★★★★★★☆☆☆☆
幸せのハードルが高い人、もっと言っちゃえば、幸せ感度の鈍い人、とも言えるけど、そういう人は、十分恵まれた状況にありながら、足りないところばかりを探して自らを不幸に導くために、いつまでたっても、どこまで行っても幸せを実感することができない、そこれこ正真正銘の不幸者と言える。
オトコ遍歴を重ねてのし上がっていく女性、というのを描く場合、上記のような女性像として描かれがちかと思うけれども、本作の主人公ダイアナは、ちょっと違うと思う。彼女も確かに、ちょっと幸せ感度の鈍い部分はあるんだけれども、どちらかというと、目先の快楽に弱いだけの、もっと言っちゃえば「頭の悪い女」なだけのような気がするのだ。
見る人によっては受け止め方が変わるかもだけど、ダイアナには打算的なものが感じられない。幼いころからちやほやされて育ったためか、ひねくれていないのである。その時その時で、自分の気の向くままに行動してしまう。先のことなど考えない。寂しいときに構ってくれる男が誘えば、着いて行っちゃう。王子様にプロポーズされて断っても、本命男に邪険にされたら、やっぱりあなたと結婚すると言ってあっさり戻っちゃう。
なので、あんまり嫌らしさを感じることなく、あらあら・・・、ってな感じで見ていられて気楽なもんである。最終的には公国の王女様で何不自由なく愛されて暮らすという、めでたしめでたしなエンディングで、よござんした。ただ、魅力的な女性とは、到底言えないけれど。ひたすら流されて生きている女性って、むしろイタい。王子様に見初められたからおとぎ話で終われたけれど、とんでもない詐欺師とかだったら、サイアクだよ、マジで。
というわけで、ストーリー的にはイマイチだけれども、本作にはそのほかに見どころが結構あると思う。まず、ダイアナを演じたジュリー・クリスティ。絶世の美女、というわけじゃないけれども、魅力的な美しい女性。ちょっとバカっぽいところを上手に演じており、素晴らしい。そして、不倫相手のロバートを演じるダーク・ボガード。正直、あんまし好きな俳優さんじゃないんだが、本作では、くたびれた、でも渋い魅力の残っている中年オヤジを見事に演じており、この2人の魅力で本作はかなり評価がかさ上げされたのではなかろうか。
そして、何よりイイのは、オープニング。かなりステキである。ジュリー・クリスティの出演作、他にも見てみようかな。