佐野眞一のノンフィクションは読み応えがある。
膨大な資料と綿密な取材に基づいたものであることが読むとよくわかるのである。
今回は「満州」が主題である。
本書と「甘粕正彦 乱心の曠野」が対になっているとのこと。
こちらはまだ文庫化されてはいない。
さて、本書は週刊新潮に短期連載したものを全面改稿し単行本それを大幅加筆したものである。
発表してから更に情報が寄せられ、謎のままであったところや新たなつながりがわかったことなどが追加されている、らしい。
本書の主人公は「里見甫」という人物である。
歴史の教科書では現れない名前であるが、歴史というのはこのような「陰」で動いている人間も絡んでいる、ということが本書を読むとわかる。
満州国というのは日本の傀儡という国であった、というのが私の認識であり、その主導権を握っていたのは、日本陸軍の「関東軍」である、ということもまあなんとなく承知していたことなのであった。
「国」というのは基本的には「租税」で成り立っているものであるが、満州国は租税を納めるだけの庶民が少なかった、そこで用いられたのが「阿片」である、というのが著者の調査検討の結果である。
阿片というのは日本では忌み嫌われるが中国ではそうでもないらしい。それは人生や生活というものにたいする姿勢や考え方の違いらしい。
そういうものを利用して阿片で財政を補おうとするアイディアが生まれたようである。
しかし、日本人の考え方はいわゆる表面的には「清く正しく」であり、政府や軍が直接そのような「悪」に関わることはできない、そこで民間にまかせる。
その任された人物が里見甫ということである。
本書に登場する人物たちは、得体の知れない、胡散臭い、ずるがしこい、そんな人たちである。
そういう人たちでなければ、当時の中国では成功できない或いは生きていけない状況のようであったことが、本書を読むとわかる。
本書を読むと、当時の日本の指導者たちは(今もそうなのかもしれないが)日本という国をどうしようか、或いはどのような国が日本なのか、ということを深く考えず、ただ目の前の損得(よくいえば正義)だけで日本を導いていたのではないかとおもわされる。
だから、謀略とか阿片とかを使って満州国を建国し維持しようとした。
しかし、そういうものは遂には中国或いは世界に通用しなかった。
そういう意味で、日本とはなんなのか、ということを著者は問うているのかもしれない。
姉妹書の「甘粕正彦」楽しみである。
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今回は「満州」が主題である。
本書と「甘粕正彦 乱心の曠野」が対になっているとのこと。
こちらはまだ文庫化されてはいない。
さて、本書は週刊新潮に短期連載したものを全面改稿し単行本それを大幅加筆したものである。
発表してから更に情報が寄せられ、謎のままであったところや新たなつながりがわかったことなどが追加されている、らしい。
本書の主人公は「里見甫」という人物である。
歴史の教科書では現れない名前であるが、歴史というのはこのような「陰」で動いている人間も絡んでいる、ということが本書を読むとわかる。
満州国というのは日本の傀儡という国であった、というのが私の認識であり、その主導権を握っていたのは、日本陸軍の「関東軍」である、ということもまあなんとなく承知していたことなのであった。
「国」というのは基本的には「租税」で成り立っているものであるが、満州国は租税を納めるだけの庶民が少なかった、そこで用いられたのが「阿片」である、というのが著者の調査検討の結果である。
阿片というのは日本では忌み嫌われるが中国ではそうでもないらしい。それは人生や生活というものにたいする姿勢や考え方の違いらしい。
そういうものを利用して阿片で財政を補おうとするアイディアが生まれたようである。
しかし、日本人の考え方はいわゆる表面的には「清く正しく」であり、政府や軍が直接そのような「悪」に関わることはできない、そこで民間にまかせる。
その任された人物が里見甫ということである。
本書に登場する人物たちは、得体の知れない、胡散臭い、ずるがしこい、そんな人たちである。
そういう人たちでなければ、当時の中国では成功できない或いは生きていけない状況のようであったことが、本書を読むとわかる。
本書を読むと、当時の日本の指導者たちは(今もそうなのかもしれないが)日本という国をどうしようか、或いはどのような国が日本なのか、ということを深く考えず、ただ目の前の損得(よくいえば正義)だけで日本を導いていたのではないかとおもわされる。
だから、謀略とか阿片とかを使って満州国を建国し維持しようとした。
しかし、そういうものは遂には中国或いは世界に通用しなかった。
そういう意味で、日本とはなんなのか、ということを著者は問うているのかもしれない。
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