★★★★★★★☆☆☆
本作は、公開時に劇場で見ている、、、けれども、ラストシーン以外はすっぽり記憶がなくなっており、それなりに面白かったと思って劇場を出た記憶はあったし、何より、その後にVHSビデオで見た同監督の『私家版』が良かったので、もう一度見たいなー、と思いつつ何年も経ってしまって、ようやく最近再見を果たした次第。
うーむ、こ、これは、何なんだ・・・。つーか、ニコラを演じるジャン・ピエール・ロリ、かなりのイイ男でないの。なんでこの人を忘れるかなぁ、アタシは。不覚だ、、、。そうそう、「味見役」だった。少し思い出したけれど、やはり9割がた忘れていたので、ほとんど初見と変わらない。
こういう、頭では「ヤバイなぁ」「マズイなぁ」と分かっていながら、心と行動が暴走してしまう、という経験はないけれど、すごく分かる気がするんだよね。良くない臭いがぷんぷんするものにどんどん絡め捕られていく感じ。引き返せないことが恐ろしいのに、進んで行くことにも快感を覚える、みたいな・・・? ニコラはフレデリックに人生そのものを絡め取られていく感じが肌で分かっていながら、引き返せないのだよねぇ。分かるわ~。こんな怪しい人がそばにいたら、誰だって怖いもの見たさで深みにはまるでしょーよ。たまたまアタシの周りに、こういうブラックホールみたいな人がいないだけの話。
だいたい、本作自体がまさにソレでしょう。冒頭シーンから、なにやら不穏な感じがぷんぷん。いきなり「味見役」だよ? おかしいでしょ、これ。でも、画面から目が離せない。もう吸い付いちゃう。ニコラがイイ男だから、ってだけじゃない、もちろん。フレデリックの変態ぶりも、まぁ、目が離せない一因だけど、もうそういう「何か」っていう次元じゃなく、本作の醸す異常さ、そのものでしょ、これは。
つくづく、何で記憶に残らなかったのか、不思議でしょうがない。たまにあるのだよね、こういう、再見するとキョーレツなのに初見時の記憶がほとんどない、という作品。なんなんだろうか・・・。
まあ、ラストは、ああなるしかないでしょう、そりゃ。そこはだから、意外性は全くないのだけれども、それでもこれは好きだわぁ。もしかすると、フレデリックは、こうなることを予見していたのかも。いえいえ、もっと言っちゃえば、殺して欲しかったのかも、ニコラに。自分の分身に。もう一人の自分に。
本作には、同性愛的な臭いが一切ない。ジャケやパンフの表紙だけ見ると、一瞬、ゲイモノかと思わせるが、全然ナイナイ、ゲイの要素。これは他者愛ではなく、究極の自己愛。フレデリックは自分しか愛せない男であり、究極のナルシストであり、だからこそ、自分を客観的に第三者として外から見たかったのだと思う。自分の姿は一生、自分じゃ絶対に見られないからね。ニコラなら、自分の分身として申し分なかったのだよね。見た目も中身も。
しかし、この監督は、なかなか素敵な作品を撮る人だなぁ。テレビ界上がりの人の様だけれど、このセンス、素晴らしいです。もう亡くなってしまったなんて、、、。もっと作品を見たかった!