作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv12461/
以下、映画.comよりあらすじのコピペです(青字は筆者加筆)。
=====ここから。
1940年。ベルギーとフランスの国境近くに住むラジオの修理工ジュリアン(トランティニャン)は、ドイツ軍の侵攻から逃れるため妻子とともに村を離れることに。
妊娠中の妻と子どもは列車の客室に乗せ、自身は家畜車で移動する彼は、ある駅で列車に乗り込もうとする若いユダヤ人女性アンナ(ロミー)と出会う。
初めは言葉すら交わさないジュリアンとアンナだったが、次第にひかれ合うようになっていく。
=====ここまで。
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渋谷のBunkamuraル・シネマで今月「没後40年 ロミー・シュナイダー映画祭」が開催されていました。チラシを見ていたので行きたかったのですが、何しろこの酷暑とコロナの異常な感染状況にすっかり行く気が削がれてしまいました。
渋谷駅からBunkamuraまで歩いて行くのを考えるだけで、うへぇ~~という感じになってしまうのですよねぇ(渋谷がそもそも苦手)。本当は、同じくBunkamuraで開催中の「かこさとし展」にも行きたいのだが、暑いのがどうにもダメな私には、あの場所は高い高いハードルです。うぅむ、、、でも見たいなぁ。
ロミー・シュナイダー映画祭は、好評だったのか、追加上映がされる様子。でも、これも折角だけど行けない(日程的に)。
本作は、長らくソフト化されていなかったようなのだけど、割と最近DVD化されたみたいです。ロミーとトランティニャンの共演でラブストーリーだと聞き、ラブストーリー苦手だけど、TSUTAYAで借りて見てみました。もう1か月くらい前に見たのだけど、全然記憶が薄れない素晴らしい映画でした。
◆ラストが全て。
いやぁ、、、見終わって呆然としてしまった映画は久しぶりかも。
ジュリアンとアンナは、列車を降りた後、一旦別れる(というか、アンナが無言で立ち去る)のだが、3年後、アンナはナチスに捕まって、彼女が持っていた身分証明書にジュリアンの名前があったことから、ジュリアンはナチスの支配下にあったフランス警察に尋問を受けることに、、、。
尋問する方も「何かの手違いで勝手に名前を使われただけでしょう」などとジュリアンに言う。しかし、この身分証明書は、実は3年前に列車を降りた際に、ジュリアンがユダヤ人のアンナを「私の妻です」と係官に言って、どさくさに紛れて作ったものだったのである。
警察は「もう帰っていいですよ」と言ってジュリアンを見送るそぶりをしつつ「せっかくだから女に会ってみますか」といってアンナをジュリアンの前に連れてくるのだ。
しばし緊張感が取調室に充満するが、ジュリアンが立ち上がり出口に向かう。そのまま扉を開けて部屋を出て行けば、ジュリアンは無事に今までどおり妻子と平和に暮らす日々が待っているだろう。……けれど、ジュリアンは、その扉の前で振り返る。ハッとするアンナ。2人の様子を見守る警察官。
ラストは、ジュリアンの手に片頬を覆われて泣き崩れるアンナのストップモーションでエンドマークである。この幕切れが痛い、、、。この後、2人がどうなるかは容易に想像がつくわけで、それでも敢えて、あそこでジュリアンが扉を開けて出て行かなかったことに、本作を見た多くの人は心揺さぶられたのではないだろうか。
◆なぜジュリアンは、、、
ラストまでは比較的淡々とした描写で、列車内のシーンが大半を占める。臨月の妻と子供は客車に乗せるが、席が足りずに、ジュリアンは貨車に乗らざるを得ず、そこでアンナと出会う。
アンナは最初から謎めいており、服装も黒いワンピースで頭髪もひっつめといたってシンプルなのに、何とも言えない色気を放っている。ジュリアンは、最初からアンナに心奪われていたようにも見える。
避難する列車の旅で皆どこか刹那的である。貨車内では飲んで歌ったり踊ったり、時には喧嘩したりと、一見どこにでもある人間の営みがそこでは展開され、このまま無事に目的地に着くかと思われたその手前で、突然、空からドイツ軍の機銃掃射を受けて、さっきまで踊っていた人々がバタバタ倒れる。生と死が入り乱れる。
そんな空気が支配している中で、普通の精神状態ではないだろう美男美女が乗り合わせれば、そりゃまあ、ああなるのも道理かな、と思う。一種の吊り橋効果というか。
しかし、本作の場合、吊り橋効果などという心理学用語が吹っ飛んでしまうあのラストである。3年経っても、ジュリアンのアンナへの思いは1ミリも摩耗していなかったということか、、、。
なぜ、妻子のあるジュリアンにとって、しかも子供は幼子でかわいい盛りのはずだが、妻子でなくアンナだったのだろう。……などという問いは野暮というか、愚であるのだろうけど、あの後、ジュリアンは拘束されるに違いなく、恐らくは殺されるか、よくて収容所送りだろう。収容所から生きて還れる確率は高くない。そう考えると、ジュリアンは、あの後、自分の行動を悔いた瞬間もあったのではないか?
本作には原作があるらしいが、原作はもっとドライな話で、エンディングも違うものになっているらしい。
◆その他もろもろ
ロミーは、エキゾチックな美しさ。
途中、井戸の水でジュリアンとアンナが身体を洗うシーンがあって、ロミーは下着姿になるのだけど、これがとっても素敵だった。決して若いピチピチのギャルではないけれど、実にキレイなのだ。セクシーという感じではない。むしろ、黒いワンピース姿のロミーの方がよほどセクシーだった。
トランティニャン、やっぱり若い頃はハンサムでイイ男だなぁ。『Z』での颯爽とした姿をまた見たくなってしまった。
ネットで感想をザッピングしたところ、ジュリアンとアンナについて“絶望的な愛”と書いている人がいた。“絶望的”な“愛”かぁ、、、とちょっと考えてしまった。2人に待っているのは死だから? この先2人が共に生きることができないから? アンナのあのラストショットは、絶望的な愛の涙ではないと思うな~。ジュリアンの自分への思いが命と引き換えのものだったことに対する喜びの涙だったと思うのよ。というか、少なくとも私がアンナなら、そうなる。自分が愛する人の、自分への思いを目の当たりにして、絶望的な愛だなんて受け止めない。そんな愛情を、生きている間に一度受ければ、もう死んでもいいじゃん、、、と思う。
95分と短めだけど、充実感を味わえる、でも、鑑賞後感はかなり重い映画だった。少し時間をおいて、また見たい。
原作を読みくなったので図書館で予約しました♪