ベラ・ブラウン(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)は、生後まもなく親に捨てられた過去が原因なのか、予測不能なことが大の苦手である。物の並べ方や食べ物の配置、スケジュール通りの行動などにこだわり、規則正しいことで安心するのだった。図書館司書をしながら、童話作家を目指して童話を書く毎日であったが、正直なところ、こんな融通の利かない性格の自分を変えたいとも思っていた。
そんなベラの最も苦手なものは、植物。植物こそ、予測不能な自然の営みであり、ベラにとっては恐怖でさえあった。今の部屋を借りる際、庭の手入れをすることも契約項目に入っていたが、全く契約を履行できていなかった。そのため、隣家の老人アルフィー(トム・ウィルキンソン)には文句を言われるわ、部屋のオーナーからは退去を命じられるわ、で、ベラはやむなく庭造りに取り組むことに、、、。
庭造りを通して、内気で変人のベラが成長して王子様に出会うという、激甘ファンタジー。
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劇場で予告編を見た際には、「潔癖症で、かなり屈折した女性が、ガーデニングに目覚めてその道を極めるハナシ」的なものだと思いました。病みかけた女性が、自分に合った道を見つけて、ひたすら極める(色恋ナシ)という、職業物語的な話は割と好きなので、見てみようと思い、劇場まで行きました。
……が。
◆シンデレラ物語
正直、中盤辺りから、「なんだかなぁ、、、」という感じになってしまい、後半は少々拷問でした。
後で気付いたんだけど、本作の宣伝キャッチには「ガーデニングから始まるシンデレラ物語」なんてのがあったのですね。これを知っていたら、わざわざ劇場まで行かなかったと思うなぁ。我ながら、読みの甘さにげんなり。
何が嫌って、このヒロインは、周りの人にことごとくお膳立てされて、直面する問題が勝手に解決されていってしまうところ。まあ、シンデレラ物語ならそうなるわなぁ、、、と納得したけど。
呆れるほどに予定調和な展開で、何のためにこの映画作ったんですか? と監督に聞きたくなる気分。ベラが追い詰められる状況が全くないんだもんね、、、。本作をぶっちゃけて説明すると、、、
植物が嫌いで庭を放置していたけど、優しいおじさんとおじいさんのおかげで、庭いじりの楽しさを知りました。ついでに、イケメンの青年にも出会って、結婚相手を見つけることも出来ました! ヤッタ~~!!
って感じかな。こんなん見て喜ぶの、結婚相手に白馬の王子様を待ち望んでいる“オメデタイ他力本願女”くらいなもんじゃないでしょーか?
◆ベラとG子
そもそも、ヒロインのベラのこと、あんまし好きになれないんですよねぇ。
ちょっとイラッとくるキャラだなぁ、と思いながら見ていたんだけど、特に、規則正しさが性癖であるベラが、遅刻常習犯という設定ってどーなの? 矛盾してないか? ……と思ったんだけど、見終わってから矛盾していないことに気付いたのでした。
それは、職場に似た様な女性がいたからです。仮にその女性をG子とします。G子は、ちょっと病的なまでの几帳面さなのに、毎朝始業時間ギリギリか数分遅れてくるんです。そして、仕事も遅い。そーなんです。几帳面さと、時間のルーズさは同居し得る性質なんです。
さらに、G子は、実はかなりの“面倒くさがり屋”であることも思い出しました。例えば、、、
① 職場の共用の紙タオルが切れていても、次の人のために補充しない。
② 自分がゴミ当番の日でも、誰かがやってくれないか様子見している。
③ 書棚の整理をする際に、古いものから順にまとめてしまうべきものでも、「どうせ使う可能性低いんだから、古い順に仕分けなくてもいいんじゃない?」と言う。
④ (③において)それどころか「いっそ捨てちゃえば」とさえ言う。
⑤ 自分が他部署の仕事を頼まれた際、第一義的な責任者は他部署の人なんだから、自分が「これはマズイ」と気付いたことにも、手を出したら面倒なことになるので見て見ぬふり、、、。
等々。……で、ベラにもそれを感じたんですよねぇ。つまり、ベラは、身も蓋もない言い方をすると、極めて要領の悪い人間で、でも、自分の興味のあることは突き詰めることを厭わない。そして、それ以外のことは、彼女にとって“どーでもいいこと”なんだろうねぇ。だから、庭が荒れ放題でも、自分は困らないし興味ないからいいや、、、と。
身近に、ヒロインのキャラを理解するのに最適な人がいたので、妙にベラに対してイラッとくることに納得してしまいました、、、ごーん。
◆その他モロモロ
本作を見て喜ぶのは、他力本願女くらい、と書きましたが、それだけじゃないですね、そういえば。
ガーデニングが好きな方は、楽しめると思います。私は、ガーデニングはあんまし興味ないけど、植物は好きなんで、アルフィーが庭造りや植物についてベラにアドバイスしてくれるシーンなどは、まあ面白かったかな。植物やガーデニングが好きな方は、もっと楽しく見られるんじゃないでしょうか。
あと、アンドリュー・スコット演じる、ハウスキーパーのヴァーノンが作る料理が実に美味しそうなんです。料理の皿が出てくるシーンも楽しい。
……でも、見所はそれくらいでした、私には。
ホント、ラストのラストまで予定調和というか、いがみ合っていたベラとアンドリューは仲良くなり、仲良くなったところでお約束、アンドリューは亡くなる。そして、実は、ベラの部屋のオーナーはアンドリューで、ベラに庭ごと部屋を遺贈する、アンドリューの家はヴァーノンに名義を書き換えるという、、、ベラとヴァーノンには、あまりにも分不相応すぎる棚ボタなオチに唖然としました。王子様はいらんけど、きれいな庭付きのステキな家を難なく手に入れられるなんて羨ましい。、、、ま、だからファンタジーなんですけど。
ベラを演じていたジェシカ・ブラウン・フィンドレイは、「ダウントン・アビー」のシビル役を演じていたお方。シビルとは大分イメージが違います。本作での方がキレイに見えました。
アンドリュー・スコットは、相変わらず上手いです。ベラにちょっと好意を抱きつつも、ベラの若い恋を応援する切ない役どころでした。エプロン姿が板についていて、さすがでした。
ガーデニングにご興味のある方はどうぞ。
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