インドの超エリート工科大学に入学し、寮で同じ部屋になったランチョー、ファルハーン、ラージューの3人。この大学、学長が学生を勉強に追い立てまくって追い詰めることで、大学の国内ランキングを上げてきたのだった。
しかし、天才肌のランチョーは、そんな学長の方針に真っ向から疑問を呈し、飽くまでマイペースに学問を究める自由人を貫く。そんなランチョーに、ファルハーンとラージューも次第に影響を受け、学ぶことの本質と、生きることの意味、そして自分と正面から向き合うことを余儀なくされる。そんな2人が出した卒業後の進路は・・・。
そして、自由人ランチョーは、卒業後、あれほど仲の良かった2人の前から姿を消してしまう。彼は今どこに・・・。
学生時代から10年後、ファルハーンとラージューが、ランチョーを探す旅を通じて、過去と現在を往復しながら、彼らの青春絵巻を展開させる約3時間の長尺映画。
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日本で公開されたのは2013年です。もう2年経つのか・・・。実は、本作は劇場に6回見に行きました(リバイバル上映のギンレイも含めてですが)。それくらいハマってしまった作品です。当然、みんシネにも思い入れ満載のレビューを書きました。
本来なら、そこまでハマったのなら、10点満点の10点を付けそうなものですが、私はみんシネで9点としました。それは今も変わりません。なぜ-1点なのか。それをここでは書きたいと思います。
本作の素晴らしいところは、非常にベタになりそうなテーマを、しかも真正面から取り上げているにもかかわらず、まったく嫌みがなく説教臭くなく、ユーモア満載で、なおかつシリアスな面も描いているところです。
しかし、本作は一歩間違えると、かなり不愉快な映画になりかねない要素をはらんでいるのです。
例えば、ランチョーは、天才肌ですから、彼の持論である「成功するために努力するのではない。努力すれば成功はついてくる」が通る訳です。しかし、その他の学生は(エリート大学に入っている時点で優秀に違いないけれど)凡才ですから、そんなのはタテマエ論に過ぎないと分かっているのです。「寝言は寝て言え」ってやつです。そんな理想論を堂々と掲げて、ランチョーは、ファルハーンやラージューの生き方に口を出すわけですから、正直、ウザい奴と思われても仕方がないのです。
また、チャトゥルの晴れの舞台であるスピーチの原稿を改ざんした件では、改ざんした内容が倫理的にどうなのか、という点も引っ掛かります。正直、あそこでドン引きする人がいても不思議ではありません(私はギョッとはなったけれど、流しました。理由は後述します)。ヘタすりゃ、訴えられるレベルのものです。かの国でその犯罪が横行していることを思えば、笑えない、という人がいるのも当然の話です。
その他、3人のやらかす愚行が、あまりにもバカ過ぎるとか、迷惑すぎるとか、ラージューの自殺未遂も自業自得だとか、、、。他にも、なんだか上手く行きすぎでご都合主義っぽいとか、、、。まあ、突っ込みどころは満載です。
これらのことを私のセンサーもどこかで微弱ながら感じ取ったために、恐らく満点を付けるのをためらったのではないか、という気がします。他に10点を付けた作品と比べ、どうしても、10点を付けることができなかったのです。
特に、原稿改ざんについては、一瞬「は?」と、サーッと心が引いて行く感じになり掛けました。が、なぜ流したかというと、韻を踏んだ言葉遊びのひとつと解釈したからです。そして、実際、チャトゥルがスピーチしているシーンを見て、これは、世相に対する揶揄でもあると感じたからです。ま、これはかなり好意的に見て、の話です、もちろん。
じゃあ、逆に、そんなマイナスポイントがあるのに何で9点も付けるのか、ってことです。
これじゃ理由にならんと言われそうですが、正直なところ、私はこれを見て理屈抜きで“グッと来た!!!”のです。最初に見てエンドマークが出た時、劇場の椅子から立ち上がれませんでした。本作を見て「泣けた」という人もネットではたくさん見かけましたが、私は泣けませんでしたし、感動したというのともちょっと違いました。そう、みんシネに書いたとおり、もの凄い幸福感と昂揚感に襲われたのです。こういう感覚を覚えたのは、恐らく本作が初めてです。他の10点作品でも、こういう感覚は味わえなかったのです。これは、本作にしかない引力があるからだと思いました。
なので、その後、5回も劇場に、なんというか、催眠術に掛かっているみたいな感じで通っていました。一種のトランス状態でしょうか。本作を見るとそういうラリッた感覚になれた、んでしょうか。自分でもよく分かりませんが、とにかく、見終わるとまたすぐ、次が見たくなる、という感じでした。6回目を見ても、やはり7回目を見たいと思いました。
そして、アマゾンで予約していたblu-rayが手元に届き、早速見る気になったかというと、、、これが、なぜかそうではなかったんです。正直、見るのが怖いというか、実は、まだblu-rayの本編は見ていないのです。もう購入してから1年半経つというのに。特典映像は見ましたけどね。
10個作品の『リトル・ダンサー』もそうですが、やはり、あまりにも思い入れのある作品というのは、見るのに特別な心の準備が必要になってしまいます。『ダーティハリー』も、通算100回は見ていると思いますが、今は、見るのに勇気がいるようになってしまっているし、、、。見飽きたと思いたくないんですね、多分。そして、自分がそれらの作品に抱いている感覚を壊したくないのです、テレビで見ることによって。スクリーンで見て壊されるのなら、まだ諦めもつくのでしょうが、、、。
でも、そこまで、たかが(と敢えて書いちゃいますが)映画ごときで思い入れを持てる、というのは、またそういう作品に1本ならず何本も出会えているというのは、私は本当に幸せ者だと心から思います。そこまで振動させる心を持てていることも、良かったと思えます。何を見てもそこそこ、、、じゃ、あまりにもつまらないし、虚しいですから。
というわけで、本作は、ある程度好き嫌いが分かれる作品かと思いますし、押し付けがましいことを書くのも本意ではありませんが、でも、まあ見て損はない映画だと思います。
劇場で見た回数最多作品です。
(2位は『リトル・ダンサー』の5回)
(2位は『リトル・ダンサー』の5回)
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