徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

刀剣修復

2015-05-22 03:01:23 | 刀身研摩
錆身刀身の修復が完了しました!



この度のお刀は、痛みの酷い軍刀拵をまとった見事なまでの?錆身でした。


・当初の状態(Before)

付属する軍刀拵は、戦火による焼失が酷い状態で、鞘はコジリ周辺で折れて柄頭は紛失、それでいて戦後70年ちかく全くの手付かずといった様相を呈しています。せめて油だけでもひいてくれていたならば、ここまでの状態にならずに復活させられたのですが、既に修復は難しい状態です。また、茎と鍔だけがピッカピカに磨かれており、もはやお刀としての価値を見出すことはできません(茎の錆は、刀剣鑑賞と鑑定の上で、大変重要な要素です!)。
拵えの状態から、焼き刃が鈍っている状態(俗にいう焼け身)の可能性を感じましたが、砥石を当てると刃紋が浮き出てきました!


・修復後の状態(After)

今回は奉納のためということで、修復をお受けしましたが、本来であれば刀剣の寿命が尽きているため修復をお勧めしない一振りです。また、奉納が目的ですので、通常の修復とは根本的に工作内容が異なります。できるだけ研ぎ減らさないことに集中しましたので、深い錆や傷、埋金の剥離などはそのままに仕上げました。



また、鑑賞が目的ではありませんので、化粧も必要最低限に仕上げました。



研磨の結果、刀身は無銘なれど、江戸時代・寛文期の作品です。生まれは良いお刀ですが、残念ながら70年間の朽ち込みを補修することはできませんでした。


・茎の錆は決して除去しないでください!(Before)

最後に、近年いたずらされた茎を修復して、刀身の修復はおわりです。


・一度磨かれた茎は、二度と元には戻りません(After)

ハバキは、できるだけ安価にて製作するため、古いハバキを一度分解してこの刀身にあわせて再度製作しました。これにより材料費を節約します。

後は、若干の調整をおこなって終了です!