黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

自分のこころを自分の意志で

2021-10-22 16:13:56 | 心療内科
    自分のこころを自分の意志でコントロールしましょう 2 自己暗示法

自分のこころを自分の意志で動かしましょう   2自己暗示法

前回は、自分のこころを静め、こころを平穏に保つために必要なことでした。
 こころがドキドキしたり、緊張したり、不安になった時に「だいじょうぶ」と自分に言い聞かせる時に、効果が出ると思います。
 ただし、毎日一、二回はした方が良いです。
 慣れてくると、どこかのベンチや椅子に坐っていて、特に何もすることがない時にはしてみて下さい。何かを待っていたり、時間を待っていたりする時には、良いでしょう。
 電車の中でも長く乗っている時にはできると思います。
 ポイントは毎日することです。一番良いのは、寝る時です。気持ちが落ち着くと、途中で寝てしまうことがよくあります。その時は、朝目がさめた時に大きくのびをして、暗示を解除すればよいでしょう。しなくても特に問題はありません。

 そこでその次の段階に入ります。それは自己暗示です。一種の自己催眠でもあります。
だから、催眠状態に入っている時の意識状態を経験していると達成しやすいですが、なくても繰り返していると何となく判ると思います。
 私は独学でいろいろなことを学びましたが、どうしてもできなかったことが催眠療法でした。精神科にかかるような精神病には効果は無いのですが、軽いまたは簡単な、こころのゆらぎ(動揺)を静めるためには効果があります。私自身も、この方法でいろいろな場面を切り抜けることができました。 
催眠療法は、埼玉保険医協会の研究会で教わり、臨床では一度催眠療法をして、催眠状態がどんなものかを経験して頂き、それで自己催眠法を教えて、催眠状態を自分で持続させていくやり方をしていました。
催眠療法では、一回の催眠療法で、三、四日しか暗示効果が持続しないので、三日おきに十回くらいしないと止めてもまた元へ戻ってしまいます。それができる人が少ないので、私が考案した方法です。努力する方にはできます。努力できない方は、十回は、催眠療法に通わなければ効きません。
 
 その自己暗示法を、これから紹介します。
先に、自己暗示を治療に使うことを教えてくれた、フランスの薬剤師で自己暗示治療をしていたクーエの書「自己暗示」の抄録を載せます。
続いて、その実践法を載せます。




         自己暗示

                            クーエ「自己暗示」より抜粋
 (この書は、私が催眠療法を学ぶきっかけとなった感激した本ですが、今は手元にありません)。


 あなたは自己暗示で、あなたの持つ自然治癒力を解放し、充分にその能力を発揮させていける。しかし、その過程にはいろいろな妨害がある。
 ある考えが精神に提示されたとしても、精神に受入れられない限り、決して現実にはならない、ということである。逆に意識がその事実だけを念頭におきだしたら、痛みはかえって増してくる。
 ①ある考えが精神を独占してしまった場合、その考えは実際に、肉体的もしくは精神的状態となってあらわれる。
 ②ある考えを意志の力でおさえようと努力すれば、その考えをますます強めてしまうだけである。

 自己暗示の基本法則
 「意識に入ってくる考えは、無意識によって受け入れられたら、かならず現実に変わり、今後の生活の中で永続的な要素となる」(=無意識的自己暗示)。

 自己暗示の過程は、
(1) 考えを受け入れ、 (2)その考えを現実に変える、という2つの段階から成り立つ。
この2つの作用を行うのは無意識である。その考えが、本人の心から出たものか、外部から他人の媒介で提示されたものか、などは問題にする必要はない。

 本質的には、どんな暗示も自己暗示である。必要な区別は、
② われわれの意志や選択のおよびえない所で起こる無意識的自己暗示と、
②われわれが実現したいと思う考えを意識的に選び、それをなんとかして無意識に伝えようとする誘導自己暗示の2つだけである。

 エミール・クーエは「自分には人をなおす力などなく、また、生まれてこのかた、人をなおしたこともない」という。「患者を健康にする道具は、かれら自身の中にそなわっている」クーエはただ、健康についての考えを患者の内面に呼び起こす助けをしているにすぎない。今後は患者自身で自分の運命を扱って行けるはずだし、またそうしなければならない。

 自己暗示の一般的法則
 どんな原因からであっても、暗い考えに襲われたら、われわれの注意を何かもっと明るいものへ移さなければならない。病気にかかったら、くよくよ悩むことによって身体の器官のもつあらゆる機能を病気にゆだねてしまい、自分の生命力をわが身の破壊にさしむける結果となる。
 心から根こそぎにすべきものの1つは恐怖(不安)である。恐怖(不安)は、心が否定的な考えにこだわるだけでなく、その考えと我々の心が親密になり、しだいに効果を強める。

 われわれは自分自身のためにも、隣人たちの欠点や弱点にこだわらないようにすべきだ。他人の欠点をいつも考えていると、その考えが絶えず心の中にあり、無意識的にそれを受け入れ、われわれ自身の性格の中にそれを実現させる危険が大きい。
 自分自身のために、否定的な考えを避けるべきだ。

 他人に対しても、尚更そのこころがけでいなければならない。「顔色が悪いね」とか、「具合が悪いんじゃない」と本人が云いもしないことをいう時、相手がとりあわなければよいが、本気にすると、相手の健康を害していることになる。
 子どもに対しては、もっと深刻で、慎重にしなければいけない。
 「カゼをひきますよ」、「病気になりますよ」、「転びますよ」などと悪いことを暗示してはいけない。繰り返し聞かされているうちに病気になってしまう。
 同じように、悪い子、馬鹿、間ぬけ、ぐず、のろま、不良、親不孝者、なまけ者などと云ってはいけない。それを受け入れられなければよいが、受け入れてしまったら、そうなってしまう。「僕は悪い子だ。悪い子は、悪い事をしてよいのだ。」と考える。
 (だから「あなたは良い子だから、こういう悪いことはしてはいけません」としかりましょう。良い子は悪いことができないのだから。)

 一般暗示
一般公式
 「毎日、あらゆる面で、私はますますよくなってゆく。」 (Day by day,in every way, I’m getting better and better.)→→「すべての面で、一日ごとに、ますますよくなっていく」
 ひもを1本用意して、それに結び目を20つけるとよい。寝床についたら、目を閉じ、筋肉の力をぬき、らくな姿勢をとる。次にひもにつけた結び目をたぐりながら、一般公式の暗示を20回唱える。言葉は、自分の耳に聞こえるくらいの音量で、声に出して唱える。無心に、子守歌でも口ずさむように、単純な気持ちで、努力せずに唱える。
 朝、目が覚めたら、起き上がる前に、就寝前と同じ様に公式を繰り返す。
 規則正しく繰り返すことがこつである。あとは、種を蒔いたのだから、芽が出てくるのを待ち、芽が出たら若葉になるのを待つ。まだかまだかと気をもまないこと。
 こんなことをしても良くなる訳がないと不信の念を抱くかぎり、暗示の効果は消滅するだろう。信頼が大きいほど、結果は早く訪れてこよう。

 自己満足している人は、自分以外の他人の美徳を認めることができない。
 自分の考えを意識的に誘導できる時間は、睡眠の直前と直後である。このときにかけられた暗示は、より確実に受け入れられるだろう。この時間が一般公式をくり返し唱えるのに最適である。

 努力逆転の法則で、努力するほど、うまくいかない。(努力し過ぎてもいけないこと)
 シェヴルールの振り子の実験(略)

 特殊暗示
 特殊暗示は、一般公式ほどの効果を持ちえない。
 特殊暗示をかけるには、誰からも妨げられない部屋へ行き、座り心地のよい椅子に腰をおろして目を閉じ、筋肉の力をぬく。云ってみれば、昼寝をしようとする時と同じ具合だ。
そうすれば、無意識の潮が、特殊暗示の効果をあげるのに充分な高さまで満ちてこよう。
 今度は、言葉によって、自分の望んでいる考えを呼び出す番である。これこれの改善が起こるだろうと、自分自身に告げる。その時に、こころにその考えをおしつけたり、努力したり、注意力をむりやりその考えに向けたりしてはいけない。緊張せずに、なんとなく心にうかべるようにする。

☆特殊暗示の仕方
 無理な要求はしてはいけない。3つの段階を含む。
 ①改善の即時開始、②迅速な進展、③完全かつ永久的な治癒、

◇例:難聴
 「今日この日から、私の聴力はだんだん好転していく。日一日と少しずつよく聞こえるようになるだろう。その好転ぶりは、徐々に速さを増して、かなり短期間のうちに、まったくよく聞こえるようになり、一生その状態は続くだろう。」
◇恐怖やいわれのない予感
 「今後、私は幸福で、確信にみち、快活な状態をますます意識するようになるだろう。私のこころに入ってくる考えは、強く健全なものであるだろう。日々に自身を増して、自分の実力を信じるようになる。そして同時に、その実力はさらに強まった形で表れることになろう。私の生活は、ますます平穏で、安楽で、明朗なものになっていく。この変化は日々に深みをまして、遠からぬ将来に私は生活を一新させていることだろう。かって私を悩ました憂慮はもはや消滅しているだろうし、舞い戻ることなど決してないだろう。」
◇記憶が悪い人は
 「私の記憶は、今日からあらゆる分野で増進するだろう。受け止められた印象はさらに明確なものになり、努力せずとも、児童的に記憶されるだろう。思い出したい時には、すぐさま正確なかたちで心にうかび出てくるだろう。記憶の増進は迅速に行われ、たちまち以前には思いもよらなかったほどになろう。」
◇短気、かんしゃくには、
 「今後、私は日を追って上機嫌になるだろう。沈着と快活がふだんの精神状態となり、やがて諸事万端この心持ちで受けとめるようになろう。私は周囲の人々に激励と助力をさしのべる中心的人物となり、私自身の上機嫌さを彼らにも移してしまうだろう。この快活な気持ちはついには私の習性となり、どんな事態をもってしても、私からそれを奪うことはできなくなろう。」
◇喘息には
 「今日この日から、私の呼吸は急速に容易となるだろう。まったく自分でも気づかぬうちに、そして自分ではなんら努力せずとも、私の器官は、肺と気管支の健康を回復させるのに必要ないっさいのことをするだろう。大車輪で働いてもまったく不便を感じなくなろう。
私の呼吸は、のびのびして、深く、快いものになるだろう。私は、自分の健康増進に必要な、汚れのない空気を吸い込むだろう。その結果、私の全器官は活気をおび強さを増すだろう。さらに私は平静に安眠して最大限の休養をとり、快活な気分で目覚め、日々の仕事に楽しい期待をかけるだろう。この過程はすでに今日始まっており、遠からず、私は完全かつ永久的な健康を回復するだろう。」
 ☆よくなってきたら、それに合せて暗示の内容を変えていけばよい。

◇痛みには
 痛みに反撃をはじめる時は、すわって目を閉じ、冷静に、そして自信をもって、「これからこの痛みをとりのぞいてやる」と自らに告げる。望みどおりの結果が得られたら、「今、回復した安楽な無痛状態は永続的になり、患部はみるみる補強されて正常な健康状態に達し、以後はその望ましい状態が常に続くだろう。」と暗示をかける。
 痛みが軽くなっただけで、完全にとりのぞけない場合は、次のような暗示を用いると良い。「もう大分楽にになってきた。もうすこしで完全に止るだろう。私は正常な状態に戻り、今後もその状態が続くだろう。」

◇難しそうに見える仕事にとりかかる時に
 まず目を閉じ、静かにこう云う。「私がしなければならない仕事はやさしい。まったくやさしい。やさしいから大丈夫できる。私はそれを手ぎわよく、立派にやってしまうだろう。しかも仕事を楽しんでやるから愉快になってきて、身も心も仕事にみごと調和して、結果は、期待を上回りさえするだろう。」これで自信がでてきたら、進行方法を考え出す段階へ入る。
◇思案投げ首のとき、一晩寝て考えろ。
 悩んだら、くどくど考えず、「一定の時間がすぎたら、解決策が自ら浮かんでくるだろう」という暗示をかけ、ぐっすり眠って無意識の力に任せるとよい。朝目が覚めた時に、良い案が浮かぶことがある。時々これを実行している人がいる。うつらうつらしている時に、よい案がひらめくからと、枕元に鉛筆とメモ帳をおいている。
 ジョギングや山登りの最中にひらめくのも、同じである。無意識に任せると、良い考えが浮かんでくる事が多い。
◇発作の伴う病気には
 「今後私は常に、いつ発作が起こってくるかを前もって予知するだろう。その接近に際しては充分な警告をうけるだろう。警告を受けても、恐怖や疑念は生じまい。私は、それを避ける力が自分にあることを確信してやまないだろう。」
 警告が出たら、――これは間違いなく出る―― 患者は一人になって、発作が進行しないように特殊暗示をかける。
 まず「平穏と自制」の暗示をかけ、さらに「 正常な健康状態がすでに再起しつつあること、精神が充分に統制されていること、どんなことがあってもその均衡は乱れないことなどを、何度も、しかも努力を避けながら、唱える。

◇神経性疾患や恐怖、憤怒といった激情は、肉体的運動となって表れることが多い。
 (恐怖は身震い、動悸、歯のがたつきを、また憤怒は手の握りしめを起こす。)
 「怒りのかわりに、同情、忍耐力、上機嫌を感じるだろう。したがって肉体の状態も安楽かつ自由になるだろう」
◇1つの単語を繰り返してもよい。
 「沈着、歓喜、力、愛、純潔」
 しかし、特殊暗示は単なる補助手段であって、ひまがなければ無視してもかまわない。

☆痛みの処理--
 --心配、恐怖、意気消沈といった心の苦悩にもよい。
 何かの考えを口に出して唱えていれば、その間は、その考えが心を占めている。
 しかし「痛くない」という考えだと、すぐその反対の連想の「痛い」が心を占めてしまいやすい。(それで「だいじょうぶ」とか「平気だ」とか言う言葉を思い浮かべる)
 そこで頭痛、歯痛などの痛みで悩んでいる時は、座って目を閉じ、静かに、その痛みをこれから取り除いてやると、自分に保証する。そっと手で患部をさすりながら、できるだけ早口で、音を絶え間なく流すような調子で、「それは消える」、「消える、消える、・・・・・消えた」。約1分くらい息が苦しくなるまでぶっ続けに早口で唱え、一番最後に「消えた」としめくくる。
 痛みがひいてきたら、「もうじき完全に止まってしまう」という暗示をかける。
 痛みがひいたら、「もうぶり返すことはない」という暗示を。
 痛みがひどく、これに立ち向かえない場合は、ベッドに横たわるか椅子にもたれて、心身ともに力をぬく。努力はことを悪化させるだけだから、痛みに考えをまかせてしまう。
痛みをじーっと感じて待っていると、しばらくすると、気力が湧いてきたら、また始めよう。
 痛みは、われわれの肉体的機能がどこか狂っている危険信号である。初期症状の出す貴重な警告である。(痛みがひいたら、その原因を考え、まず心身の休息をとるべきである。痛みがとれたからと、すぐ仕事をしてはいけない。私は、危険というよりは、警告信号、注意信号だと思う)

☆子どもは
 子どもの生まれる前から始めよう。妊娠中の女性は衝撃や驚愕、精神的ショック、パニックを感じてはいけない。子どもが臆病になる。ひどいと流産したり、障害が残ることがある。
 生後数ヶ月の子どもに直接適用しうる自己暗示は、愛撫だけである。けれども母親や乳母の精神状態が乳児のこころに刻み込まれて行き、その時の精神形成が末長く尾を引く。
 特殊な病気になったら、子どもを膝の上に抱き、患部をやさしくなでながら、健康の完全回復を、言葉で念ずるのである。
 子どもが母親の云うことが理解できるようになったら、次の方法になる。
 夜、子どもが寝ついたら、母親は子どもの寝ている部屋に入り、子どもを起こさないように注意しながら、枕元から約1メートルの所に立って、必要と思われる暗示をささやき始める。子どもが病気なら「お前の病気は治っていく」という形式の暗示を20回繰り返す。
子どもが健康なら一般暗示の公式だけで充分である。同時に子どもの、健康、性格、知能などに関する特殊暗示をかけてもよい。部屋を出る時は、再び子どもを起こさないように注意する。目を覚ましそうな気配を示した時は、「眠りなさい」という命令を5、6回ささやけば、また寝ついてしまうだろう。
毎晩これを休まずに数週間実践するとだんだん効果が表れてくる。子どもがまだ言葉を話す以前から始めることだ。そして子どもが日々のさまざまな問題に自分で対処できるようになったら、そして少し難しい事が起こっても親の助けを求めに来なくなったらやめる時がきた。
 子どもが話せるようになったら、朝晩大人と同じ一般暗示を繰り返すように教えてもよい。
 7~8歳の時に、就寝後暗示をする時は、男の子は父親が暗示をした方がよい。
 女の子は母親でよい。
 思春期に、はなはだしい困難や危険に当面している徴候がみえた時には、再びその特殊な困難に関する特殊暗示のかたちで、就寝後暗示をかけてやるとよい。この場合も、他の場合と同様に目的だけを暗示してやればよく、目的を達する手段の選択は無意識の自由にまかせるべきである。しかし性に関することは難しい。
 子どもが話し方を覚えたら、すぐ苦痛に立ち向かうすべを教えることだ。
 子どもに目をつぶらせ、その患部をそっとなでながら、自分と一緒に「なおる、なおる、なおる・・・なおった。」と繰り返し唱えさせる。(日本では、「痛いの、とんでけ、とんでけ、とんでけ・・・とんでった」の方がよいだろう。)そして自分でやるように教えていく。

☆☆自己暗示は医療にとって替るものではない。
 医療の働きを、より効果的にし、今まで医療だけでは治らなかった人々を治すためである。
 自己暗示は、自己修養の手段である。
 自己暗示の効果は道徳にも及ぶ。将来犯罪者を立ち直らせる方法になろう。
犯罪は病気なのだから、病気として取り扱うべきである。
自己暗示は内的生活の原則を教える。
                          以上                         


         自己暗示法の話          
       --自己暗示法とは何か。催眠療法とどう違うか。--


催眠療法は、病気や悪い癖、悪い習慣に悩んでいる人を治すための、治療法の1つです。そもそも催眠療法は、本人がしたくないことをさせることはできません。だから、本人が治したくなければ、効果はありません。また、一時よくなっても、再発することがあります。元に戻ってしまうからです。再発を防ぐためには、自己催眠法か自律訓練法を続けると良いです。それで私は、先ず一度催眠療法を受けて頂き、催眠療法による暗示は3~4日しか持続しませんから、それを継続して効かせるために、最初のうちは精神安定剤と併用して、この自己暗示法または自己催眠法をして頂き、安定した段階で、安定剤をやめます。大体それでうまくいく方が多いです。
 同じ催眠でも父親的な術者がかけるのが催眠術で、術者の指示通りにさせて見せるもの。母親的な術者がかけるのが催眠療法で、本人の治したい所を治すようにするもの。過去のことを思いださせて、それを治療に結び付けることなどもします。催眠療法のこころは、母ごころです。治したいという強い希望があることが、催眠療法を効果的にします。
 それを自分でしようとするものが、自己催眠法または自己暗示法です。
 心療内科では、自律訓練法を薦めますが、これは難しく、なかなか三段階にまで行くことができません。自己暗示法の方がまだやさしいのでお薦めします。

A. 自己暗示法または自己催眠法が適当な場合は
 1.本人の治したいという希望が強いこと--動機づけ。これが強い程効果があります。
  毎日継続する気持ち、根気がよいことで、一回や二回でうまくいくことはありません。
  「継続は力なり」で、毎日根気よく続ける気持ちがある人にしかできません。
 2.こころが通い合うこと。つまり医師である私とあなたとの間に信頼関係があること。
  面白そうだからやってみようというくらいでは効果が期待できません。続けてやればきっと効果が出てくることを信じている方だけが効果が出てきます。
 3.リラックスすること。リラックスできない方は難しいです。
 4.注意の集中ができること。
 5.かかっている病気が、自己暗示法、自己催眠法によってよくなる種類の病気であること。
  催眠療法が効かない病気、効きにくい病気も多いです。催眠療法は精神科医のフロイドが始めたのですが、精神科医にかかる病気には効果が無いので、使われていません。
心療内科では効果がある場合があるので治療法の一つとして使います。特に自分の「気づき」が得られるために使われることがあります。アレルギーの大半もこれで治ります。
同じ病気でも効く人も、効かない人もあります。

 適応症)つわり、乗り物酔い、冷え症、
言葉のいじめ、肩こり、胃カメラを飲めない、カプセルや錠剤を飲めない、
めまい、頭痛、片頭痛、動悸、だるさ、
不眠症、偏食、シンナー遊び(やめたい人)、禁煙(同左)、断酒(同左)、
神経性の諸症状(頻尿、ほか)、いぼ、円形脱毛症、
心因性の諸症状(どもり、チック症、夜尿症ほか)、生理痛、更年期障害など。
心身症の一部。
すべてのアレルギー疾患、うるしなどのかぶれ(接触性皮膚炎)、薬剤アレルギー、蜂刺されによるショックなども。

B. 場所--静かな所、少しうす暗い所がよい。慣れれば、どこでもできます。
  初めは寝る時にベッドまたは布団の上でするのが良いでしょう。
C. 対象--まれには小学生高学年からでもできますが、通常は中学生になると自分で何とかしたい気持ちが強くなるので、できるでしょう。女性や、高齢者で悩んでいる方が入りやすいです。
自己暗示で、自己催眠に入らなかったら、繰り返さないで、すぐやめて次回にします。

D. 催眠状態に入ると、どうなるか。
 1.目を閉じていること。
 2.意識や感覚は少しも変らない感じです。自覚的な意識は普段と全く変りはありません。
 3.リラックスして楽な気分になります。
 4.手足が重たいような、だるいような、また、暖かい感じがします。実際に手足が暖かくなります。
 5.被暗示性(暗示にかかりやすい状態)が高くなります。批判的な意識が少なくなって、暗示にかかりやすい(云われた通りになりやすい)ようになります。
--この状態は、変った意識状態であり、これを催眠性トランス(変性意識)といいます。これは本人にはわかりません。
  



     自己暗示法または自己催眠法の実際

1.準備
 体をしめつけているものをはずします。
バンドをゆるめて、眼鏡、時計をはずします。ネクタイをゆるめ、きついYシャツのボタンをはずします。ネックレスやイヤリングはよいです。
慣れてくれば、どんな状態でも出来るようになります。
2.姿勢
 座位では
足はかかとがつくようにし、少し前へ出すようにし、肩幅位に膝を開きます。手は大腿の上にのせ、手のひらを上向きにします。手の力をぬいて身体にひきよせる感じにします。
 寝た状態では、
  仰向けに寝て、手足を広げ、手のひらを上に向けます。そのまま眠りにつけるような状態でします。
3.まずリラックスします。そしてこころの中で自分に命令を下して下さい。
「目をつぶって、深呼吸をします。ゆっくり大きく肩があがるくらいに、大きく息を吸い込んで、鼻から息をもらすように静かに息をはきます。3回深呼吸して、力をぬいて下さい。終わったら、自己暗示に入ります」。
「はい肩の力をぬいて、あごの力をぬいて、頭をまっすぐにして」
さあ始めましょう。

4.深呼吸法
  ゆっくりと肩が上がるくらい大きく息を吸い込んで、ゆっくりと鼻から息をもらすような気持ちで少しずつ息を出します。息をはく時にこころの中で、
  「首の力が抜けてーくる。首の力が抜けてーくる。」と暗示をし、2回暗示を繰り返す間に、息をはき終えるようにします。
  2回目に大きく息を吸って、息を吐く時に、
   「肩の力が抜けてーくる。肩の力が抜けてーくる。」
  3回目に息をはく時に、
   「手の力が抜けてーくる。手の力が抜けてーくる。」
  4回目に息をはく時に、
   「足の力が抜けてーくる。足の力が抜けてーくる。」
  5回目に息をはく時に、
   「顔の力も抜けてーくる。顔の力も抜けてーくる。」
  この5回の呼吸を1セットとして、2から3セット行います。
  この時にする呼吸法は、「呼吸法の話」と同じ方法です。ゆっくりと大きく吸い、できるだけ時間をかけてゆっくり息をはいていきます。
  もう催眠状態に入っています。手足が暖かくなっているでしょう。

5.確認テスト
  ここで催眠状態に入っていることを確認します。
  両手を前にのばして、手のひらは向き合せにして、15cm位離します。
心の中で、「手が、ひっぱられてくる。近づいてくる。」と繰り返します。自分で動かす必要はありません。暗示によって自然に、いつの間にか手がくっつきます。
両手がくっついたら手を膝の上におろして下さい。

6.自己暗示をかけます
 1)共通暗示―これは必ず誰でもいつでもする暗示。
  「これから先、日増しに(一日ごとに)気持ちが落ち着いて、ゆったりとくつろいでくる。」
  「これから先、今まで気にしていたことが、だんだん気にならなくなってくる。」
  「目がさめると、頭がハッキリして、非常に気持ちが良くなる。」
  これだけでも、今まで気にしていて、こころから離れなくなっていることが、何日か続けていると取れてきます。
 2)各症状に対する暗示(1つか2つ)
  これはそれぞれの持つ悩みに応じて、行なうものですから、一人ひとり、またその時の状況によって違います。
 不眠(熟睡)-「これから先、夜ぐっすり眠れるようになる。」
   (入眠)-「これからは、夜、床に入って、自分で眠ろう眠ろうと思わなくなってくる。そうしてゆっくりと、身体の力を抜きながら深呼吸を続けている内に気持ちがゆったりしてくる。そうしてすぐ眠らなくても気にしなくなってくる。」
 肩こり-「首から肩にかけてとてもかるーく、スッキリしてくる。」
 足のしびれ―「膝から下へ、つま先にかけて、とてもかるーく、スッキリしてくる」
 何か嫌なことに気持ちが取りつかれて、頭から離れない時は、共通暗示の第二項を繰り返して暗示をかけると良いです。
7.暗示後3~5分間、目をつぶったままで、ゆっくりしています。適当でよいですが、長く時間をかけた方が効果があるようです。そのまま眠ってしまっても構いません。
8.開眼
 心の中で、「今度目を開いたら頭がハッキリして目が覚める」と云って、「ひとーつ、ふたーつ、みっつ、よっつ、いつつ」と数え、ここで「だんだん頭がハッキリして、目の前が明るくなってくる」といれて、「むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とお」と少し早目のテンポで、10数えて目を開けます。開眼後、頭がぼんやりしていたらすぐ目をつぶって、それがとれるように暗示をかけて、もう一度10数えて目を開けます。
 慣れてきたら、途中の「だんだん頭が・・・なってくる」の所を省略してよいです。
 そのまま眠り込んでしまったら、翌朝目が覚め時に、解除の動作をします。解除は、大きく背伸びをして深呼吸をすることです。
                                  

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