黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

第5回子ども医療講座

2019-02-05 20:06:02 | 子ども医療講座シリーズ
 子ども医療講座の続きです。昔はあと3回したのですが、その内容は、事故予防、子どもの症状に対する対応、子どもによくある病気の話、予防接種でした。しかし、今は大幅に書き直さざるをえず、それはまた書き直したものが手元にありますから、それを逐次載せていきますので、今回で子ども医療講座を終了とさせて戴きます。
 
 今、子どもへの虐待による死亡した問題が流れていますが、私は一度でも(私も一度息子に手をあげてしまいましたから一度は厳しいかも)子どもに暴力を振るったら、見ていた人、それを知った人が届けたら、親も教師も処罰される北欧の社会にすべきだと思います。
 これに反対するのが保守派であり、今の安倍政権を支えている人たちです。世界で最も文化的に進んだ社会が北欧であり、それを実現させたのが、マルクスの流れをひく(レーニンは共産党です)社会民主党政権が長く支配し、さらにその中でも女性の教授、議員、社会的地位の高い人たちが、表ても活動し、裏でも夜に闇夜に紛れてポスターなどに墨をぬり、男性社会に抗議してきた歴史があります。
 また第二次世界大戦(日本の15年戦争です)の戦後すぐに広い住宅を労働者に建てたのです。日本のようにうさぎ小屋ではありません。それは広い住宅を与えることにより、労働者が豊かなこころをもつと当時の建設大臣(女性でした)が提案し、内閣と議会が承認し実現したのです。
 またその後すべての人間に対する暴力を否定し、人が人を殴ることを否定した社会にしました。北欧諸国はイギリスも含めて、ボクシングを否定的にとらえている社会です。ボクシングを無くそうとして、アメリカにつぶされています。スウェーデンでは、風俗映画と共に暴力を振るう映画も映倫で禁止されているはずです。
 もちろんセクハラはもとよりレイプなど問題外です。

 それから、これは日本でも通ると思いますが、親とした約束は約束ではありません。守る必要はありません。暴力団に取り囲まれて印鑑を押した契約書と同じです。親は、子どもにとって強い権力で逆らえません。立場が対等でない約束は約束ではありません。まして親に書かされた文章は本人の意志ではありません。これは皆さん心得ておいて下さい。成績が悪いとお小遣いを減らすというのもばつです。親が一方的に押し付けたものは、子どもは守らなくて良いのです。それを守らせようとした時に、子どもは反逆するか、いい加減にして好きなことをしていくか、しっかり守り落ち込んでいくかでその子の将来が決まります。それが、アレルギー特に食物アレルギー、発達障害、ニート、ひきこもり、登校拒否を生んでいるのです。
 
 今迄そういう発言をしませんでしたが、そう思っていました。お母さんたちのこころを傷つけることが心配でした。しかし、余りにも多くなりましたので、むしろ子どもたちを守るために言わなくてはいけないと思い言うことにしました。

 
 子どものこころを大切にして下さい。あなたの所有物ではなく社会の子どもです。赤ちゃんの目を見て下さい。きらきら輝いていればよいです。
くもった目をしていれば心配です。

 こどもを病気にしたくなければ、あなたの所から解き放って下さい。あなたの思うようにならないでしょう。でもそれが病気から解放します。私の子どもたちは大学を出ると次々と家を出てしまいました。そして独立して行きました。でも子ども時代大きな病気をしませんでした。

             第 5 回 子 ど も 医 療 講 座
                Γ 子 ど も の 病 気 の 見 方 」

§1.子どもの病気は、夜や休日になることが多い。
子どもを診ていると、子どもが病気になるのは夕方や夜にかけてや休日に多いです。朝出掛けに具合が悪くなったりします。また保育所や幼稚園、学校等の行事があると、病気になります。前の日や二日ぐらい前に病気になったり、行事が終わった時に病気になったりします。それをどう考えるか。私の見方としては「子どもにストレスがかかって、病気になる」と考えます。これは病原環境説という、病気の原因は環境にあるという考え方からきます。
 ストレスがあると病気になりやすいのです。子どもは新しい集団生活に入ると、どうしても病気になりやすい。今まで病気しなかった子が、幼稚園に行きだすと病気になったり、小学校に入ると始終病気をしたり、熱を繰り返したり、そういうことがよく見られます。
 一般の医者は、それは集団生活に入ってほかの子から風邪をもらってくるからだ、という説明をします。確かにウイルスをもらうこともーつの要因ですが、それだけでは病気にはなりません。それにプラスアルファが必要です。そのプラスアルファがストレス。つまり社会環境にうまく適応できない時、そういうストレスがあった時に抵抗力が落ちて、ウイルスをもらうと病気にかかってしまうという考え方です。
 医者が診察の時に、風邪をうつされちゃ困ると言ってマスクをする人がいます。おかしくて笑ってしまいますが、私はそんなことはしません。何故かと言うと本当に健康であれば、いくらかぜのウイルスが入っても、目の前でいくらコンコンやられても病気にかかりません。病院に勤めていた時にはかかったことがありますが、診療所を開業してからはインフルエンザにかかったことが一度もありません。インフルエンザが流行すると1シーズンで何百人という方がくるのですが、それでもかかりません。それは自分が健康であればウイルスが入ってきても、ウイルスを排除してしまうからです。そういう仕組みを人間は誰でも持っています。だから本当の意味で健康であれば、病気にかからないのです。それは精神的にも、身体的にもそして社会的にも健康であるという、これはWH0による健康の定義ですが、その3つが揃っていれば、病気にかかりません。ところがそれが難しいのです。特に集団生活に入ると難しい。それは他の人との関係が出てくるからです。子どもでもそうです。集団生活に入るとどうしても他の子との間の問題が出てきます。先生との関係も出てきます。そうすると、その子の性格によって一人一人違いますが、神経質な子はいろいろなことがストレスになって病気になってしまいます。たまたまそのストレスがあった時にウイルスが入ってくると、発病してしまいます。その時にウイルスが入らなければかからないのです。ストレスがあっても、ストレスだけでは病気になりません。ストレスにプラスアルファーが重なった時に病気になると考えるのが病原環境論です。
以前に勤めていた病院で皮膚科の先生が、ある時突然風疹にかかりました。それまで風疹の子どもを大勢診てきているのに、どうしてか説明できなかったのです。でも今の病原環境論ではうまく説明できます。体調が落ちたからだった時にかかったのです。
 ある学校で風疹が流行って、そこの学校の女の先生がクラスで10何人の風疹の子が出たがかかりませんでした。一度もかかったことがないのだけれど調べてほしいと言ってきて抗体を調べたら、抗体は陰性。つまりかかっていない。周り中ウイルスだらけだから、かかっておかしくないけれどかからなかっのです。当然有り得ることですが、今までの医学の説明だとうまく説明できません。病原環境説だと説明できます。
 もう一つ、そこでどういう病気になるか。誰もが同じ病気になるとは限りません。ウイルスが流行った時にはそのウイルスの病気になるけれども、それ以外のときにストレスがかかった時にそれぞれの弱点に病気が出てくるのです。
 ある子どもは喘息の発作、ある子どもはアトピー性皮膚炎がひどくなり、ある子どもは、アレルギー性鼻炎になり、それぞれその子の持っている弱点に病気が出てきます。そして、神経質な子ほどなりやすく、くよくよしない子は病気をしません。
 くよくよしないと、病気をしないものです。神経質な子ほど病気します。神経質な子ほど病気にかかりやすい。だからできるだけ子どもに神経質にならないように育てましょう。
日本のお母さん達は病気に神経質だとアメリカの文化人類学者が言っています。これは日本人の女性で高校を出てアメリカの大学で勉強して人類学者になり、アメリカ人と結婚して20年くらいして日本に帰ってきた人が言っているのですが、アメリカで子育てしている時に、アメリカ人の夫君が「何でそんなに病気に神経質になるんだ。そんなに病気に神経質だと、子どもが病気に神経質になってしまうぞ」と言われたのです。その日本人の女性人類学者は、自分が自分の母親に言われた事を自分の子どもに言っていたつもりだったのですが、そう言われて気が付いて周りを見回してみると、アメリカ人は自分の子どもに「そんなことしたら病気になるよ」とか病気の話をあまりしないのです。
日本人は一般的に「お元気ですか」とか、「病気しないですか」とか、病気を気にした会話が日常的に多いです。民族的に病気に神経質な所があります。できるだけ病気に神経質にならないように子どもを育てた方がいいと、その女性文化人類学者が書いてます。私もなるほどそうだなと思い、できるだけ伸び伸びとあまり神経質にならないように育てようと思いました。それで病気のことはあまり子どもに言わない方が良いと思うようになりました。

§2.両親の病気やストレスから、子どもも病気になる。
心療内科で有名なバリントというイギリスのロンドン大学精神科講師が1957年に出した本に、「子どもが両親に連れられて診療所にやってくる場合、3分の1のケースは両親の治療が必要で、3分の1のケースは両親と子どもの両方の治療が必要で、3分の1のケースは子どもだけの治療が必要である。」と書いています。確かに病気の子どもたちをよく診ていると、これがやっぱり当たっています。両親又はお母さんが病気になることによって、子どもが病気になりやすくなってしまうようです。前に勤めていた国立病院では小児科専門で、子どもしか診ていませんでしたが、開業してからお母さん方も診るようになると、よく病気になりがちな子というのはお母さんもよく病気になることが多いのです。だからできるだけお母さんが自分の健康を気をつけましょう。そうすると子どもも病気をしなくなります。病気に神経質にならないこと。それが必要なのではないでしょうか。
 ストレスから病気になるという説ですが、心と免疫の関係を明らかにする学問が1980年代からアメリカで始まっていて、1986年アメリカのハーバート大学の精神科の助教授ロックが精神神経免疫学の立場から「内なる治癒力」という本を出し、いろいろな実験の結果を書いています。例えば医学生を対象にした研究では、試験の1ヶ月前と試験直前と試験直後にいろいろ検査をしてみると、明らかに免疫の状態が変わっている。つまり試験を受けるといった日常的な緊張や不安がやっぱりストレスになっています。それが免疫機能にもはっきりした影響を与えていました。またよく知られていることは、最愛の人を失った人特に奥さんに先立たれたご主人が病気になりやすかったり、後を追うように亡くなったりということがよくあります。これは心のストレスによって病気にかかりやすくなってしまい、ひどい場合は死に至ってしまうのです。
重症なやけどを負ってから、数時間以内に催眠をかけて「あなたの体は冷たくなる、冷たくなる」と暗示をかけます。さらに続けて「どんどん良くなる、良くなる」と暗示をかけます。そうすると回復が非常に速いし、しかも後遣症も残さないで治る率が高くなるというのです。
 私がチェルノブイリに行った時にウクライナのチェルノブイリ博物館で聞いた話ですが、ソ連邦の兵士や消防士、警察官などが爆発した原子炉の消火に動員され、その時に大量に被爆した人達が出ました。その内のロシア出身の人達はモスクワヘ運ばれて、モスクワの病院で治療を受けました。そこへアメリカの専門家が来て骨髄移植をやったり、最新の治
療を受けました。所がウクライナ出身の兵士や消防士たちは、モスクワヘ連れて行ってもらえず、ウクライナのキエフの病院で在来のやり方での治療を受けました。その時にやったことは、他にやることがなかったので、過去にウラル山脈の核実験工場で被爆した事故(隠されていたのが、今は明らかになっていますが)の時に被爆して生き残って助かった兵士たちを呼んで、被爆した兵士や消防士たちを激励させたのです。「俺たちだってこれだけ治ったのだから、君たちも頑張れ」そう激励させました。それ以外は大した治療ができなかったのです。その結果、生存率はどうかというと、モスクワの方が悪くてキエフで残っていた方が生存率が高かったのです。つまり技術ではなくて精神的に生き残る意欲を持たせたり、希望を持たせることが非常に病気の回復には役立つということがわかったのです。彼らはそうは思わず、被爆した人にすることがなく、他に手立てがなくてやったのでしょうが、それが非常に有効だったのです。
 また暗示や催眠療法によるいぼ取りの話は、日本でも幾つもあるしアメリカやヨーロッパのどこにでもありますが、催眠をかけるとか暗示をかけることによって、いぼが取れるのです。いぼ取り地蔵などもそうです。取れると信じる人は取れるのです。不信を持って信じない人は取れません。(その後九州大学の心療内科での実験でも証明されました。)

§3.子どもと病気の関係をよく見てみよう。 
子どもと病気の関係をよく見ていると、病気との関係がだんだんわかってきます。

◇よく子どもが病気になると、お腹を冷やしたからだとか、布団を掛けなかったからだとか、食べ過ぎからだと言うお医者さんがいますが、寝冷えとか食べ過ぎなどは、私に言わせれば思い違いです。
というのは人間は医者もそうですが、病気になった時にその原因が何だかわからないと不安になります。だから何か原因を自分の身近な物に結び付けて考えたがるのです。それで納得して安心します。そうしないと自分が不安になってしまうから、そう説明して満足してしまうのです。だから全く科学的な根拠もないことを言うお医者さんが、ちまたに溢れています。それで最近は科学的根拠に基づいた医療をすべきだと言う様になったのですが、それがまた怪しいもので、「科学的根拠に基づく医療に基づいてやって下さいね」と言う厚生労働省の役人が現実には医師会の圧力に負けてしまいます。そういうことがいくらでも医療の世界にあるのが残念なことです。だから科学的根拠に基づいた医療と言うが、本当にそうか怪しいものです。
◇よく寒いから風邪をひくと言いますが、寒いから風邪をひくのでしたら、寒い地方は風邪が多いことになりますが、そんなことはないのです。だから寒いから風邪をひくのではありません。南極の越冬隊ではしばらくは風邪をひく人がいませんでしたが、ある年から風邪がでるようになりました。それは誰かが風邪のウイルスを持ち込んだというのです。
確かに寒い時期にインフルエンザがはやりますが、インフルエンザウィルスは乾燥した時期に繁殖し、熱帯では乾季に流行します。だから日本では冬流行しやすいのです。香港で新型が騒がれた時やメキシコの新型インフルエンザ騒ぎは、6月とか9月でした。
だけどかかる人とかからない人がいます。インフルエンザは大体かかる率が10%と言います。インフルエンザのウィルスを吸い込んでも1割の人しか発病しないのです。
結局寒いから風邪をひくというより、寒いことが嫌いな人が風邪をひく。だから、寒くても平気な人は風邪をひかない。私の子どもの頃は「子どもは風の子」と言われ、風邪をひくなどとは思われませんでした。

◇人間には生まれつき自然の治癒力があり、病気を治してしまう力があります。30年前にはまだ判っていませんでしたが、その後それが免疫学や遺伝子学などで次々と証明され、
病原環境論が裏付けられたのです。
 東大のある生物学者が今地球上で、非常に繁栄している種族は昆虫と考えました。昆虫はもっとも数も種類も多いのです(今は細菌と言います)。昆虫には何か繁栄する秘密があるのだろうかとある種の蠅を調べたところ、その蠅には外から細菌が入ってくると、抗生物質様の物質を生産していることが証明されました。その上ウィルスが入ってくると、ウィルスと戦う物質を生産している兆候があるし、癌に対しても抗癌物質を作り出している兆候があるのです。それで病気にならないようです。
そうすると人間は昆虫よりずっと進化した生物ですから、進化の途中で自分に有利なものを落としていく訳がないと考えました。不要なものを落として有利なものを獲得して進化していきます。だからそういう仕組みを必ず持っているのではないかと考えたのです。
癌になる遺伝子とそれを阻止する遣伝子があるということも判ってきました。それと同じように免疫、つまり体を防御する仕組みが少しずつ判ってきています。完全に解明するのはあと100年かかってもできないと思いますが、いずれにしろ自然に病気と戦う力がある。それが妨げられた時に病気になるのです。(ブログに載せてあります)

◇病気のひどさ、例えばインフルエンザにかかった時に発熱が37度台ですむ人と、40度になる人がいますがどこが違うのか。一生懸命そのウィルスや、結核菌などの細菌を調べた医師がいました。重症の人と軽い人とのウィルスや細菌を調べてみたのです。一生懸命その性質を調べたのですが、差がみつけられませんでした。そこで、かかった側の抵抗力に問題があると結論しました。ウィルスや細菌は同じですが、かかった人によってひどくなったり、軽くなったりします。もちろんウィルスの種類によって強い、弱いはあります。でも同じ種類にかかった時にも強い、弱いが出てきます。例えば麻疹にかかる時に、麻疹にかかって軽くすむ人とひどくなってしまう人がいます。どこが違うのか。それをかかる側の抵抗力に問題があると考えます。その抵抗力を落とす最大の原因はストレスと考えます。
◇ストレスがあって病気にかかります。そして病気にかかることによって、病気に不安になり、病気に不安になることによってさらにストレスになります。だから病気に不安になると悪くなります。よくいますが、熱が出ても平気な子はすぐ治ってしまいます。ところが熱に弱い子は、熱が出ると「もうだめだ」と思ってしまいなかなか治らないし、ひどくなります。これはお母さんの育て方によるのかと最初は思ったのですが、必ずしもそうではないようです。同じ兄弟でも片方は平気で、もう一人はだめという子がいます。お母さんの育て方だけでもありません。ただし、大きな病気にかかるとお母さんがその子に神経質になり、またなるのではないかと思う。そうするとその子も不安になり、それがマイナス効果です。いつも病気をしないで元気な子はお母さんの方も平気で、あの子は大丈夫と思ってほったらかしにしておくと、その子は病気に神経質にならないし、かかっても軽くすんでしまう。だから病気になった時に決して子どもをおどかしたり、怖がらせたりしないように。「そんなことすると悪くなるよ」とか、「そんなことするともっとひどくなるよ」とか言わないように。
 前の鴻巣の診療所にいた時にあったのですが、インフルエンザになった子を最初はお母さんが連れて来ました。「インフルエンザになった時にいろいろ合併症があるよ。ちゃんと治そう」というお話をしました。2日ぐらいしたら、40度の熱がずっと続いていると言って、今度はお父さんが連れて来ました。よく話を聞いたら、お父さんがおどかしているのです。「じっと寝ていなければ駄目だ。寝てないと脳炎をおこしちゃうぞ。」と言っていました。子どもがびっくりして「なったらどうしよう」と言って泣いています。それで「大丈夫だよ」と話をして帰しました。後で聞いたらその日の夜のうちに37度台に下がったそうです。私は解熱剤を出しませんから、解熱剤を使わないで下がりました。その後は高い熱は出ませんでした。つまり不安や恐怖があると、それだけでも病気は悪くなります。だから決して怖がらせてはいけないし、悪くなるようなことを子どもに言ってはいけません。すぐ良くなるからと言って下さい。

§4.まず全身状態を見ること。
◇私が前に勤めていた病院の泌尿器科の先生が、自分の子どもが熱性けいれんをおこしてひきつけたら、慌てて救急車を呼んでしまいました。医者が救急車を呼んだのです。そんなに慌てなくてもいい筈でした。医者だから自分の同級生に小児科医がいるし、自分の勤めている病院にも小児科医がいるのに、救急車を呼んでしまったのです。医者だってそうなのだから、素人の方が慌てたってちっともおかしくないです。

◇病気になった時に、まず全身状態をみること。
全身状態で病気の重い、軽いを見るのがまず大事。重い状態というのは全身状態が悪くなります。子どもはじっと静かにして布団から出て来ないです。
健康な子はじっとしていられません。治るとすぐ布団から飛び出してあちこち動き回り、じっとしていません。じっとしているというのは病気の兆候です。どっかおかしいのではないかと思って下さい。ぐったりとしたりうつらうつらしたりしている時は気をつけないといけない状態です。よく、うつらうつらしているのをぐっすり寝ているのと同じに考えて、「寝ているからかわいそうだから」と起こさないで病院へ連れて行かない人が少なくありません。ところが夕方になって、病院が終わってしまうからと慌てて病院へ連れて行く方がいますが、病院はやっていても検査ができないし、専門家もいなくなってしまいます。うとうと寝ているのは危ない兆候なので医者にかかった方がよいです。熱があるけれども元気に走り回ったりしている場合には慌てることはありません。
 よくあるのが、学校や幼稚園に行く時に熱はないのに何となく元気がなくて「行くのはいやだ」と言うことがあります。その時熱がないから行きなさいとは言わないで休ませた方がよいです。調子が悪そうだったら、どこかが具合が悪いのです。初期のうちは、はっきりした症状が出てこないが時間が経つと出て来ることが多いのです。だから全身状態をまず見ること。元気があるかないか、そこがまず大事です。

§5.熱だけで病気を判断してはいけません。
熱は病気の一つの症状ですから、熱の高さだけで、病気の重い軽いという重症度を考えてはいけません。熱はいろいろな病気で出ます。熱は、細菌や異物と戦う為に身体が熱を上げて細菌やウイルスと闘っているのです。また熱の高さは病気の重さとは必ずしも比例しません。特に年令の小さい子ほどそうで、扁桃炎でも39度から40度の熱が出ることがあります。熱がパッと出て一晩経ったら、けろっと元気になったということもよくありますが、それは熱を上げることによって病気と戦って病気に勝つと翌日元気になります。ところが完全には勝っていないと、又熱が出たりします。扁桃炎などによくあるのですが、朝熱が下がって、夕方になって熱が上がるのです。夜熱が出ても、朝になると又元気になります。それを繰り返します。1日の内に一回でも熱(38℃以上)が出たら、それはよくなっている証拠ではありません。これは解熱剤を使わなくてもなることがあります。そういう熱のタイプで病気の種類を診断します。一番多いのは扁桃炎、それから腎孟腎炎、それと肺炎。膿瘍と言って体のどこかに膿が溜まる病気もそうです。
 細菌やウィルスによらない病気は熱が出ないです。例えば喘息とかアレルギー性鼻炎など。もし熱が出るとしたら、病気になったために抵抗力が落ちて、そこでウィルスや細菌が動き出して二次的に病気を起こして熱がでているのです。
 「熱が出たらすぐ医者にかかった方がいいか」とよく質問されます。ある小児科医は「三日は、熱の様子を見ても良い」と言っていますが、私はそうは言いいません。心配だったらいつでも医者にかかったほうがよいと言います。熱が出たらすぐ心配でお医者さんにかかる人もいれば、1日様子を見る人もいるし、麻疹にかかっても医者に見せない母親だってごく稀にいます。それはそれで構わないのです。熱が続いても平気な母親の子どもはやはり熱が続いても平気ですから、悪くなる率が低いのです。余り不安にならないからです。だから心配ならいつでも医者にかかった方がよいのです。不安が病気を悪くします。でも三日も熱が続いたら医者にかかって下さい。二日なら様子を見てもいいです。
私の友人の医者で、鼻水なんか病気のうちに入らないと言ってお薬を出さない先生がいます。鼻水ぐらい平気だというのです。しかしその子どものお母さんは帰りに耳鼻科の先生のところに寄ってお薬をもらって帰るのです。つまり不安だからかかるので、その不安を解消してあげることが必要なのです。確かに私が子どもの頃は鼻水をたらしていたり、2本棒と言って両側の鼻汁がたれ流れて口の中まで入っている子がいました。それを袖で拭くので袖がテカテカになりました。今はそんな子はいません。この2本棒というのは蓄膿症だったのです。あとは水っ鼻です。日本だけではなく、ロンドンでもパリでもニューヨークでも昔は病気のうちに入らなかったのに今は病気のうちに入れられています。だから不安で心配だったら医者にかかるしかありません。心配でなければかからなくてよいです。(その後2008年頃から鼻水の薬の害が問題になり、アメリカとイギリスでは6歳以下には鼻水の薬つまり抗ヒスタミン剤を含むかぜ薬の販売を禁止しました。日本でそれを知っている医師は小児科医、耳鼻科医、内科医の半分以下です。)

§6.病気の見方
 病気になったら、見えるところはすべて見ましょう。

①まず顔色を見ます。
顔色が白いか、青いか、黄色いか見ます。まず元々色が白い人と貧血で白くなっている人がいます。それを見分けるのは、今までそうではなかったのに白くなったら要注意です。特に中学生つまり13、4歳ぐらいの女子に貧血の子が5%位います。女の子は生理があり出血して鉄分を失う上に、スポーツをすることによって筋肉へ鉄分を消費します。激しい運動をしていて生理があったら沢山鉄分をとらないと貧血になります。白い顔してすぐ疲れると言ったら要注意です。
また気持ちが悪くなったりすると顔色が青くなったりします。これはなんらかの原因で血圧が低下するためのことが多いようです。主に思春期以降に見られます。
顔色が黄色いのは黄疸を疑います。しかしカロチンをとりすぎても黄色くなります。柑橘類のジュースだけでなく、人参、トマト、かぼちゃ等のカロチンを含む食べ物を大量に食べると黄色くなります。ミカンを沢山食べると手が黄色くなるでしょう。それを柑皮症といいます。この黄色は手足から上がって来て顔まで来ます。顔が黄色くなるのはとり過ぎです。
黄疸を見分けるのは白目を見れば良いです。白目が黄色くなるのが黄疸です。顔色が黄色くても、白目が真っ白だったら柑皮症です。そしたら食事をチェックします。だからオレンジジュ-スがいいとか、特に生の野菜ジュース(トマトや人参が入っている)が良いと言って沢山飲ませると黄色くなってきます。手が少し黄色いぐらいはいいですか、身体まで黄色くなると取り過ぎです。
それから顔色を見れば元気があるかどうか、疲れているかどうか判ります。

②口の中。
子どもは上気道といって口や鼻の病気が多いですから、いろんな情報が得られます。まず頬で、口を開けて頬の粘膜を見ます。手足口病では舌の先や、頬の粘膜に白い斑点が出ます。麻疹の場合は頬の粘膜に白い斑点が初期のうちに出ます。ひどくなって発疹が沢山出てしまうと消えてしまいます。顔や体に発疹が出始めた時に、すぐ頬の内側の白い斑点があるかどうか見ましょう。この頬の白い斑点、コプリック斑と言いますが、これが臨床的な麻疹の診断の決め手です。コプリック斑は麻疹以外の病気では出ません。
口内炎がよくできる場合は、よく見ると、白い場合と赤い場合がありますし、痛いことが多いです。コプリック斑は痛くもしみたりもしません。
舌をよく見ると、地図状舌の人がいます。これは病気ではなく舌の性質です。よく見ていると、この地図のような形が5日から7日周期で変わります。痛くも痒くもありません。なぜこの話をするかというと、医者で治療を受けていた人がいたからです。これは治療したって治りません。その医者が知らなかったのです(こういうことはよくあります)。
舌が白くなり、苔状になることがあります。白くなる理由は、赤ちゃんの場合には舌がザラザラして荒れた時に「乳痂」といって母乳やミルクのかすがつくことがあります。スプーンの柄のところで(持つ方で)こすって落とすと取れますからすぐ判ります。
また舌苔といって、白く苔状になります。これは何かの病気の兆候と言うよりは、全身状態が悪いからそうなります。病気や全身状態がよくなれば治ります。
それから舌の表面には「乳頭」という一見ぶつぶつした小さい突起様のものがあるのですが、ウィルスによる病気の場合や川崎病の場合、溶連薗感染症の場合、この3種類の場合に、舌の乳頭が赤く腫れてきます。普通のウィルスの病気例えば風邪でもなりますから、腫れたからと言って川崎病や溶連菌とは限りません。舌がザラザラして赤くなります。
乳頭が真っ赤になると苺舌と言い、苺の表面みたいに見えるので苺舌と言います。
舌の奥の方に大きな乳頭があります。粒々がV字形に配列されています。ぶつぶつができているように見えますが、これは正常です。
ご存知ないと思いますが、扁桃はーつではなく沢山あります。一般に扁桃と言うと口蓋扁桃で、昔は扁桃腺と言ったのですが今は「扁桃」と言うのが正式な名前です。ほかに舌扁桃とか耳下扁桃とかありますが、みんなリンパ節の仲間、リンパ組織で体の防衛機構の働きをしています。扁桃は外からのウィルスや細菌などと戦う場所です。俗に盲腸と呼ばれる「虫垂」もリンパ節と同じ働きをしています。人間の身体でどんな臓器も決して無駄に付いているものはありません。何かの働きをしているから進化の過程でもふるい落とされずに残っているのです。
 子どもは扁桃が腫れて熱が出ることが多いですが、のどを見れば扁桃が真っ赤になっているからすぐ判ります。扁桃だけ真っ赤になる場合と、扁桃も含めてのど全体が真っ赤になる場合とがあります。扁桃炎の場合には、扁桃が赤くなり、さらに偽膜といって白い膜や白いぶつぶつがべったりついたりします。扁桃炎にはいろいろな合併症があり、放っておくと扁桃周囲膿瘍ができ、入院させられたりします。甘く見てはいけません。また、扁桃肥大と言われることもあります。しかし、子どもは4歳から10歳頃までは扁桃が最も大きく、その後だんだん小さくなっていき、大人になるとほとんど見えなくなります。大人で扁桃が腫れているのは扁桃肥大と言いますが、子どもでは普通ですが、それを知らない医師は扁桃肥大と言います。内科医はもとより耳鼻科医でも知らない医者がいます。
のどの突き当たりの咽頭という所を見ると、時々そこにぶつぶつができています。これをリンパろ胞と言い、扁桃と同じリンパ組織で扁桃と同じ役割をしています。外からウィルスや細菌が入ってくると腫れて目立ってきます。健康だと小さいのでほとんど見えません。
のどを見ることをしましょう。まず鏡の前でのどに懐中電灯を照らして自分ののどを見ましょう。練習して、高い声を出せば、舌の中央が下がって中が良く見えるようになります。それで、子どもにアーッと言ってごらんと言うのです。舌が邪魔して見えない時に舌圧子という器具を使うのですが、家では嫌がるようになると困るのでしないで下さい。

③耳の中。
耳の中は普通には難しくて見えません。耳の中をみると入り口からある程度の中までは見えますが、鼓膜までは決して見えません。鼓膜まで見るのは、耳鏡という道具を使わないと見えませんが、そこまで見る必要もありません。ただ耳垢がつまっているかどうかはわかります。特に耳垢塞栓と言って耳垢が硬くつまってしまうとそれで痛くなったりします。耳垢がたまるのは外耳道の病気です。耳垢というのは、自然と外に出るような仕組みができています。もし耳垢が固まって、かちかちになるようだったら、耳鼻科に行き薬で溶かしてもらって取るしかありません。健康なら自然に出て来るようになっています。
外耳道の皮膚は鼓膜の中央からできて、すーっと外に出て来て脱落します。あめ耳と言ってねっとりした耳垢の場合は、ガーゼをこより状にして中入れてとります。綿棒をつかってもよいです。しかし粉耳に綿棒を使うとかえって中に押し込んでしまうので使わない方がよいです。粉耳は耳かきで見えるものを取っていればよいし、放っておいても自然に出て来ます。
耳鼻科、眼科、皮膚科などの科の患者さんは6割ぐらいが子どもですが、子どものことを知らない医者が結構います。一般には、小児耳鼻科、小児眼科、小児皮膚科のトレ-ニングを受けていないからです。つまり内科医が子どもを診ているようなものです。大人を対象にした卒後教育を受けて、開業して子どもを診るという形になります。だから、その時に小児耳鼻科の勉強をしないと子どものことを知らないのです。小児科医と耳鼻科医に向けた小児耳鼻科の本も何冊も出版されています。
眼科にかかると、目薬が嫌いになることが多いです。押さえ付けて目薬をつけるので嫌いになります。目薬の付け方を眼科医が知らないのです。小児眼科医は知っていて、子どもに教えます。始めから目薬の付け方を教えると嫌がりません。

④耳下腺
耳下腺は、きちんと耳下腺と診断できない医者が少なくありません。耳下腺のある場所は、耳たぶのすぐ下で、腫れると馬蹄形に腫れてきます。腫れてきた時に、周辺にリンパ節や顎下腺があり顎の関節がありますから、その見分けが難しいのです。腫れた場合のポイントは耳たぶのすぐ付け根のすぐのところ、両側とすぐ直下を痛がるようだったら耳下腺を疑います。顎下腺はリンパ節と見分けがつきません。耳下腺、顎下腺、舌下腺というのは唾液を作る腺で、しばしばおたふくかぜ以外にも細菌とかウィルスによる耳下腺炎を起こすことがあります。内科医はもとより、小児科医でも見分けができない医者がいます。

⑤鼻の中も見ましょう。
鼻の中の奥の方、前鼻部といいますが、そこに下鼻甲介というひだが大きく腫れています。鼻がつまるのは、上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介が腫れて来て両側からくっついてしまい、息が通りにくくなるためです。それからアデノイドが腫れると、奥の方が腫れた感じになります。
鼻血は、入り口のすぐ奥の所、指が届かない所でキーゼルバッハ部位と言いますが、鼻の血管が密集して鼻血の出やすい所から出ます。それ以外の場所から出血する場合には、耳鼻科に行かないと止められません。この場所の出血は、圧迫するだけで止まりますから、鼻の外から内側の上に向かって圧迫します。鼻血はすぐ止まることが多いです。止まらない場合には時計を見て5分ぐらい押さえます。途中で止まったかなと見ないこと。その度に出てしまいますから、押さえ続けると5分ぐらいで止まります。それで止まらなかったら10分ぐらい押さえ続けます。それで止まらない場合には、耳鼻科にかかりますが、そんなことは滅多にありません。

⑥身体に発疹や傷はないか。
 身体に発疹や傷がないか、発疹が盛り上がっているか、平らか、赤いか赤くないか、硬いかやわらかいか、水疱になっているか、化膿しているか、むくんでいるか、皮がむけているかをよく注意して見ること。どこにあるか。片側か両側か。よく見ないと診断がつきません。百聞は一見にしかず。見せて頂かないと診断はつきません。

⑦おしっこやうんちはどうか。
うんちが出ているか出ていないか。下痢ではないか。下痢は水みたいなのか、泥のようなやや柔らかいぐらいか。色は黄色か緑か。不消化物は出ているかなどを、見るようにしましょう。うんちが緑色になるのは、黄色いビリルビンという胆汁色素が酸化されると緑色のビリベルジンと言う緑色色素になるからです。ビリルビンが下痢をすると緑色になるのは、下痢をすると便が酸性になり黄色が緑色になります。ほかの原因で酸性になっても緑色になりますから、色だけで心配することはありません。便の状態で判断することが必要です。
おしっこを頻繁に行く時は、膀胱炎のことがありますし、神経性頻尿のこともあります。そこで小さいお子さんの時に、おしっこした時にその場ですぐ聞かないと痛かったとは言いません。「今痛かった?」と聞くと「うん」と言う、後になって聞くと、今痛くないから「痛くない」と言います。時間が経つと前のことは忘れてしまいます。その場で聞かないと言わないことがあります。

⑧リンパ節。
よくリンパ腺といいますが正確にはリンパ節と言います。外から触れるもののーつで沢山あります。リンパ節は外から入って来たウィルスや細菌と戦う関所みたいな所です。
リンパ節が腫れた時は、何らかの細菌やウィルスによる病気が圧倒的に多いのです。もちろんほかの原因でも腫れますが、子どもは細菌やウィルスによるものが多いです。
1個だけ腫れるとか、1個とか2個とか部分的に腫れるのは細菌性のものが多いです。ウィルス性のものは全体にいくつも腫れてきます。例えば風疹とか麻疹とか、突発性発疹などですと、耳の後ろや後頭部のリンパ節が腫れます。風疹は首のリンパ節も腫れてきます。必ずしも痛いとは限りません。細菌性のものの方が痛いことが多いです。よくあるのは扁桃が腫れてそこからリンパ節にくると、押すと痛がります。リンパ節にはそれぞれ守備範囲があります。腫れたリンパ節からたどって細菌などの侵入場所を探します。
また首や、脇の下、そけい部という太ももの付け根などにもあります。またお腹の中や、脚の中にもリンパ節があります。リンパの流れは、行きは動脈でもって全身のすみずみまで行って、帰りにリンパ管という細い管を通って心臓へ戻ってきます。その細い管の途中にリンパ節があります。
時々リンパ管炎というのを起こします。例えば足が化膿した時に、ツーッとリンパ管に沿って赤く腫れ上ったりします。

⑨どんな症状があるか。
咳や鼻水や鼻汁があるか、その鼻汁の色はどうか、青はなか黄色い鼻汁か白い透明なはなか、くしゃみや鼻詰まり、喉の痛み。
吐いた場合には何を吐いたか、食べ物を吐いているか、それとも白い液状のものか。黄色や緑の色のついたものを吐く場合は、胃液ではなく十二指腸液、つまり胆汁の色です。十二指腸液が胃に逆流してそれを吐いています。胃液というのは無色透明などろっとした感じの液です。吐いた場合に気を付けなければいけないのは、胃液には胃酸が含まれていますから、顔や手足や体につくとただれますから、吐いたら必ずきれいに洗ってあげてください。
どこか痛いところがあるかどうか。痛いところは腫れているか、赤くなっているか、何もできてないか。そういう所をよく観察してください。
押すと痛いか、動かすと痛いか。お腹の上の方、みぞおちの辺りは胃があるのですが、胃から十二指腸、真ん中が小腸で周りに大腸があります。子どもはおへその周りの所を痛がります。子どもは大人を小さくしたものではありません。肝臓、大腸や小腸などの内臓の大きさが相対的に身体の大きさの割に大きいので、子どもはお腹が飛び出しています。おへその辺りまで、大腸が来ますから、へその周りを痛がっても小腸とは限りません。うんちがたまっている場合もあり、それで痛がることがある。痛い時に聞かないと、どこが痛かったかを子どもは覚えていないので、お腹が痛いというだけで、どこが痛いかと聞いても判りません。

§7.具合が悪い時は、すぐその場で、具合の悪いところをよく聞き出すこと。
その場で具合の悪い所をよく子どもに聞くことがポイントです。どこがいつからどのように何をした時に具合が悪くなったか、小さいほど記憶している時間が短いですから、すぐ忘れてしまう。もう一つは思春期になってくると、言いたくないと思って、言わないことがあります。具合が悪くても言わないので、この年頃はなかなか難しくい。

§8.頭部外傷の治療で、外来診察でよいもの。
 以前にそういう事件があったのですが、お箸をのどに突き刺してもよほど急な角度で突き刺さないと、小脳に刺さりません。しかし、まっすぐに突き刺すと背骨の間を抜けて脊髄を刺してしまうことはあります。一般的にお箸をくわえてはいけないと言うのは、お箸の先が尖っていると、のどへ突き刺さります。のど(咽頭)の粘膜のすぐ後ろに背骨があります。のどの粘膜を突き破ると骨にぶつかります。ここの骨は脊椎(頸椎)といい、この骨と骨の間に通って箸が脊髄を突き刺して即死します。死ななくても、半身麻痺つまり首から下の麻痺になります。私が知っているのは脊髄へ突き抜けてしまう例です。箸を口にくわえて動かないことです。
頭部外傷の診察で必要なことは、まず傷があるかどうかで、大きな傷があれば入院させて観察します。意識が変化するには時間がかかりますから。意識がおかしかったらすぐ入院です。小さな傷なら家に帰して様子を見ます。観察に必要なことは、
①意識がはっきりしていること。
意識がなくなるのはおかしいです。小さい子は興奮して、覚えていないことがあります。
②神経脱落症状つまり手足の麻痺や、聴覚、視覚、痛覚がないとか、言葉が出ないなどの症状がないこと。
③頭痛のみで、他に症状がないこと。
④吐き気のみで他に頭痛などの症状がないこと。
よく吐き気がある時にそれが頭から来たか胃から来たか見分けが難しいことがあります。それはしばしば頭をぶつけた原因が、具合が悪くて転んだ場合があります。病気があってそのために頭をぶつけたけが、それに気づかずに転んで頭をぶつけてその結果症状が出たと見てしまうことがあります。その代表的なのは嘔吐下痢症です。下痢があればわかりますが、吐くだけだと難しいです。
以前にも、学校の体育の授業ででんぐり返しをして、うまくできず転んで頭をぶつけてふらふらしために小児科を受診し、小脳腫瘍を疑って脳外科へまわしてそう診断されたのですが、親はいつまでも学校に問題があると思い込んでいました。小脳腫瘍のために平衡感覚がうまくいかず転んでぶつけたのです。小脳腫瘍が原因でしたが、学校に責任があると親が思い込み苦労したことがあります。このように原因と結果が逆なのに思い違いをすることがよくあります。
⑤頭の皮膚のこぶや皮下血腫(青色や紫色になるあざ)があること。子どもの場合には、皮下出血や傷があるとそこで力が使われて内部には及ばないことがほとんどです。
⑥頭の皮膚の小さい外傷で、表面だけのもの。
子どもの頭部外傷は多くは軽症がほとんどですから、子どもが頭をぶつけてもそう心配することはないです。
以上のもの以外は、入院し、精密検査ないし経過観察が必要である。

§9.その他のこと。
①いぼ
いぼは水いぼも普通のいぼもウィルスによるものですから放置しておけば必ず自然に消滅し、治ります。標準で6カ月から1年です。長いと3、4年かかります。ところが、暗示をかけると治ることがあります。いぼ取り地蔵もそのーつですが、その他にいろいろないぼ取りの方法があります。
ハックルベリーの話にもいぼ取りの話が出てきます。
また昔スイスであった話ですが、いぼ取りの機械といって大袈裟な機械を使って、ピカピカ光るようなライトをつけて音を出してそしてジーッとあてます。それを何日かやれば取れるといううたい文句でしたが、実際にその機械で取れたのではなく、暗示をかけることによってとれたのです。
 実際に九州大学の心療内科でやった実験があります。いぼの人達を二つのグループに分けて一つのグループには何も治療しないで、月に1回だけ経過だけ見せに来てもらいました。もう一つのグループは「これは九州大学で開発した最新のいぼ取りの薬だ」と言って、ただの青い水を塗ったのです。青い水を塗った人の方が早く取れました。これはいぼが取れると本気で信じたから取れたのです。

②鼻づまり
鼻がつまるからと鼻水を吸い取るのは、吸引器で強く吸引するのはお勧めしませんが、スポイト程度の柔らかい力で吸うのでしたら吸ってもよいです。子どもが嫌がったらやめましょう。耳鼻科で吸引されて、医者嫌いになったり、喘息様気管支炎の時の吸入を嫌がったりしますから。
耳の方に響くのは、鼻の奥ののどの手前のところに耳管口があって、ここから耳管が中耳につながっているので、強く圧をかけると中耳に圧がかかるからです。鼻をかむ時に、必ず片側を押さえてふんふんと軽くかませます。必ず片側ずつ鼻をかみます。強く鼻をかむと前にも鼻が出ますが、後ろにも行ってしまい、その圧力で耳管口から鼻汁が耳の中に入ってしまうことがあるからです。

③耳がボワーッとする
耳がボワーッとすることで一番多いのは、鼓膜がうまく振動してくれない時。鼓膜は外からの音を拾って振動します。鼓膜がうまく振動してくれない原因は、耳管がつまっているためです。よくトンネルの中に入ったり、高い山に行ったりすると、耳がボワーッとするのは、耳の鼓膜の外側と内側の圧力が違うとどっちかに押されて振動しなくなってしまう。それであくびをすると耳管を空気が通って圧力が平衡し、振動するようになります。よくあるのは耳管が鼻汁で詰まってしまったりするとその鼓膜の内側と外側の圧が平衡にならないと振動が悪くなり、それでボワーッとなったりします。そういう場合には耳鼻科に行って、耳管を通してもらうと治ります。耳管の口へ管を通して耳を通気します。耳の聞こえが悪い場合、幼児から学童低学年頃に多いのは滲出性中耳炎です。滲出性中耳炎では膿じゃなくて、液体が中耳に溜まります。そのために振動が悪くなり耳の聞こえが悪い。それは耳を外から見ても赤くなってないから、鼓膜を見てもわかりにくい。その場合には耳鼻科で診てもらわないと診断がつかないです。滲出性中耳炎は難しい病気で治療の第一段階は放置する。1か月とか、2か月何もしないで様子を見て良くなるかどうか。自然に治ることがあります。それが第一段階、あとは抗生物質を使ったりいろいろ治療をするのですが、これぞと決め手になる治療法は今のところありません。溜まってきて聞こえが悪ければ、穴をあけて出したり、場合によってはチューブを入れたりするのですが、これも現代病で最近増えている病気の一つです。

④下痢の食事療法
 下痢の治療というのは医者によって違います。というのは急性の下痢は、どんなことをしても必ず時期が来れば治ります。ただ速く治るか、時間がかかるかの違いが出るだけ。慢牲は別です。下痢止めは今は使わない時代です。特に0-157事件以来、下痢は止めない方がいいという考え方が出て来ました。元々嘔吐や下痢は体内の悪い物を外へだしてしまう体の働きと考えられ、止めない方が良いと考えられるようになりました。止めると毒素を残してしまうからです。食事療法が一番です。
ではどんな食事が良いか、実は下痢の治療の上手なお医者さんが非常に少ない。
以前にお話ししていたことと、今(2019.2)とは違ってきました。「おかゆにしなさい、うどんがいいと言いますが、それでは経過が長引きます」と言っていましたが、今またそこへ戻って来ました。先ず飲み物を飲ますこと。
下痢をしている時にいけないのは脂肪が含まれるものです。それは変わりません。冷たい飲み物は欲しがれば飲ませて構いません。欲しがる時にはあげてよいです。人間も動物も体に良くないものを美味しく感じませんから、一口味を見て決めます。お腹がひどく悪い時には、お腹が冷たくなっています。そういう時には、冷たいものを欲しがりません。冷たい物がお腹をこわすわけではありません。お腹が具合の悪い時にお腹が冷たくなります。それを冷たくしたからだと思い違いをしたのです。
最新の情報では、もっと積極的に進めてよいと言います。そのやり方は、吐き気がない限り、お腹が空いて食べたがったら積極的に与えてよいというのです。空腹感は回復のしるしです。欲しがらないのに与えてはいけません。子どもはお腹が回復してくると、「お腹が空いた」と欲しがりますから、欲しがるようになってから食事を与えます。それまでは飲み物だけにして下さい。それも欲しがらなければ与える必要はありません。
生後2カ月の赤ちゃんの胃でリンゴやバナナは消化できます。うどん、パン、お米などの穀類は生後4カ月過ぎれば消化できます。つまり果物の消化がいいです。だから流動食、次は果物、次はおかゆとかうどんの順になります。下痢をしていても、お腹が空いて食べたくてたまらなければ、どんどん穀類など脂肪を含まないものを与えてよいと言うようになりました。詳しくはまたにします。






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