黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

病原環境論 つづき

2017-10-02 10:32:48 | 健康・病気
 病原環境論の続きです。

 Ⅰ.では不十分で、いつも診療所でくばっているものを載せます。

             病原環境論 Ⅱ.

            人はなぜ病気になるか         
1.人は環境に適応できない時に病気になる
◇病気になるのは、人が生活する環境に適応できない時に病気になるのです(病原環境論または適応説)。環境には、自然環境(細菌やウィルス、寄生虫や動植物、花粉などを含む)、社会環境(家族から地球規模までの人間社会)、心理または情緒的環境(社会がもたらすストレス)があります。特に現代では、社会的環境が大きく、家庭、親族、保育所、幼稚園、学校、職場、地域、クラブなどの人をとりまく環境が、心理・情緒的ストレスを産み、それによって抵抗力(免疫)が低下し病気になるのです。
◇判りやすく説明するために、人間を川に例えます。川にはそれぞれ堤や堤防があり、川の水が少なく静かに流れている時は、水はあふれません。この状態が、人間では健康なのです。所が大雨や台風で、川の水が増えてその堤防の弱い所を越えて氾濫し、水があふれ出ます。人間では、水があふれた時に病気になるのです。その堤防の弱点は、その時々によって異なります。その人の弱点は親から受け継いだ遺伝と生まれ育った環境や今までにかかった病気、現在の生活習慣やおかれた生活環境(自然や社会的)によっても作られます。その人の持つ弱点は年齢、性別、性格、考え方によっても異なるので、かかる病気が異なるのです。
◇ヒトゲノム計画により、人の遺伝子がほとんど解明されました。しかし、そこで判ったことは、同じ遺伝子を持っていても、同じ病気になるとは限らないのです。多くの遺伝子は、遺伝子のスイッチが入ると働き出し、スイッチが切れるとその働きを止めるのです。スイッチを入れるのが環境因子であることも判ってきました。遺伝子と環境の相互作用。
 例えば、哺乳類のほとんどは、乳児期には母乳が飲めるが、幼児期になると飲めなくなるのです。それは、幼児期になると母乳を分解する酵素を作り出す遺伝子のスイッチが切れてしまい、母乳が飲めなくなるのです。しかし、人間はなぜ大人になっても牛乳が飲めるのかが謎です。でもすべての人がそうではなく、牛乳が飲めない人がいて、その率は農耕民族に高く、牧畜民族に低いのです。環境に適応して遺伝子が変化してきたと考えられています。牛乳嫌いや牛乳を飲むと下痢をするのは別に特別ではないのです。
例えば、遺伝的に同じはずの一卵性双胎児の一人が喘息になり、もう一人が喘息になる確率は16~25%であり、他のアレルギー疾患では同じと見られていますが、統合失調症はもっとずっと低いのです。アメリカの調査で、アイルランド出身の双子の、一人はアイルランドに残り農業を継ぎ、もう一人はアメリカへ渡って都市労働者になった1000組を比較したら、摂取カロリーはそれ程違わないが、成人病になる確率はアメリカに渡った方が圧倒的に高かったのです。
 遺伝子にスイッチを入れる環境は、自然環境と社会環境です。社会環境の中に、社会によってもたらされる精神心理的、情緒的環境も含まれます。社会は最低3人から構成されますから、家庭も社会的環境です。だから家庭環境によっても変るし、食生活によっても変わります。また、環境によっても遺伝子は変化します。遺伝子と環境とは相互に影響しあって、発現したり、しなかったりし、その結果病気になったり、ならなかったりするのです。遺伝子は1世代で100の変化を蓄積すると言います。遺伝子は環境条件に左右され、ある種の環境でなら、ある形で発現するのです。遺伝子は、環境や発達に左右されない特定性と、環境の変化に適切に対応する能力(可塑性)を持ちます。

2.病気と戦う仕組み
◇人には病気にならないようにする防御システムが様々に働いています。
①外から人の身体に入ってくる場所すべてに細菌やウイルスなどの微生物が住み込み人と共棲していて、外来の微生物と戦ってくれます。例えば大人の皮膚1平方cmに10万の微生物が住んでいます。だから大人は「とびひ」にならないのです。目、鼻、口、のど、耳、陰部、腸などすべての外界と接する部分には微生物が住んでいます。それが病気にならない理由の一つです。胃には強い酸性の胃液があり、多くの細菌はそこを突破できません。突破しても小腸には1gの腸内容物に三千億から五千億の細菌や微生物が住んでいて外来の微生物を排除してくれます。皮膚や腸に住んでいる種類は家族ごとに微妙に異なりますし、老化によっても変わります。
②体内にはまずリンパ球をはじめ、リンパ組織(扁桃やリンパ節や虫垂)が働いて防御線を張っています。外来の異物を見つけ、戦うのも、抗体を作るのもリンパ球です。インターフェロンやサイトカインというものを作るのもリンパ球です。リンパ球はいろいろな働きをして微生物や異物、がん細胞などと戦ってくれます。その他に多くの身体の働きで、自分の病気を治す力(自然治癒力)があります。がんになっても、少なくとも3万人に一人は自然治癒します。世界でその人たちの3500人の報告も出ています。

3.ストレスと病気
◇環境にうまく適応できない時に、防御システムの働きが低下します。だからストレスがあると免疫の働きが低下し、病気になり易くなります。その時に細菌やウイルスが入ってくると病気になるのです。過労も心労もストレス状態の一つです。
 ストレスを起こすのがストレッサーと言い、それによって引き起こされる状態をストレスと言い、ストレスになると身体の色々な働きが乱れて病気になるのです。ストレスはたまるものではなく、状態です。なったらすぐ身体は反応しています。その時病気になるかならないかは、その時の、その人の状態や環境によります。
◇ストレスがあると、身体が反応します。ストレスはたまるものではありません。一度でもストレスです。ストレス対策は、気持ちの持ち方を変えることです。
 嫌なことは「嫌だ」と言いましょう。でもどうしてもそれができない時は、「仕方がない、そういうものだ」とか「まあいいか、しょうがないや」と、いつまでも「いやだ」をひきづらないことです。でも、いじめ、セクハラ、嫌がらせなどは、そうしてはいけません。
◇子どものストレスは、第一に「いやなこと」を我慢することです。だから神経質な子は病気をしやすく、くよくよしない子は病気をしません。自己主張の強い子は病気が少なく、心やさしい子やいやなことを我慢する子が病気をしやすいのです。大人も同じですが。
 子どもは、赤ちゃん時代は親が防御して下さい。赤ちゃんが「いい気持ち」にならないことがストレッサーです。いつもいい気持ちにしてあげて下さい。お腹いっぱいにすること、早めの離乳食、オムツをとりかえること、赤ちゃんが要求しないのに抱いたり触ったりしないこと。赤ちゃんをお人形さんにしないで下さい。おもちゃではありません。
 叱らないで、他のことに関心をそらして、いけないことを止めさせましょう。関心を他のことにすり替えることで、叱らずにすみます。そしてすぐ「いい子ね」とほめましょう。
いつもいい子にしてあげて下さい。親のして欲しい事をしてくれたら、すぐほめましょう。
 人見知りは自我の芽生えで、自我ができるのは3歳ごろ。この頃になると自己主張が強い子は病気が少なくなります。そして小学校入学から思春期まで、病気が少ない時期です。でもおとなしい子、こころが優しい子、いやだと言えない子は病気になります。
 
◇食事を強制したり、制限したりせず、少なくとも3歳までは欲しい時に欲しいだけ食べさせて下さい。少食、偏食は食事の強制から生じますし、甘いもの好きは甘いものを制限することから始まります。子どもに与えたくないものは、一度も与えてはいけません。「少しならいいだろう」は間違いです。もっと欲しくなるものです。嗜好飲料、スポーツ飲料は子どもの飲み物ではありません。また甘い食品、糖分(グリコーゲン)は大脳の発達に必要ですから、子どもの食事の必需品です。子どもは、食事もストレッサーになることがあります。嫌いなものを強制しないで下さい。また牛乳は、前述のように、飲めない子がいますから強制しないで下さい。また牛乳の飲みすぎもいけません。

4.病気は身体の変調、不調
◇病気は、外から入り込んだものではなく、自分自身の身体の変調です。変調というのはピアノやギターの調律がはずれた状態で、同じピアノでも良い音が出ない状態です。良い音が出ている時が健康なのです。
 例えば、かぜでも、外から入ってきたウイルスや細菌と戦って、身体の変調を起こして熱が出たり、咳やのどや身体の痛みやのどが腫れたりしているのです。だから、治ると自然に熱が下がったり、咳や痛みや腫れがとれていくのです。
◇だから病気は、自分自身がなっている変調した「状態」なのです。病気を嫌わないで下さい。病気を嫌うことは、自分の心が、自分自身の病気になっている身体の状態、つまり自分の身体を嫌うことになり、心の奥底(潜在意識の中)で、抗争(葛藤)を起こして、病気が良くなりません。病気を認めて、病気と上手に付き合って下さい。良くなるように自分の身体をなだめて、「良くなる、良くなる、だんだん良くなる」と自己暗示をかけて下さい。きっとあなたの身体の病気はよくなっていくでしょう。子どもは親が暗示をかけて下さい。よく病院に来ると、子どもが元気になるのは、ここに来ると良くなるとの暗示効果です。

5.不安は病気のもと
◇また不安になると、病気になったり、病気が悪くなったりします。不安になると「もっと悪くなるのではないか」とか「もっと苦しくなるのではないか」と思ってしまいます。それが自己暗示になって、あなたの身体はだんだん悪くなります。不安だと良くならないのですから、不安を打ち消しましょう。その為に、薬を飲んだり、医師にかかったりするのです。子どもは、お薬を飲ませて、「さあこれで良くなるよ」と言って下さい。それでよくなるのです。薬の効果と暗示の相乗効果です。それで良くならない場合は、それが効かない何かストレスになっていることが、子どもにあるのです。それを探して、なくすようにしましょう。
◇病気に神経質な人ほど、病気になりやすいのです。日本人は昔から病気に神経質です。挨拶の言葉には病気に関連する言葉が多いです。最近のゲノムの研究では、日本人の98%、白人の67%が神経質になる遺伝子配列を持っていると言います。しかし、それが発現されるのは環境によります。だから、くよくよしない人が長生きするのです。長寿の人に「その秘訣は何ですか」と聞くと、大抵「くよくよしないことです」と言います。
不安をかかえてはいけないから、不安なら医者にかかり、不安をなくしましょう。良い医師は、安心をさせてくれます。医者は安心を売る職業ですから、不安を増やすような医師は避けましょう。また、親は子どもを不安にさせるような言葉を話さないようにしましょう。「かぜをひくから」、「注射をされるよ」、「病気が悪くなるよ」などなど。
 子どもを脅かして、言うことをきかせようとしてはいけません。ほめて言うことをきかせましょう。子どもはほめられたいから、親の言うことをきくようになります。大人も同じです。大人同士でも、感謝の気持ちを表す「ありがとう」を言い合いましょう。

6.病気と上手に付き合いましょう
◇一病息災になりましょう。
先の川の話に戻って、堤防の一ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると、他の場所から水があふれません。それと同様に、一つの病気を持っていることによって、他の病気になる可能性が減ります。これを一病息災と言います。病気とうまく付き合い、なだめすかして、病気と仲良くして下さい。何とかして病気を治すと、また別の病気になる事がありますから。これは慢性の病気の話で、急性の病気は別です。
◇人生を楽しみましょう。たった一度の人生ですから、楽しくなくてはつまりません。楽しい人生を送ることによって、病気は逃げていきます。楽しい事を考え、思い描き、いつも、どこでも、楽しいことを考えながら、勉強したり、仕事をしたりしましょう。楽しくしていれば、病気は良くなります。

7.病原環境論
◇病原環境説は、ヒポクラテスに始まると言われています。ヒポクラテスは、病気をその「人」の状態として捉え、病気の原因を、気候の変化と不適正な食事、その他外界の激変にあるとしました。その後、ドイツの病理学者、衛生学者で政治家(進歩党)のウィルヒョウによって再興され、さらにロックフェラー大学環境医学教授デュボスによってヒポクラテスの復権が提唱されました。1970年代の国連環境委員会のアドバイザー委員長をしたデュボスでも、この説を臨床医のあいだに広められなかったのです。パブロフの条件反射を進めて、人はどんな環境に置かれたらどう反応するかの研究に進むべきだったのですが、神経経路の研究へと進み、体の細分化へ研究が進んでしまったのです。デュボスの説を支持しているのは、基礎医学者と精神科医に多いのです。アメリカの精神科医を中心に、精神神経免疫学や、さらに精神神経免疫内分泌学なども提唱され、動物実験もされ実証されていますが、これらはすべて病原環境説に含まれます。   

私の病気の理論「病原環境論」

2017-10-02 10:13:58 | 健康・病気
みなさま
 今まで私の病気の理論である「病原環境論」または「適応説」をご紹介していなかったでしょうか。もしかしたら、していたかもしれませんが、もう一度します。
 それは、再度の出版で私の「選択的ワクチン接種法」とそれを支える育児法の本が持続的に買われているようで、それだけワクチンへの関心が広がったのだと思い、もう一度私の立場を明らかにしたいと思うからです。

 私の立場は、現代医学医療を批判し、しかし残念ながら世界にある多くの違う医療、中国医学、漢方、イスラム医学、ホメオパシー、アーユルベーダ医学、チベット医学、各民族のもつ医学など現存する多くの医学医療がある中で、すべての病気に対応する医学医療を見つけられず、
現代医療の一部に残る適応説がすべての病気に対応できると確信し、それによる医療をしています。
 ですから、あくまで現代医学医療の一部に属しますが、少しずれた所にあり、現代医学医療からははじき出されています。

 そろそろそれをまとめて本にしたいと思いますが、間に合わないので、少しずつブログに載せることにしました。

             病原環境論 Ⅰ.

1.病気の原因は環境にある。病原環境論
  人は、環境に適応して生きてきた。環境に適応できない時に病気になる。適応論
  人は、環境に適応して変化し、環境が変化してもそれに適応して変化して生きてきた。
 氷河期も乗り越えて生きてきた。そして人が行くと、そこの環境が変えられ、人間に都合のよいように変えられた。そしてその環境に適応した者が生き残っていった。

2.人は、歴史的に、世界的に(地球的に)環境に適応して生き残ってきた。そして人は環境を変えているが、環境を変えるとその変化した環境によって人間も変っていく。人間は環境(地球的規模までを含む)と相互作用している。
  肌の色、鼻の高さ、目の色、常食、みな環境に適応して生きてきた。
  同じ環境に置かれても、適応できるかできないかによって、病気になるかならないかが決まる。だから、歴史の中で、伝染病が流行したが、必ずかからなかったり、かかっても生き残ったりする人がいた。その人たちが、病気に対する抗体をもち、それが遺伝子に刻まれて、遺伝していった。
  
3.遺伝子+環境によって、病気になる。
  環境に適応できない時にどの病気になるかは、その人の持つ遺伝子によって決まる。しかし、いくつもの遺伝子の中のどれになるかという仕組みは、まだ判らない。そこにも環境の影響が働いている。
  遺伝子は、スイッチが入ると働きだすから、何がその引き金になるかが判ると、もっといろいろな遺伝的な病気のメカニズムが明らかになるだろう。
  環境に適応するとともに、それが遺伝的に伝えられていく。環境も遺伝子を変化させる。(利根川博士の理論)
  遺伝子には、過去にかかった病気の歴史、つまり、ウイルスや細菌などのゲノムの一部が組み込まれている。それが人間の記憶として残されている。だから、一度大流行した病気にはかからないか、かかっても軽く済む確率が高い。
  
4.環境には、自然環境と社会環境とがある。
  自然環境は、地球的規模から、野山川海、そしてそこに住む動植物、寄生虫、細菌、ウィルスまでを含む。気候、気象条件、日射、大気汚染、ダイオキシンなどの土地の汚染、放射線、等々すべての自然とそれに環境汚染を含む。
  アフリカやアラビアの砂漠は人間が羊を放牧したことによって生じたという確かな証拠があるという。現実に中国や蒙古の砂漠化は、羊の放牧によっている。自然界の動物たちは、草や木の葉などを食べつくすことはせず、残していくし、動物の背の高さによって食べる位置が異なり、また種類によって餌が異なり、棲み分けがなされている。それを壊したのは人間である。多くの動植物が日々絶滅している。これを残そうという努力は、保護区を作って、その中では人工的な手を入れないようにすることであるという。
  一時アメリカで、ロッキー山脈周辺に自然保護区を作り、それを実施したが、草食動物だけの時にしたために、草食動物が木や草を食い荒らし、植物やそれに左右される小動物や魚などの生態系が乱れていった。それで、アメリカでは絶滅したロッキー山系のオオカミを、カナダから輸入して放したことにより、またそれによって生態系が変わっていき、また人間が介入せざるを得なくなった。
  アメリカからメキシコに及ぶ砂漠も人間が作ったものである。アメリカ大陸全体は、昔は森林で覆われていた。それを切り開き農場や牧場にし、そこが砂漠化していった。
  イギリスのレンガも、木を切りつくしたため木材がなくなり、レンガを焼いて家を建てるようになったのである。
  今は、人の手の入らない原始林はないという。 すべての森に人が手を入れている。

  社会環境は、人間の住む社会であり、最小の社会は家庭、最大は地球=世界=国連である。その間に、地域、市町村、都県、国、民族、人種、保育所、学校、会社、宗教、趣味の会、スポーツグループ、習い事などがある。人間が3人以上集まったら、そこに一つの社会ができる。主として人間関係が、情緒的、精神心理的環境を作る。しかし、自然環境も社会環境も情緒的、精神心理的環境を作る。
  世界には、まだまだ地域の支配者がいて、その地域社会を支配している所が少なくない。
  や集落などで、日本にいるとそれが判らないが、村と村の間が何十キロという土地も珍しくはない。

5.人間は社会を構成し、社会の中で生きているが、しばしば社会に疎外される。
  本来社会は人間が作ったものであるにもかかわらず、人間=個人を社会から疎外するようになる。社会が勝手に個人を拘束したり、制限したりする。日本の村八分もその一つである。

6.人間の病気の歴史は、人間とそれらの環境との適応関係である。新しい環境に出会うと、それに適応できる人間が生き残り、できない人が淘汰される。環境の中に、自然環境も社会環境も入る。
 新しいウィルスや細菌が登場した時に、うまく生き延びた人の適応の仕方が伝達されていくと、そのウィルスや細菌が重大な病気ではなくなっていく。そして一つ病気がなくなっても、一つ新しい病気が出てくる。
 人間とウィルスや細菌との適応関係も、病気の歴史の上で大切である。
 古代文明が栄えたのは、乾燥した土地で、水がある川のほとりである。湿地には人を追う狩人たち(微生物、寄生虫たち)が多く、栄えるようになったのは、ずっと遅い時代になってからである。
 
 人間の歴史は、病気との戦いの歴史でもあるが、歴史家は病気のことは何も教えてはくれない。モンゴル帝国とペスト、ナポレオンのロシア遠征と発疹チフス、仏伊戦争と梅毒、スペイン人のメキシコ征服と天然痘、アメリカ先住民と結核など。
 なぜ、ホモ・サピエンスは、他の原人たちを駆逐し、その当時生き残っていた大型獣類を絶滅に追い込んでいったのか。
 なぜ日本には、梅毒やペストが大流行しなかったのか。結核もアメリカ原住民を壊滅的に打撃を与えたのに、日本人には慢性の病気として入って来たのか。天然痘も発疹チフスも、日本人を壊滅させなかったのか。
 アメリカ大陸やアフリカ大陸で、キリスト教が現地の宗教を駆逐し、信仰されたのは、現地の神々が現地人を病気から救ってくれず、キリスト教徒たちは救われたと思われたからであろう。
 インカ文明もスペイン人たちに滅ぼされた。しかし、古代文明以来、文明は栄枯盛衰をたどり、繁栄すると滅亡していく運命にある。現代文明も今後何千年続くかはわからない。いつかは、滅亡するのではないだろうか。

7.人間と自然界の食物連鎖。動物はすべて他の生き物を食物にして生きている。そして大切なことは、「どうすれば他の生物体の食物にされないですむか」ということである。 そして人間は、ミクロの寄生生物、病原体と、マクロの寄生生物、大型肉食獣との狭間に生きてきた。

8.病気という概念も歴史的である。
 身体的不調のために期待された仕事が遂行できなくなった人間は、常に仲間から病気とみなされるだろうということである。だからその時代によって、病気の概念は変化していく。
 人類の個人と集団は、常に数々の感染症に対処して絶え間なく変質を続けているが、感染症の病原体の方でも、環境への適応と自己調整を重ねている。

 例えば、精神病は病気とは思われていなかった。そして共同体の中で生きていけたのである。またシャーマンになることも多く、日本では沖縄奄美のユタとノロの存在も忘れつつある。現代でも、まだその形は残っているが。

9.人間は、こころと身体を持つ、社会的存在である。
  こころと身体は、メタルの裏表であり、常に一つである。そして人間は、社会を形成する生物である。常に人間社会の中で生きている。ロビンソン・クルーソーではない。
  野性児の記録は、作られたものとの評価があるが、いずれにせよ、人間に育てられなければ、人間になれないことを示している。
 そこに闇教育の存在が問題になる。闇教育は、異常な人間性を作り出すというのが、その説である。

10.人間は、社会によって人間である。人間社会があり、その中で育てられ、成長していくから人間なのである。社会に適応できないと病気になる。
  時代によって、歴史の流れによって、社会は変化していく。
  社会が変ると、人間もそれに適応して変らないといけないが、適応できないと病気になる。その時に、その人間のもつ遺伝的な弱点に病気が出る。
  だから社会によって病気になり、社会によって健康になる。
  本来、社会が病気と闘うべきであり、個人が戦うのでは無い。個人が病気と戦ってもかつことはなかなか難しい。病気は個人的なものではなく、社会的なものである。
 だから、医学は自然科学ではなく、社会科学である。

11.慢性の病気は、その人の人生を反映している。
  どの病気になるかは、その人の性格によっても異なる。同じ病気の人の集団を、集団ごとに対比すると、その病気になる人の性格傾向が判る。
  慢性の病気は、その人の人生と和解しないと、病気はよくならない。人生を恨むと病気になる。いくつかの病気になりやすい性格傾向は判っている。心筋梗塞は、仕事人間と言われるような活動的で疲れを知らないように見える人がなりやすい。癌は、嫌なことでもじっと我慢する性格に多い。

12.身体の痛み特に神経痛は、こころの痛みである。
  痛みは、身体の警告信号である。痛みを薬などで抑えると、うまくいかなくなる。
  病気の症状は、身体の注意信号である。そして、身体が病気と闘っている表現である。
身体が病気に勝つと、症状はとれる。
  身体に心地好く感じることが、身体に良いことである。
  しかし、ストレスが身体の働きや感受性を狂わせる。

13.先天性の病気も、遺伝的な病気も、発現するかどうかが、環境によって決まる。
  遺伝子病も発現しないで終わることもある。

14.人間にはストレスが必要である。ストレスがないと人間は生きていけない。人はストレスを求めて冒険にでかける。しかし、うまくストレスに適応できないと病気になる。

15.人間には、本来病気になった時に、それを治す能力を生まれつきに持っている。その力が妨げられた時に病気になる。環境に適応できない時に、自然治癒力が働かなくなり、病気になる。
 その原因の第一は、ストレスから来ると言っても過言では無い。
 自然環境に適応できない時に、社会環境に適応できない状態すなわちストレスがあると病気になる。

16.人と感染する病気は、人間と適応関係にある。人間の今までの病気の歴史は、感染症との適応関係の歴史であった。ヒトゲノム計画で人のゲノムが解読されて見ると、そこには人と病気の歴史が書かれていた。

17.しかし現代では、生活習慣特に食生活に起因する病気が増えている。しかし、これも単純に食生活だけではない。そこにストレスが加わって、人間のもつ摂食中枢と満腹中枢の働きが身体のバランスをとれなくなって、病気になる。人間は体のすべての働きが働いていれば、病気になることはない。そのようにできている。それがうまく働かなくなって病気になる。
  だから、食生活がうまくいかなくなる最大の原因は、ストレスである。

18.癌も、人間と発ガン物質との適応関係で生じる。人には、発ガン遺伝子と発ガン抑制遺伝子があるし、免疫の仕組みには自己と非自己を認識する仕組みがある。確かに、癌は自らの身体から発生したものであるが、正常細胞ではない。正常の細胞と異常(正常でない、できそこないの)細胞を認識する仕組みがある。丁度、工場の検査部門のように、出来損ないの製品を見つけてはじき出す仕組みを人間も持っている。それでなければ、人間の細胞は60兆個とも千兆個(出典により異なる。時代の差か?)とも言われるが、出生後は分裂しない細胞と細胞分裂を繰り返す細胞がある。後者の方が圧倒的に多い。それだけの細胞が分裂すると、必ず確率的に異常が生じるのは必然である。だから、それを処理する仕組みがある。その仕組みが働かなくなった時が病気である。
 癌は、その中でも、細胞分裂を繰り返し、止まらなくなったものである。それを制止させ、異常細胞を破壊する仕組みが働かないために癌になり、進行したり、再発したりする。

19.自然に生きていれば、人生に苦しみはない。苦しみを生ずるのは、その環境に適応できないときに病気になったり、戦いをしたり、人間関係からくる悩みである。
  だからブッダはその苦を逃れるために、修行をし、法を考え付いた。
  人は、生まれ、成長し、女性は月経が始まり、子どもを産み、育て、閉経し、人は死んで行く。この自然の流れに痛みが生ずることはない。ただ、お産は、人が二本足歩行になった時から、難産になることがでてきた。それ以外は、成長痛もないし、生理痛は病気だし、更年期障害は半分の女性しかならず、病気である。病気にならなければ、痛みはない。死ぬことには苦しみはない。自然死、老衰は苦しみはない。
  本来、生、病、老、死のうち、病にしか苦はない。


20.宗教は、人の悩みを、悩みから解放するために生まれた。もともと医療は原始宗教の中の一部分であった。だからシャーマンの仕事の中に治療があった。そこから呪術的なものや天文学、もめ事の裁きなどもあった。