、アメリカ人の若者がみんなあんな夏休みを過ごしていたわけじゃないのは承知の上だけど、言ってみれば、エリオ君の家庭は現代の“貴族”だわね。お父さんはもともとアッパーのインテリ。お母さんは美しくて、何カ国語も自由に話せて教養もあって、家事なんか一切しなくて、美味しいモノを食べて、夫と楽しくハイソな会話を楽しんで、、、という生活がアタリマエであり、優雅そのもの。……そんな両親の下に生まれたエリオ君が、あのように優雅な夏休みを送るのは、これまたアタリマエなのよね。
どこかヨーロッパの雰囲気を感じさせる一家に加わるアメリカ人青年のオリヴァー。彼は、美しくて育ちが良さそうだけど、どこから見てもアメリカ人。日本人の私の目で見ても、彼がヨーロッパの現代の貴族には見えない。これがミソだよね。
私は、エリオが先にオリヴァーに惹かれたのかと思っていたけど、中盤、オリヴァーは最初からエリオが好きだったと言うのを聞いて、ちょっと意外だった。というか、2人ともお互いに最初から惹かれ合っていたのだと思うな、多分。バレーのシーンで、私も、オリヴァーがエリオにモーションを掛けたのは分かったけれど、その後のエリオのリアクションが、何だか可愛かった。明らかに戸惑っており、もうこれでキマリ、って感じのシーンだった。
初めてキスした後も、一気に怒濤の流れになるわけではなく、微妙な押し引きがあり、ううむ、、、という感じだったんだけど、ようやく2人が互いに感情をぶつけ合って結ばれたときは、何だかホッとしたよ、オバサンは。あー、やれやれ、良かった良かった、みたいな。
やはり、この辺も、貴族的というか、品があるなぁ、と。たとえ、エリオが桃を使って自慰行為をしようが、旅先でエリオがゲロった直後にオリヴァーがキスしようが、何かこう、、、品性を汚さない一線がしっかり守られているのが、私はすごく良いなぁ、と思った。これは、アッパーな人たちを描いているから、というだけでない、作り手の矜持みたいなものだろう。恋愛を真摯に描くと、こうなるんだと思う。
そして、やはり、本作も『モーリス』同様、片方が女性と結婚することで、2人の関係に強引に終止符が打たれる。切ないなぁ、、、。同じ同性愛でも、女性同士の恋愛を描いた『キャロル』は、(多分)ハッピーエンディングだったけど、男性同士の場合は、やはりどちらかの結婚にてジ・エンドとなってしまうものなのか、、、。
本作には、続編があるかも(?)とのことで、……というか、原作は30年後が描かれており、この後、世界的にエイズが社会問題化していくことなども盛り込まれているらしい。
◆その他もろもろ
エリオ君を演じたティモシー・シャラメは、なんとなくあの『ベニスに死す』のビョルン・アドレセンを思い出させる、、、と思ったんですけど、どーでしょう? ゼンゼン違う? 何となく中性的な感じとか。本作の撮影時、22歳だったとのこと。17歳に十分見えたのが凄い。非常に難しい役どころだったと思うけど(ビョルン・アンドレセンみたいに、黙って佇んでりゃ良い的な役じゃないからね、、、)、鮮烈な印象を残す演技で、これはこれから引っ張りだこになるかもねぇ。美しいけど特徴がある顔なので、ビミョーかもだけど。
オリヴァーのアーミー・ハマーは、背も高くて美しいし、品もあるしで、非常に良いと思うんだけど、、、アーミーファンの方には申し訳ないんだけど、24歳の役にはちょっとオッサン過ぎる気がしたんですが、、、。なんつーか、遠目のショットが、どう見ても24歳ではないオッサンのシルエットなんだよね。短パンも、オッサンなら似合っているけど、24歳の青年ならオッサンぽくてダメだと思うし、、、。あと、一番ヒドかったのはダンスシーン。スローな音楽はまだしも、アップテンポなダンスを見せるシーンでは、明らかにその動きがオヤジ。……マズイでしょ、あれは。
彼は、TVドラマ『デスパレートな妻たち』に出演していたとのことで、彼の出演シーン、見直しちゃいましたよ。当時、二十歳くらいでしょうか。なるほど、二十歳のアーミー・ハマーは、二十歳っぽい青年でした。きっと、彼の24歳は、本作のようなオッサンではなかったはず。24歳という年齢設定でないとダメだったのかなぁ。実年齢の30歳くらいでも良かったんじゃないの? 30歳のオッサンが17歳の少年に、、、って犯罪か? だったら、エリオ君を24歳にしちゃうとか。
あと、、、本作でケチをつけるところといえば、『モーリス』同様、出てくる女性の描写が、エリオ君のお母さんも含めて、杜撰だってことかな。キレイだけど、それだけ、みたいな。本作はあくまで、エリオとオリヴァーの話であって、出てくる女性は都合良く配置されているだけ、ってのがヒドいといえばヒドいけど、そもそも、男の同性愛モノ=男尊女卑的思想がベースにある話なんで、この辺は致し方ないところか、、、。
まあ、ケチを付けると言えばそれくらいで、、、。こういう作品こそ、映画にする意味のある作品、良い映画の要素を全て備えた作品、と言うのだと思う。何度でも見たいか、と言われると、そこまででもないけれど、見ておいて損はない映画だと思います。
ハエがぶんぶん飛んでいる、、、
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