ここ二、三日、小池真理子さんの小説世界
にとっぷりひたった。
神よ 憐れみ たまえ
十年の歳月をかけて紡がれた書き下ろし
長編小説という。
渾身の一作。
およそ600ページ、とてもとてもひと息
に読み通せない。
わたしの書くものなぞ、足もとにも及ば
ないと思う。
しかし、勉強になる。
はずせぬ用もある。
かみさんに用を言いつけられたり、畑で
育てているズッキーニやカボチャの世話
もあったり。
たびかさなる大雨で痛めつけられてはい
まいか、と夏草の生いしげるあぜ道を長
靴をはき、ゆっくり進む。
そうしている間も、わたしの心はずっと
彼女の描いた小説世界にとどまり続ける。
足もとがおぼつかない。
あやうく足を踏みはずし、堀っこに落っ
こちそうになった。
ネットが鹿の立ち入りを防いでいてくれ
ていたが、からすの侵入は阻止すること
はかなわない。
吹き出たばかりのズッキーニの赤ちゃん
がえじきになった。
後片付けに追われているうちに、いきな
りのスコール。
濡れねずみのようになって、家までたど
りつく。
夕刻、この日の授業が近づく。
窓を開け、黒板消しについたハクボクの
粉を落とそうと、それを板でたたきだし
た。
チチチ、チチチと、ふいに小鳥が最寄り
の屋根でけたたましく鳴いた。
どうやらなじみの鳥らしい。
えさの催促だ。
ちょっと待ってろや。
そうつぶやきながら、わたしは急いで階
段を下りた。
もう少しで終章にたどりつく。
彼女はどのように物語を終わらせるのか。
わくわくする。
にとっぷりひたった。
神よ 憐れみ たまえ
十年の歳月をかけて紡がれた書き下ろし
長編小説という。
渾身の一作。
およそ600ページ、とてもとてもひと息
に読み通せない。
わたしの書くものなぞ、足もとにも及ば
ないと思う。
しかし、勉強になる。
はずせぬ用もある。
かみさんに用を言いつけられたり、畑で
育てているズッキーニやカボチャの世話
もあったり。
たびかさなる大雨で痛めつけられてはい
まいか、と夏草の生いしげるあぜ道を長
靴をはき、ゆっくり進む。
そうしている間も、わたしの心はずっと
彼女の描いた小説世界にとどまり続ける。
足もとがおぼつかない。
あやうく足を踏みはずし、堀っこに落っ
こちそうになった。
ネットが鹿の立ち入りを防いでいてくれ
ていたが、からすの侵入は阻止すること
はかなわない。
吹き出たばかりのズッキーニの赤ちゃん
がえじきになった。
後片付けに追われているうちに、いきな
りのスコール。
濡れねずみのようになって、家までたど
りつく。
夕刻、この日の授業が近づく。
窓を開け、黒板消しについたハクボクの
粉を落とそうと、それを板でたたきだし
た。
チチチ、チチチと、ふいに小鳥が最寄り
の屋根でけたたましく鳴いた。
どうやらなじみの鳥らしい。
えさの催促だ。
ちょっと待ってろや。
そうつぶやきながら、わたしは急いで階
段を下りた。
もう少しで終章にたどりつく。
彼女はどのように物語を終わらせるのか。
わくわくする。