日向ぼっこ残日録

移り気そのままの「残日録」

夭折の天才を惜しむ

2006年09月12日 12時29分32秒 | 残日録
「姫路城の秘密」の書きかけ項目に「松岡青羅」がありますが、俳諧と言えば、夭折の天才歌人「芝不器男」が気になります。時代の変わり目には途轍もない「天才」が現れますが、なぜか夭折が気になります。瀧廉太郎(1879~1903)24歳。樋口一葉(1872~1896)24歳。青木繁(1882~1910)28歳。喜志康一(1909~1937)28歳。・・・・限りなく天才がいました。
芝不器男(1903~1930)も江戸(封建)から明治(文化の夜明け)に産まれました。愛媛県北宇和郡明治村松村。田舎ですが父親も文学が出来たのでしょう。「不器男」は本名です。kunio_nikkiの大好きな「論語」の「子曰 君子不器(し、のたまわく。くんしうつわならず)」から名づけたようです。(孔子は言われました。君子(立派な男子)は、器の形に沿うようではいけません。一つではなく、その他の方面でも才能を発揮できなくては)1903年は明治36年です。大正9年、松山高等学校(もちろん旧制)入学。大正12年東京帝国大学入学、帰省中に関東大震災、退学。大正14年東北大学に入学、これも故郷で俳句に打ち込み退学。大正15年、「ホトトギス」に投稿した「あなたなる 夜雨(よさめ)の葛(くず)のあなたかな」が、虚子の絶賛をうける。昭和3年結婚も病を得て昭和5年夭折。27歳でした。
青春の香りを残す叙情豊かな句風で、多くの歌人の期待を集めるも惜しくも夭折。
どんな句を詠んでいるんでしょうか。
寒鴉 己が影の上に おりたちぬ
鴨うてば とみに匂ひぬ 水辺草
筆始 歌仙ひそめく けしきかな
谷水を 撒きてしづむる どんどかな
常闇の 空を照らせる 冬田かな
風たちて 星消えうせし 枯れ木かな

夭折と言えば10代にその才能を発揮したにも関わらず、多くの天才が自殺という手段で夭折した。
藤村操(1886~1903)―「巌頭之感」遺し、華厳の滝に投身自殺
県満天雄―十六歳の筆と思えぬ早熟さ
宮田千重子―看病の教師が励まされる
清水澄子(1909~1924)―15歳没。文壇からも注目された天才詩人
奥居頼子(1910~1924)―14歳没。天与の空想力と詩魂
山川弥千枝(1918~1933)―15歳没。文才惜しんだ川端康成
平山千代子―瑞々しい感受性と同情心
千野敏子―「真実」を追求した魂
原口統三(1917~1936)―16歳没。詩稿、悉く焼き捨てる
中沢節子―服毒自殺した哲学少女
長沢延子(1932~1949)―服毒自殺ー終末論としての弁証法が自殺を招く
蛭田昭―数学に没頭した挙句の果てに
加清純子―天才少女画家、阿寒に果つ
松尾太一―社会改革めざした誠実な魂
福本まり子―鬱病と差別に苦しんで
小池玲子―死への誘惑、断ち切り難く
山田かまち(1960~1977)―感電自殺ー学歴社会批判が同世代の心つかむ
井亀あおい(1960~1977)―投身自殺ー愛されたかった文学少女