作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv85163/
以下、公式HPよりあらすじのコピペです。
=====ここから。
デンマーク人の牧師ルーカスは、植民地アイスランドで布教の旅に出る。任務は、辺境の村に教会を建てること。
しかし、アイスランドの浜辺から馬に乗り、陸路ではるか遠くの目的地を目指す旅は想像を絶する厳しさだった。
デンマーク嫌いでアイスランド人の年老いたガイド・ラグナルとは対立し、さらに予期せぬアクシデントに見舞われたルーカスは、やがて狂気の淵に落ちていく。瀕死の状態で村にたどり着くが……
=====ここまで。
アイスランドが舞台。制作は、デンマーク、アイスランド、フランス、スウェーデン。
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アイスランド映画、、、というと、『LAMB/ラム』(2021)とか、『隣の影』(2017)とか、よく言えば個性的、ぶっちゃけヘンな映画しか思い浮かばないのだけれども、もちろん、ヘンな映画は誉め言葉です。大・好・物!!
なので、アイスランド映画と聞くと、とにかく見てみよう!という気になってしまい、本作もチラシを見たときから「ゼッタイ見るぜ!」と思っていたので、公開直後に劇場まで行ってまいりました。予想を超えるヘンっぷりでありました♪
◆ヤなヤツでも聖職者になれる。
ルーカスがね、、、ゼンゼン応援出来ないんだよね、見ていて。困難続きのアイスランドの道行なんだけど、あんだけ困難続きの主人公だったら、大抵は「頑張れ!」って思うじゃない、観客としては。……思えないんだ、これが。
いや、ルーカス君は、かなり真面目に使命感に燃えている。死にそうになりながらも、「もう帰りてぇ~」とか神に祈りを捧げつつ弱音を吐きながらも、でも、教会建設をしなければ!という気持ちは伝わって来る。それなのに、どうも“いけ好かない”んである。
というのも、な~んか感じ悪いんです、ルーカス君。明らかに植民地を見下しているのが端々に感じられ、アイスランド語を覚えようともしないで通訳頼み。んで、やたら大荷物の中に積んであるカメラを時々取り出しては、アイスランドの荒涼とした風景を写真に撮ることを繰り返す。
が、悪いことに、この頼みの綱の通訳が、ルーカス君自身の無謀な決断により溺れ死んでしまい、彼は現地の人たちとのコミュニケーション手段を失うのだ。色々アホやなー、、、としか、、、。
いくらガイドのラグナルとはソリが合わないとはいえ、あんな上から目線の人間じゃあ、植民地とか関係なくダメでしょう。
ルーカス君は通訳を亡くした後も、基本姿勢は変わらないまま、挙句の果てには衰弱して死にかける。いっそ、あのまま死んだ方が彼は幸せだったかも。
一命をとりとめ、いざ教会を建てよう!!となって、現地の人たちが工事をしていても、ルーカス君、一切手伝おうとしない。傍観者。その間に、彼を敷地内の小屋に寝泊まりさせてくれているデンマーク人(入植者ね)の娘と寝ちゃうし、何だかなぁ、、、である。
トドメは、ソリが合わなかったガイドのラグナルを殺しちゃうんだよー。おいおい、、、。
その前にラグナルに執拗に「自分の写真を撮ってくれ」と言われたことにイラついて、ラグナルがデンマーク語を話せないのをいいことに「そんな見苦しい顔は撮りたくない!能無しのブタめ!!」とデンマーク語で暴言を吐いた挙句、実はラグナルがデンマーク語を解していたと知り慄然とする小心者振りをさらけ出す。しかも、ルーカスの馬をラグナルが殺したと知り、カッとなって、、、って感じで、およそ聖職者にあるまじき行動。
教会は建ったのか? ええ、ええ、建ちましたよ。でもね、、、ルーカス君、自身の行いのツケを払うときがやって来てしまったわけよ。残念!
◆傲慢な人間の末路は、、、
竣工したばかりの教会でミサを行うルーカス君。しかし、その最中に赤ん坊が泣きだすわ、外では犬が執拗に吠えるわで、まったくミサに集中できない。すると、ルーカス君、なんとミサの祈りを勝手にやめて、犬を追い払おうとしたのか教会の扉を乱暴に開けて外に出る。で、犬を追い払おうと足を踏み出した途端、ぬかるみに足を取られてすっ転ぶルーカス君、、、その顔には、真っ黒な泥がべっとり、、、。
その泥まみれの顔は、さながら、ルーカスの徳の無さを映しているかのよう、、、なんと皮肉な。
そんな姿ではミサは続けられないと悟ったのか、ルーカス君、そのままミサをすっぽかして出奔! なんなんだ、コイツ、、、。
結末は、、、、ここには敢えて書かないけれど、私としては納得でしたね。唐突な感じもあるけれど、彼には似合いの末路だと思った。
こんな冷徹なシナリオを書いたのは、監督でもあるフリーヌル・パルマソンというお方でアイスランド人。でも、映画製作の勉強はデンマークでしている。本作を撮った動機としては、自身の2国間に股裂き状態となったアイデンティティに根差して、「2つの国を対峙させたときに、それらがどのように姿を現すのか、探りたかったのです」と語っている。なるほどね、、、。
日本語話者が本作を見ても、デンマーク語とアイスランド語の違いはほとんど分からない。字幕は、区別して表示されている。
そんなわけで、ルーカスという、聖職者としては致命的に想像力を欠いた人間の酷過ぎる話なんだが、アイスランドの風景と相まって胸に迫る。
アイスランド、一度は行ってみたい。