徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

天正風拵え

2014-09-03 02:51:50 | 拵工作
時間をかけてゆっくりと作り上げてきた拵えが完成しました!



手間も材料も鑑賞用の拵えと同等の仕上がりにこだわっていますが、武道用途の外装です。
この度は、天正拵えの掟に乗っ取って製作しました。



刀身は幕末以降近代に作られたお刀で、身幅が広く大切っ先の体配で、先反りが付いた一見変った形状をしています。龍の刀身彫りが見事で、白鞘の状態から工作を開始します。
コストを抑えるため、鞘は白鞘を加工して製作し、漆塗りは当方にて実施しました。(漆塗りは、本業ではないので材料費と実費程度・・・)



鍔と目貫は、オーナー様の持込みです。目貫は柄前に組み込む前に当工房にて加工を施しました。
(目貫加工時の記事はこちら!→・「鍍金加工」(2014/08/17)



柄成りは、試斬などに多用するため強度を意識し立鼓を浅くとりました。長さは、8寸5分強とし、刀身の重さをカバーするため若干肉厚に仕上げています。



鮫皮は、一枚巻きに漆で塗り固めて、鞘とのコントラストを調整し、柄糸は、鹿革を何枚もつなぎ合わせてつなぎ目を隠すために片摘みで巻きあげました。



鞘は溜塗りですが、いまいち締まらないのでアクセントを鯉口部とコジリ部に施しました。鞘形状は、差し裏の腰に接する部分の肉を落とし、長時間の帯刀にも疲れが来ない様に仕上げました。

外装は、刀身のスペックを最大限に生かし、かつ使用者に合わせた調整や使用方法に則した加工をすることができる唯一の装置です。
そのため、当工房では、長期間にわたる対話を繰り返しながら外装製作に取り組んでいることが最大の特徴です。

試斬用刀剣の外装修復

2014-09-03 01:54:51 | 拵工作
鞘の修復を期に、鯉口周辺の補強と塗り直しを施しました。



元々の鞘は、安価な石目塗りの規格鞘でしたが、鯉口を補修するために銅で鯉口金具を作製し、周囲を鮫皮で補強しました。



その際、鯉口周辺を鮫皮で一枚巻きにして、差し裏中央部で合わせるのがポピュラーな工作法ですが、せっかくなので鮫皮を均等サイズに切りだして、グルグルと巻き付けてみました。
これで、つなぎ目から剥がれるなどの綻びは発生しないでしょう。

また、石目塗りのウレタン塗装を削り落して、漆で呂色に塗り直しました。

(鞘修復時の記事はこちら!→・「鞘の修理・加工・補強」(2014/08/27)

後は納品を待つのみ!