黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

インフルエンザにかかった時に

2014-10-21 09:41:13 | 健康・病気

インフルエンザにかかった時の対応
 ふだん健康な人を対象に話をします。ヨーロッパへ行けば、Stay at home つまり家にいて下さい、と言われるようです。家にいれば、安静も、就床も必要なく、本人のしたいようにしていればよいのです。熱ければ冷やしてよいですが、本人の希望でして下さい。冷やすのは、動脈が浅い場所にある頚部(頸動脈)や脇の下(腋下動脈)などを冷やすとよいです。冷えピタは、解熱剤ではなく、蒸発熱を誘導して下げるので、一時的にはひたいの温度は下がり、気持ちが良いです。いずれも解熱剤を使わずに、気持ちよくしてあげる方法です。寒気がする時は、まだ熱の上昇が足りないので、寒気で震えさせて、その筋肉の運動で熱を産生する為になるのですから、温かくして下さい。家にいるもう一つの理由は、外へ出てウイルスをまき散らさないためです。水分を十分に摂り、楽になるようにしてあげればよいです。腹部を温めるのは、腹部が冷たくなっている時で、お腹(主に腸)が悪い時になります。お腹が冷たくなって、温めるのが気持ちがよくなれば、してよいです。嫌がればやめましょう。9歳以下では下痢をすることがあり、その時にお腹が冷たくなることがあります。それ以外はありません。

 欧米では、インフルエンザには、ワクチンもタミフルも要らないと言いましたが、近年アメリカがワクチンを勧め出しました。その理由は分かっていません。

次に、今年作った私の診療所の患者さん向け説明書を載せますから、参考にしてください。対象は、主にいろいろな病気を持った高齢者が多いので、その点が配慮してあります。 

インフルエンザ
 

今年のインフルエンザは、従来型がほとんどと予測されています。2009年に流行した新型インフルエンザは、以前のソ連型、香港型と同じく、そのまま居ついていて、昨年と変わりはありません。例年は、突然A型が流行し、2~3週間でピークに達し、2~3ヶ月で急速におさまり、その後B型が流行することが普通です。地域的流行があり、通常1~3年ごとに地域的に流行します。 

インフルエンザの流行は、子どもの発熱を伴う呼吸器疾患の増加で始まり、続いて成人のインフルエンザ様疾患が増加し、肺炎、うっ血性心不全や慢性肺疾患の悪化などの入院患者の増加が続きます。インフルエンザの罹患率は流行ごとに10~20%です。一般のA型インフルエンザウイルスは、本来は毒性が低く、重篤な症状を引き起こさないことが示唆されています。B型は広がりにくく、重症度も低いです。大流行はA型により数年に一度発生します。
 

インフルエンザの典型的症状 

1.頭痛、発熱、寒気、筋肉痛、だるさなどの全身症状で始まり、次いで症状はさまざまで、軽いかぜ様症状から、呼吸器症状が少ないが重篤な衰弱を示す状態まで幅広いのです。発病後24時間以内に急激に上昇した38~41℃の発熱は、一般にその後2~3日で徐々に解熱しますが、時に1週間発熱が続くこともあります。頭痛は頭全体のことも前頭部のこともあります。筋肉痛は全身に起きり得ますが、下肢と腰で最も多く、関節痛も出ます。
 

2.呼吸器症状は、熱が引く頃からひどくなることがあります。のど痛と1週間以上続く咳があり、胸に不快感を伴うことも多いし、眼症状も出ることがあります。
 

3.合併症のない場合は、激しいのどの痛みにもかかわらず、のどには所見はなく他にはほとんど異常は見られません。明らかな呼吸器症状が見られる場合は、肺合併症を疑われます。
 

4.合併症のないインフルエンザでは、急性症状は2~5日で改善し、1週間で回復しますが、咳は1~2週間続くこともあります。下痢をしませんが、5歳以下では下痢をすることがあります。大人や8歳以上で下痢をしている人をインフルエンザだという医者もいますが、別のウイルスによる胃腸炎でしょう。
 

5.特に薬を飲まなくとも、時間さえかければ、自然に治ります。ご希望の方は、抗インフルエンザ薬を出します。期間を短縮しますが、副作用もありますから、気を付けて使って下さい。内服と吸入があります。解熱剤は、病気を長引かせるので、お勧めしません。
 

合併症 

 65歳以上の高齢者や、心臓病、肺の病気、糖尿病、腎臓病、免疫抑制剤使用中などの人や妊娠中や乳児に合併症のリスクが高いです。肺炎(8割は細菌性かウイルスとの混合性)、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息の悪化があります。抗生物質は、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの細菌性の合併症の予防に使います。 

頭痛、体の痛みには、解熱鎮痛剤の中で副作用の少ないアセトアミノフェン(カロナール)をつかって下さい。18歳未満の小児には、解熱剤を使うとライ症候群になることがありますから、使わないで下さい。急性期には安静にして水分補給を十分にします。重症であった場合は、回復後徐々に活動性をあげていきます。
 

治療 

 インフルエンザに対しては、タミフル(オセルタミビル)5日間内服、リレンザ(ザナミビル)5日間吸入、イナビル(ラニナミビル)1回吸入、ラピアクタ(ペラミビル)15分以上かけて点滴静注1回、などがあり、発症後2日以内に治療を開始すれば、病気の期間を1~1.5日短縮します。抗インフルエンザ薬の副作用には、どの薬もすべてタミフル同様に、まれに神経精神症状を引き起こし、意識が混濁したり、異常行動をとったり、幻覚幻聴がでたりする副作用があります。それでタミフルは、10代には控えるようにと言われ、他の薬でも未成年では2日間は目を離さないようにとされています。 

 通常65歳以上の高齢者とハイリスクの人には、治療を勧められていますが、厚生労働省の見解でも、健康な成人では治療を控えることがあるし、また発病48時間後の場合には、効果が期待できないと言います。
 

ワクチン 

 日本では生ワクチンはなく、不活化ワクチンで、前のシーズンに流行し、今年も流行が予測されるインフルエンザ株から作られます。最新の流行株でないと効果はありません。 

 不活化ワクチンは、ワクチンウイルスと流行株が同じかまたは非常に似ていれば50~80%の効果が期待されると言います。感染を予防することはできませんが、高齢者の死亡率、入院率を減らす効果があるというのが、アメリカ行政当局の見解です。 

 現在は、65歳以上の高齢者とハイリスク(心臓病、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息などの肺の病気、糖尿病、腎臓病、免疫抑制剤使用中などの人)に接種が勧められています。 

過去の前橋の5年間のデータで、小中学生への有効性は否定され、インフルエンザワクチンを受ける人がいなくなりました。それに替わって高齢者に有効と言われるようになり、高齢者に接種するようになりました。厚生労働省の公式見解では、子どもへの有効率は20~30%といいます。健康な子どもには接種する必要はありません。 

 インフルエンザウイルスは、種族維持の本能で、ある程度繁殖すると自己規制して、繁殖を止めてしまい、自然に治ります。かかった人が歩きまわり、ウイルスをばらまいて流行してしまい、しかも毎年少しずつ変異して、ワクチンの効果から逃れるので、毎年流行します。大きく突然変異を起こすと大流行になります。
 

最後に 

まず、インフルエンザの検査をし、10分くらいで結果が出ます。私は、65歳以上の高齢者とハイリスクの人(特に呼吸器系と糖尿病の重症者の人)には、ワクチンと抗インフルエンザの薬を勧めます。全く健康な成人には、必要ないでしょう。

 昔、ワクチンを小中学生がしなくなり、大人もせず、タミフルなどもなかった時代があったのですが、ほとんどの人は治っていました。インフルエンザにかかったら、休養の時間だと思って休んで下さい。あなたが疲れて不健康になっているからかかるのです。休息が一番の薬です。インフルエンザにかからないようにするには、自分の健康管理をしましよう。無理をしないで下さい。過労が一番いけません。